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戦える包丁を買いました

 次は武器屋に行ってみようか、金物屋に行ってみようか。と、思ったがこの世界の武器屋や金物屋は全部鍛冶屋が担っているらしい。あちこちに鍛冶屋があってやはり得意分野で別れているっぽい。

 武器もフライパンも手に入るところを見つけて入る。


 ちなみにこの世界のフライパンはスキレットみたいなものに錆止めの魔法が掛けてあるらしい。使ってみたら焦げ付きもしないし驚いた。こんな良いフライパンが有るのにメシマズ……。いや、逆に生焼けとかで出してしまうのかな?

 フライパンはスキレットのように多少焦げるものの方が使いやすい部分もある。油を塗って馴染ませるのに焼いたり、意外と面白い。面倒では有るんだけどね。


 そう言えばうちのサトナカさんも刀を研いだりしてないし、あれもなにかしら魔法が掛けてあるんだろうな。便利だな魔法の世界は。


 このお店に置いてあるのはフライパンや包丁、フライ返しも有るね。お玉も有るし、あ、おろし金もある! 日本だとプラスチック製のしか使ったこと無いけどこいつは良い大根おろしができそうだぜ!

 いや、他にもジュースとか作るけど。果物をすり下ろして麻布で搾る。甘味と水とレモン汁を足すと良いジュースになるよ。


「なんだ、あんた料理なんかするのか? 物好きだな」

「……こんなに調理器具を作ってる人に言われたくありませんよ、師匠」


 奥から禿げた、鍛冶屋にしては痩せてるおじ様と小さい女の子が出てきた。

 ロリコンか……と蔑んだ目でおじ様を見るとビクッてなった。そう言えば私の目は人殺しの目だった。うっかりうっかり。おじ様は割とイケメンだがロリコンはノーだ。


「人を殺すのに躊躇の無い目をしているな。武器も必要か」

「この目は生まれつきです。武器に使える包丁とかまさか無いですよね?」

「有るよ」


 有るんだ……。おじ様が出してきたのは中々に格好良い形をした包丁だった。滑り止めが付いていて魔石とか言う宝石らしきものが埋められていて、人を刺してもすんなり刃が通りそうな鋭い形だ。これで明日も人を斬れ……いや、斬らないよ?


「良い目だ。その包丁は魔力の刃を作れるから魔力を込めれば遠距離を斬ることもできるぞ」

「怖い……。私たちドワーフで一番の殺し屋もあんな目は出来ないです……」

「だから誰が殺し屋だと」


 包丁を指で撫でながら人殺しの目をしていたらそれは怖いか。殺し屋に見えるのも仕方がないな、生まれつきだし。女神様目付き治して下さいよ。教会にでも行って頼めば良いのかな? 無理と言われそうだけど。


「この子はこんな目だけど良い子よ。今日も十五人くらいしか殺してないわ」

「一人も殺してねえわ!」

「怖い……」

「優秀な殺し屋に良い武器を提供するのも武器屋冥利ってものだ」

「もういいです……」


 それから燻製器が無いか聞いたらまた「有るよ」って言って持ってきてくれた。重そうだけど私の今の力なら軽い。やはり魔力のお陰で強くなってるらしい。


 包丁の試し切りをしたいので頼んでみたら店の裏の方に回された。そこは小さい土の運動場のような場所で、壊れた鎧が幾つか木の棒に挿された案山子のような格好で置かれている。

 何故包丁の試し切りに鎧が……。さっき言ってた魔力で斬れと言うことか。


「魔力を込めるってどうするの?」

「血を圧力を掛けて絞り取る感じかしらね?」

「体の中の熱を動かす感じです」

「まあ人それぞれやり方はある。やってみろ」


 とにかく集めて絞り出す感じだろうか。確か丹田と言うのがおへその下辺りに有ってそこから背中側を回すように回すと気が巡るんだっけ? なんかの本で読んだけどなんだっけ。


 その方法で体の内側を回したエネルギーを包丁に絞り出し、投げるように包丁を振ってみた。スカン、と言う軽い音がした。最初ならこんなものか……。


「……不味いぞ」

「はわわっ、防御陣が破られました!」

「ええっ、サン、魔力の使い方上手いし……」

「へっ?」


 数瞬を置いて、鎧が中の太い棒ごと真っ二つにずれ、倒れた。更に数瞬を置いてから後ろの壁がガラガラ崩れていく……。えええええええっ!!

 威力有りすぎぃい!!


「いや、サンのせいだからね? 自重しようね?」

「壁の修理代……幾ら掛かる」

「大金貨二枚くらいですかねえ……」

「そ、そんなにお金は無いよ?」


 私まだ駆け出し冒険者だし……こんなヤバイ包丁は持たない方が良さそうだ。……逃げる?


「いや、包丁でも武器でも、使うのが上手い奴が持つべきだ。持っていけ」

「か、壁は?」

「こちらで直す。早く行った方が良いぞ。すぐに伯爵の騎士団が来るだろうからな。燻製器もおまけでくれてやる」

「そ、それは不味いわね。サン、行くわよ!」

「お、お代!」

「良いから行け。お前が竜でも殺したらうちで武器を買ったと宣伝してくれれば良い」

「竜は狩れないよ?!」

「いや、狩れますよ……頑張って下さいね」


 結局時間がないと言うことでエリザに引っ張られて宿屋に逃げ帰った。食材は明日かな……。


 この日は空き地で枝豆を一キロ召喚して塩ゆでにして食べてお酒を飲んで寝た。

 詳しい事情の説明はエリザがしてくれたけれど皆目を丸くしていたな。

 鬱気味の私の目は一層キツくなってしまったけれど。


 女神様手加減してください。それか目を治して。






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