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海へ行こう

 夕御飯の時間、冒険してないので海に行こうと言う話になった。ちなみにこの世界は一日二食でお昼にはおやつの串焼きとか食べるらしい。おやつが串焼きとか、フルーツも大きいから仕方ないのかな?


 晩御飯は昨日のハンバーグの残りをそのまま冷蔵していたのを砕いて油と炒め、トマトソース、ニンニクすり下ろしを少し入れて塩と胡椒で味を調整した物でパスタを食べた。パスタは茹で時間長かったよ。数十分くらい掛かったかも。しかも硬い。次から生パスタを作ろう。生パスタを作るなら卵とオリーブオイルを探さないとね。卵とかまた大きそうだから分けて保存しないと駄目だろうなあ。常温で保存したら傷むから半生のふわとろオムレツとかは難しいかな? 浄化魔法が有るから行けるか?


 ダンジョンには各階に安全地帯が有るらしいけどそこで調理かな。流石に魔物の出る所でこんな時間の掛かる調理していられない。いっそ卵やオリーブオイル召喚しておこうかな。


「グランくん卵とか取ってこれない?」

「グランくん、って我の事か? 泣いて良いか?」

「駄目。鶏の卵が欲しい、グランくん」

「う、うむ。鶏の卵で良いんだな? レッサーコカトリスの卵で良いか? それなら好きなので大量に持ってるぞ」


 おお、卵確保~。香りキノコとミンチ肉のドライカレーと白ご飯を使ったふわとろオムライスを作ろう。得意料理だ。ヒカリ、涎が出てるから拭いなさい。日本人は卵好き民族だから仕方ないか。


 レッサーコカトリスは小型で石化能力のないコカトリスで魔王国では家畜化されているらしい。卵は普通の卵の倍くらいの大きさだから量は八倍くらい有るのかな? 重たい。


 試しに一つを割ってかき混ぜたら瓶に分ける。浄化魔法が無かったらこんなことしたら腐るよね。すぐに浄化して亜空間に仕舞ってもらう。腐った生卵は怖いもんね。混ぜ方はざっくりじゃないと駄目な料理も有るのでざっくり腰を切らないように混ぜた。白身と黄身の味の差を楽しむ玉子焼きのような玉子料理は混ぜすぎない。オムライスや茶碗蒸しみたいに均一な方が良ければしっかり混ぜる。卵が主役になるか脇役になるかで考えると良い。お好み焼きなんかはざっくりでも美味しいけどね。お好み焼きは得意メニューだけどソースが作れるかなあ。マヨネーズは召喚してある。マヨネーズは腐りづらいので、しかも栄養価が高いのでサバイバルでは有用なご飯になる。マヨネーズ一つで一ヶ月生きられるらしいよ。


 オムライス一回分はこの人数でも卵が大きいから二、三個で行けそうだ。新しい卵をボウルに入れてボウルごと亜空間に仕舞ってもらう。空気に触れるのは菌やカビや酸化など、色々と不味いからね。


 さて、ドライカレーの準備をしないとね。

 まずはご飯、塩を少しだけ入れて炊いておく。


 同時にトマトソースに玉ねぎのみじん切りとお酢、砂糖を少し足してケチャップ風ソースを作る。

 次にミンチ肉と玉ねぎとキノコを炒めてクミンや胡椒、一味唐辛子等の辛味を加えて塩、トマトソースを少し足して味を調える。最後にソースを掛けるので塩味のバランスを考えてね。


 エリザに火の管理を任せてるんだけど流石にコンロ四つ分焚き火の炎を管理するのは厳しそうだった。魔力を燃料にするから薪があんまり要らないのはメリットだね。薪って買うと高いらしい。魔物のいる森の木を切らないと駄目だもんね。魔石を使って作られた錬金術師のコンロが十台くらい欲しい。


 炊けたご飯をお皿に乗せてドライカレーを乗せて卵をプレーンのオムレツにしてカレーとご飯の上に乗せて中心を切り、パカッ、とろっと割ったらソースを掛けて出来上がり。美味そう。


「ドライカレーオムライスたべりゅううう!」

「あっ、ヒカリずるいのだ!」

「か、変わった料理をまた……」

「でも香りが凄い良いよ。キノコの香りもフワッと出てくるし」

「美味い」

「なるほど、まずは香りの強いキノコの香りを玉子で閉じ込め、食べながらカレーとキノコの香りを楽しめるようにしてある。更にこの上のトマトのソースを玉ねぎや砂糖等で少し甘くして中のカレー風の辛い具の味と合わさった時に全体の味が変わるように作っている訳だ。中身はあっつあつなのに外のソースがひんやりするので味が分かりやすい。面白いし美味い」

「グスッ……美味しいです……」


 ヒカリの頭をひっぱたいておいた。勇者の頭は流石にみんなひっぱたけないので私か魔王がひっぱたこう。ヒカリも涙目だが、リカエーナのような小さい女の子を泣かしてはいかんよね。あとサトナカさん、長い。


「美味しいよぉ……」

「うむ、我も玉子は大好きだ。この料理も大好きだ」


 ヒカリの涙はメシマズから救われたかららしい。グランくんも幸福そう。嬉しそうな顔でパクつくショタが見られて私も幸せだとも。


 さて、ソースや燻製肉等の準備が整ったら海に出掛けるとして、熟成肉の様子を見ておこう。瓶詰めも野菜をレモン汁、塩胡椒、油で漬けたマリネとかお酢、水、砂糖、塩胡椒、ニンニク片、唐辛子で漬けたピクルス等を用意。


 肉は毎日男性陣が捌いて順番に熟成している。ハムにする予定の塩漬け肉やソミュール液に漬けたベーコン用の肉も熟成している。出来たらハムは茹でてベーコンは燻製だ。

 数日掛けて準備を整えた。さあ、海へ行こう!


 今回は馬車の移動で大した冒険も無さそうなので荷物持ち二人も着いてくる。私は楽が出来るね。鈍らないように多少は歩かないと駄目かも。


 しかし馬車旅なんか初めてだなあ。


「めちゃ揺れるね、ヒカリ……」

「うん……。自動車みたいには行かないよね」

「自動車を召喚できないかなあ」

「流石に質量が大きすぎるんじゃ……」

「自動車とはなんだ?」


 ヒカリと自動車の話をしているとグランくんが食い付いてきた。私もヒカリも自動車の構造なんか知らないのでだいたいこんなもの、と説明したのだが、ふむふむと頷いてかなり興味深そうだ。


「揺れない、気温が調整できる、音楽が聞ける、速い、か」

「それのでっかい貨物運搬用の奴に跳ねられてこちらに来ることに……」

「痛かったよねえ。サンはミンチだったし。ハンバーグ作らなきゃ」

「女神様と同じようなことを……」


 ちなみに最初ヒカリは私をサンさんと呼んでいたがその呼ばれ方は嫌いなので呼び捨てにさせている。木砂さんも嫌いだ。ちゃん付けしたら泣かせる。誰がロリか。


「少しくらいなら我が魔法で実現できるのだが」

「まあ贅沢は言わないから揺れだけ抑えて欲しい」

「分かった。風の精霊よ集え、レビテート」

「おお、馬車が浮いた!」


 また凄い魔法が有ったものだね。エルザも驚いているから魔法としても凄いんだろう。エリザも出来るけど馬車ほどの質量を長時間やるのは無理らしい。


 こうして多少快適になった四時間の馬車旅は残り三時間ほど続く。







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