海鮮料理
海鮮料理は素材の味を活かすものだから逆に難しいよね。どこにどう手を入れたら良いのか分からない。海鮮そのものが塩だけでも美味いし、焼いても生でもイケる。新鮮ならだけどね。
私の場合はトマトとかキノコとか畑や山の旨味成分の強い食材を足すね。パスタとかサラダでも美味しいし、カレーやシチューも良いよね。どの料理でも基本はタンパク質を美味しく取り込むことが重要だ。炭水化物は根菜や小麦粉、お米、砂糖等、いろんな方法で美味しく補えるしね。カロリー……。
イレッサさんは自分の仕事を忘れて私の料理とお酒に舌鼓を打ってぷしゅーと煙を上げている。マーメイちゃん、推定十歳も大喜びで食べているが、勇者の目が怪しい。さっきまでは飯に夢中でマーメイちゃんの存在に気付いてなかったのに。イエスロリータノータッチ。
マーメイちゃんの貞操のためにもう少し料理をしよう。みんなお腹一杯だろうけど、お客さんは沢山いるから大丈夫だろう。
私とヒカリしか食べないかも知れないけどお刺身を引いた。
甘く、濃厚な味わいのイカ、しっかりとした食感と甘い脂の鯛、脂が美味しい鯵のような青魚。ハマチのような魚もマグロ擬きの赤身も添える。海老も行っとこう。大根のツマも必須だよね。最後にツマを食べるのが私は好きなんだよね。
魚醤と辛子を添える。魚醤は魚臭いのだが、刺身だと不思議とそれは感じないんだよね。煮物とかにも隠し味程度に入れないと香りがキツいんだけど、刺身なら美味しい。これは個人の感想だけどね。
私はいしるとよしるを使ったのだがナンプラーは刺身に合わないらしい。しょっつるやナンプラーは癖が強いのだとか。いしるやよしるも癖は強いんだけどね。
結論、物による。流石に調味料全部は試せないのでごめんなさい。魚醤高いんだもん。醤油だけでも何百種類も有るのに全部は試せないよ。無理無理。まあ理論的に甘さや出汁や香りや塩気の割合でどの食材に組み合わせたらどう変わるかって言うのは言えるんだけどね。最後は味見だよ。
醤油だけでも沢山有るのに更に香辛料を組み合わせろとか言われたら発狂するね。そこまでやるのは科学者に任せよう。最後は自分の舌だけどね。
この地域の魚醤は癖が少なくてとても刺身に合った。ハッピーだ。
勇者ヒカリもロリより刺身に食い付いた。これでまた世のロリに絶望を味わわせずに済んだな。リカエーナちゃんもマーメイちゃんもこれで救われたね。
「寿司、食べる?」
「マイマスター! 食べます!」
ついに勇者は奴隷落ちしたらしい。要らないけど。寿司は日本人ならどうにか食べたいよね。私もそう思ってよく手鞠寿司は作ったよ。何故かそんな時だけ友達が来て食われるんだけど。
私が寿司を握る間にヒカリが美味しそうに刺身を食べていると、カインリーダーや冒険者たちも興味が出てきたのか次々に刺身を食べる。イレッサさんはそれを見て冒険者たちに魚を釣ってくるように命じていた。肝っ玉おっかさんだ。冒険者たちも刺身を気に入ったらしく、次々に釣りに出掛けた。その釣った魚を捌くのは私ですが?
実際生魚を食べるのは別に日本だけの風習じゃないんだよね。陸地が狭くて流通が発達したから日本の生食ネタは多いんだけど、もし流通が整ってない状態の昔のアメリカ大陸中央部で海の魚の刺身を食べろと言われたら私も躊躇するね。腐った魚介はマジでヤバイ。
牡蠣なんかはヨーロッパでも生食が普通だったらしいよ。あんな一番ヤバイ奴を生でイケるのに何故刺身は駄目なの? 意味が分からないよね。生牡蠣より刺身の方が百倍は安全だと思う。
それでも生牡蠣を食べたのは牡蠣は生命力が強くて内陸までもったかららしい。生で食わないと勿体ないってね。日本でも生命力が強い魚は内陸でも良く食べられていたらしいけど、牡蠣はヤバイよね。活きが良ければ洋の東西問わず何でも生で食べるんだ。タルタルステーキだってそうだし。そもそもその当時の衛生観念が死んでたんだけどね。そりゃ現代の方が進んでて当たり前なんだけどさ。
発酵食品とか中には何故それを食べたのかってのも沢山あるよね。納豆とかブルーチーズとか、シュールストレミングは誰が食べようと言い出したのだろう。
ご飯が炊けたので団扇代わりにヒカリに風魔法を使ってもらう。……聖女と勇者でチート具合が違いすぎない? 私はそんな便利に魔法は使えないんだけど。
何故か先に死んだ私よりヒカリの方が一年も前に召喚されていたらしい。げせぬ。
寿司酢は米酢や赤酢が良いんだけど無いので、リンゴ酢と砂糖と塩を鍋で、沸騰させないように溶かして冷ました物を使う。あらかじめ作っておこうね。ワインビネガーとかも白なら面白いかもしれない。
酢飯は切るように混ぜよう。ちなみにたらいで作ってます。フライパンもそうだけど表面積が広い方が調理の効率が良いんだよ。
そして充分に寿司酢をお米に馴染ませて酢飯が出来たら清潔な洗った布で魚とご飯を軽く丸める。ラップが欲しいよー。アルミホイルとかポリ袋とか文明の利器が有れば色々と手間は省けるし美味しくも作れるんだけど、そこは無いものねだりだ。
お寿司は力を込めて握ったら駄目ですよ。手数を掛けずに優しくフワッと形を作る。これで手鞠寿司の完成ですね。
青魚は茗荷とかネギとか生姜とか、刺激のある野菜を添えると美味しい。白身魚は甘いタレを塗って焙っても美味しいかも。塩が良い。赤身魚は熟成したいところだけど無理なら塩で味付けして焙る。醤油と酒とみりんでヅケも良いけどね。海の幸は塩気が合うよね。塩分の取りすぎには注意しよう。果物とか野菜しっかり食べないとね。
さて、寿司も握ったがパーティーメンバーもお客さんもかなり酔いが回ってきたので、ただ炙った干物とかで私も本格的に飲む事にした。余ってる酢飯と刺身で勇者が握り寿司に挑戦して魔王が食べると言う不思議な構図が発生していた。
今日はもう料理はお休みで良いよね。酔ってふわふわした頭でゆっくり海辺の夜を過ごした。スローライフしてるなあ。
『サンちゃんの召喚回数は三回になりました。サンだけに。次は四回召喚、二キロになります』
駄洒落好きだな女神様。どうやら次に四回に増えた時に重さも二キロまでになるらしい。そこまで行けば割と無敵だな。




