真実
「私が、あなたの婚約者のエミリアよ」
リリア王女は言った。
「どういう、ことだ」
「私があなたの婚約者だったと言っているのよ」
彼女は、凛とした声で言った。
「わ、分かったぞ。お前はリリア王女の偽物だ」
スカルはそのことを受け入れられないからか、世迷言を言い出した。
「私がリリア王女というのは真実よ。ねえ、お父様」
「そうだな」
国王がリリアの問いに答えた。
「そして、私があなたの婚約者であったエミリアというのも真実」
「う、嘘だ」
「本当のことよ。私は、王族の血を受け継いでいるのだもの」
「で、では、リリア王女が病弱だというのは……」
「私がエミリアとして自由に動くための嘘よ」
この国ではリリア王女は、病弱であり、人前に顔を見せないというのが専らの噂だった。
なので、ここにいる者たちも殆どがリリア王女の顔を見たことがなかったのだ。
「では、何故、伯爵家の娘などに変装していたのだ」
ヘルニア公爵が聞いてきた。
「王城からでは見られない市井の様子などを学ばせるためにだ。王城から民たちを見ていたところで、何も市井の様子は分からないからな」
答えたのは国王だった。
「そして、ファニア伯爵家はお母様の生家だったから、私が身分を隠して生活するには丁度良かったのよ」
リリア王女の母、つまり王妃はファニア伯爵家出身で、現ファニア伯爵は王妃の兄に当たるのだ。
「だ、だが、お前のその容姿はどういうことだ。リリア王女とエミリアでは容姿が違いすぎるだろ」
エミリアの容姿は、平凡という言葉が当てはまる。
しかし、リリア王女乗って容姿はとても美しくバランスのとれたものだ。
「私ね、昔から変装は得意だったのよ。だから、エミリアに変装するのは簡単なのよ」
「変装にも程があるだろう」
「あ、ちなみにさっき私がエミリアとして部屋に入ってきたときの姿は全て化粧をして私が自分でしたものよ」
エミリアが入ってきたときの顔のやつれた感じや痣などは全てリリア王女の化粧だった。
「ふ、ふふふ。な、何よ、それ。一体どういうことよ。
スカル様が国王になれない。
次の国王はその女だ。
認めないわよ……そんなの、絶対に認めないわよ」
声をあげたのは、今まで黙っていたローズだった。




