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メインフェイズ 1

2話目投稿します。

3話目は明日9日の9時投稿予定です。

 さて、この(わたくし)のオリジナルである隷属の術の良い所は、奴隷魔術と違い無理やり言う事を聞かせるのではなく、脳をイジり自ら私の命令に従うという所である。

しかも脳をイジる時以外は魔術を使用していないため、探知魔術でも分からないという所である。

正確にはこれは魔術ではなく錬金術の一種である。

人体を精密に知り、どこをイジればどうなるか? わたしはこの繰り返す人生の中で何度も学び、そして熟知した。

そう私は錬金術を極めた。 前回の人生で不老不死のヒミツを解き明かす寸前までいったほどに!

その最後のピース。 それを手に入れるために色々しなければいけない。

まずはお父様を手駒にする必要がある。


「エッラ、お父様は屋敷にご在宅しているかしら?」


私が問うと、エッラは(かしこ)まって答える。


「はい、御屋形様は執務室におられるはずでございますお嬢様」


ふむ、今は早朝。 ならば出仕前なのかしら?

丁度いいわ。 早速イジらせてもらおうかしら。


「執務室に行きます。 ついてきなさい」


「はいお嬢様」




朝は忙しいのか、執務室前に侍従の姿は見えない。

エッラに視線で促し、ノックも無しにドアを開けさせそのまま入室する。

ドアの音で書き物でもしていたのか机に向かってうつ向いていた顔を上げ、入って来たのが私だとわかると不快げな顔で睨んできた。


「なんだ! いきなりノックもなく! こ「おはようございますお父様『edetae(エデタ)Lopettaa(ロペッター)』……ガッ!?」


突然動かなくなった身体。 それをしたのが幼い私である事に驚愕するお父様。


edetae(エデタ)Orja(オリヤ)


そんなお父様になんの感情も浮かばない。 ただ自分の駒にするべく隷属の呪を撃ち頭の中をイジる。

さてそれでは不老不死の最後のピースを手に入れるための最初の一手を打ちましょうか。

ウフフ……




お父様(手駒)を王宮に行かせ、私と王太子殿下との婚約を結ばせるよう(こと)づけた。

今までの繰り返しの人生で何度も婚約を結ばせまいとしていました。 しかし今回は自ら婚約を結ぶために動くというのはおかしなものだけれど、これは必要な事。

この婚約がなければ最後のピースに干渉が出来ないし、あの方に会う事も難しくなってしまう。

さて、この後は実験器具などを用意させなくては。

運命の時である18の時までにすべて終わらせなければ……ね。

私はエッラにもろもろの事を指示すると部屋へ戻る。


部屋に戻った私は、ふとこれまでの人生を振り返り思い出してみました。

懐かしむのではなく自戒の意味を込めて。


私はアネルマ・レンピ・マキネン。 マキネン公爵家の令嬢として生を受けました。

父は現王の弟であるレンピ・ハンネス・マキネンと、隣国スヴェーリエ王国の王女であるブリット=マリー・ウップランドを母に持ちます。

いわゆる政略結婚という物でした。

母は苛烈で他人にも自分にも厳しい女性であったといいます。

ですが私が2歳になるかならないかの時に流行り病であっさりと亡くなったそうです。

夫婦仲は冷え切っていて、父は私が生まれた後は母に寄りつかなかったそうです。

当然のように私にも興味がなく、母が亡くなってからは半ば放置されていました。

淑女教育なども私が王太子殿下の婚約者に選ばれた後でやっと受けれるようになったぐらいです。

幼い頃の私は父からそして周りからの愛情に飢えていました。

12の頃に結ばれた婚約。 それは私にとって愛情を貰えるかもしれない出来事でした。

なにせ今まで放置されていたのに王太子の婚約者に決まった途端、教育を受けるために女性家庭教師(ガヴァネス)が付くことになったからです。

彼女、ハンナマリ・エーミル・アッカネン子爵婦人は初めて私に優しくしてくれた方だったからです。

もちろん厳しい時は厳しく、しかしそれ以外はとても親身になってくれて私の待遇も父に掛け合ってくれたほどでした。

そうなると当然のように婚約者である王太子殿下にも期待してしまうのは仕方のない事だったと思います。


しかし、王太子殿下はこの婚約をよくは思っていなかった。 当時はそんなこと気づきもしなかったのですけれどね。

逢うのは少しの時間だけ。 あの方からの贈り物は誕生日に花と代筆者が書いたであろうメッセージカードのみ。

それでも私はうれしかったけれども。

今にして思えば、殿下は王太子という身分への重圧を疎ましく思いつつ、王太子としての権力による贅を尽くす事にはなんの疑問も抱くことのないお方でした。

今となってはなぜあんなにも彼に心惹かれていたのか……

いえ、彼をではなく愛情をくれるかもしれないモノとしてしか見ていなかったのかもしれません。

そしてそんな歪んだ関係は当然のように壊れた。


私が16の時、聖女が見つかったのだ。





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