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シェスタの町

 色々とエリザたちと情報交換しつつ町へと向かう。

 私たちが向かっているのはソーリス王国のアルフェ伯爵領都となる、シェスタと言う町らしい。領都と言うことは一国の中心部のような物だそうで地方の伯爵では独立してしまう領地も有るとか。その度に内乱も起こるそうで。

 なので王族と各貴族の地位の差は少なく、逆に王に仕える騎士や兵士はかなりの数がいるらしい。


 錬金術が発展しているので色々科学的、文明的な進歩はしているが政治などの面はかなり原始的なようだ。そして飯は不味いと言う。


 昔の食事は夏場の労働者に向けた塩気の強い料理が多かったと言う。この世界はまさにその時代の料理が普通なようだ。黒パンや薫製してない干し肉も安いので日常的に食べられているらしい。


 そんな飯は私には苦行でしかないわ。パンチェッタ(生ベーコン)や生ハムは美味いんだけどそればっかりは嫌だし、この世界ではハーブもあまり使われてない模様。ただ塩漬けして陰干ししてるだけ。


 ぐわあああーっ! メシマズ世界いい加減にしろーっ!


 とりま町に帰ったら薫製を広めることにします。薫製はこの世界にも有るんだけど高いらしい。彼らはCランク冒険者でありそこそこ稼ぎは良いのだが日常的に薫製を食べられるレベルでも無いとか、貯蓄してアイテム保存ボードと言う、ゲームとかで良くある物が腐らないように保存できるアイテムを買う予定だったらしい。ちなみに重さも軽くなるので私の仕事も楽になりそうだ。


 まだポーター(荷物持ち)成り立てだけどね。そもそもポーターなのか料理人なのか分からないけど。職業を登録できるなら料理人にしようかな。

 それになんか普通にパーティーに入ってるけどしっかり正式にお願いしないとダメだろう。どのタイミングで言うかだけど、冒険者ギルドとやらに着いたらで良いかな。


 冒険者ギルドは冒険者の組合でダンジョンに入る時に要らない貴重品やお金を預かってくれたり仕事を斡旋してくれたり時には依頼主とのトラブルを解決してくれたり、逆に探し人や探し物、魔物の討伐なんかの依頼も受けてもらえるようだ。


 そのうち調味料の依頼を出したり料理人の弟子を募集したりできるんじゃないだろうか。料理を広めるなら弟子は大切だよね。


 その前にこの世界の流通を知らないと駄目だし、料理の内容も探らないと駄目だろう。やることが多いな。

 あ、冒険メシも準備しなくちゃダメだった。ダンジョンで売れるくらい冒険メシを用意してやろう!


 あー、現地の食材が楽しみだな~。


 そんな風にワクワクしているうちに町に着いた。門番さんにお金を払って入るらしいが当然私はお金を持ってなくてカインリーダーに借りる。


「ごめん、絶対返すからね」

「気にすんなって~。パーティー資金だ」


 パーティー資金? なんだ?

 どうやらパーティーで使うお金を個人資産とは別にプールしてるらしい。

 冒険者は戦力になるので出入りは自由で、他のみんなはタダで入れるようだ。私も冒険者登録をするように言われた。


 冒険者ギルドでは絡んでくる人もいるから気を付けるようにとも言われる。私なんか何の魅力も無いのに絡んでくる人いるかな? まさか女の子に喧嘩を売らないよね? 恥ずかしいだろうし。あ、女に見られない可能性が有ったわ!


 皆に案内されるままギルドに。道は覚えておこう。方向感覚は山歩きで養ったので一度覚えたら迷いはしない。


 やがて白い綺麗な建物が現れた。冒険者は、人のことは言えないがムサいイメージが有るのでもっと小汚ないのかと思ったがやはり領都のギルドなので綺麗にしているんだろう。


 大きな両開きの扉をカインが開けて、私を招き入れてくれる。


「サン、ようこそ、冒険者ギルドへ」

「うおおっ、なかなか楽しげな……酒臭っ!?」

「あはは、皆昼間から飲んでるからねえ」

「エリザ、浄化して……」

「いちいちしてられないから慣れだよ~。流石に受付回りは自動浄化の魔石とか有るから」

「速攻で移動しよう!」


 冒険者ギルドは酒臭い建物だった。これからは悪臭ギルドと呼ぼう。

 ギルドの受付は可愛い猫の耳が付いた獣人の女の子だった、が、私の目を見た途端に「ヒッ!」とか言いやがった。悪臭ギルド嬢の癖に!


「カ、カインさんお帰りなさい。殺人犯の護送でしょうか?」

「誰が殺人犯やねん! 殺してねえわ!」

「これから殺すんですか? まさか私ですか!」

「殺さねえわっ! 目付きだけで人殺しにするな!」


 いや、確かに良く言われるけどね、今までで一番怯えられたよ。そんな風に怯えるものだから変な冒険者が絡んできた。


「そこの暗殺者! アンナちゃんに近寄るでない!」

「誰が暗殺者か! こんな可憐な美少女に向かって!」

「可憐でも美でも少女でも無いじゃないか!」

「やめろ! 現実を私に突き付けるな!」

「マリオン、その辺りにしておけ……」


 どうやらこの失礼な男はマリオンと言うらしい。目付きの悪いオバサンで悪かったな。現実なんか嫌いだ。

 で、こっちの受付嬢はアンナちゃんね。私と違って本当に可憐な美少女だが、まだ怯えている。尻尾がピンと立って毛がブワッて広がっているのが猫っぽい。顔は普通の人間なのにファンタジーだ。


 どうやらこの領地では獣人なども暮らしているようだ。人は殺してないと証明する板が有るらしくそれに触って見せれば板の色が変わり、どうやら赤くなると人殺しで青くなると無罪らしい。山賊なんかを殺したり正当防衛の場合や戦争などの場合でも反応は青になる優れものだそうだ。便利だな。


 触ってみると板が青に……なったかと思ったら赤に……また青に……赤に、いや、板まで迷うなよ! 最終的には青になりましたけど何なの板が迷うって。悪いのは目付きだけですよ?






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