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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第四章:観光気分? いいえ、運命のフラグです

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50:女王装備と決意のフラグ

 王都に帰還してからの一ヶ月。

 ソーマたちは、ただ装備の完成を待っていたわけではなかった。


 ――戦いの爪痕は、体にも心にも、深く刻まれていた。

 それを乗り越えるために。

 次は、もっと強くなるために。

 ソーマたちは日々、己と向き合い、鍛錬に身を投じていた。


 ギルドの訓練場――

 朝焼けが石畳に影を落とす頃から、夜の星が瞬くまで、響き続ける剣戟と足音。

 熱気に包まれた空間で、ソーマたちの叫びが日々の風景となっていた。


「……もっと速く!突きの初速を上げろ、ソーマ!」

「分かってる……でも、足の使い方がまだ甘い……!」


 息を荒げ、汗に濡れた前髪をかき上げる。

 木剣を握る手に力を込めて、ソーマは構え直した。


 突き、突き、突き――

 一日に数百回、同じ動作を繰り返す。


 女王蜂の鋭い針のような、刺し貫く一撃を目指して。

 ただの技ではない。

 命を懸けて戦ったあの瞬間を、体に刻みつけるように。


「もう一回……ッ、今度こそ――!」


 鋭く踏み込む。

 空気が裂け、木剣が一直線に空間を突き抜けた。


「……いい。今のが、今日イチだな」


 ジョッシュが小さく頷いた。

 その声には、かつての軽さではなく、戦友としての真剣さが滲んでいた。

 そしてジョッシュ自身もまた、自らの体を徹底的に鍛え上げていた。


「ジョッシュ!次、スライディング!」

「了解!いくぞ……っ!」


 助走、姿勢の低さ、滑り込み。

 その動きはもはや戦場のアスリートのような洗練を帯びていた。


「……くそ、膝の角度が甘かったな。あと3度、いや5度低く入れたら……」


 自らに言い聞かせるように呟き、再び走り出す。

 その目には、怯えも戸惑いもなかった。

 ただひたすら、先を見据える光だけが宿っていた。


 そして、クリスもまた――

 小型の盾を前に掲げ、訓練官の繰り出す斧の模擬攻撃を真正面から受け止めていた。


 ガキィンッ!


 鋭い音と共に、盾がわずかに震える。

 それでも一歩も退かずに耐え抜くその姿に、訓練官が目を見張った。


「クリスさん、防御の精度、明らかに上がってますよ」

「……ありがとうございます。でも、私はまだ……。これじゃ、ソーマさんを守れない」


 その瞳は、静かに、けれど確かに燃えていた。

 あのとき――もし自分にもっと力があれば。

 誰かが傷つく前に、守れたかもしれない。


 だからこそ、日々の訓練が彼女にとっての贖罪であり、希望だった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 ――ギルドでは、噂が流れていた。


「ユーサーたち、また任務成功させたらしいぜ。セクト樹海の件から絶好調だな」

「Bクラス昇格も時間の問題らしいぜ」

「さすが勇者と聖女候補……格が違ぇな」


 冷やかし混じりの言葉、嫉妬の眼差し。

 しかしソーマたちは、そんなものに耳を貸さなかった。


「――焦るな、俺たちは俺たちのやり方でやる」


 ソーマがそう呟いたとき、クリスもジョッシュも黙って頷いた。

 地道に、一歩ずつ、確実に力を積み上げていく。

 その覚悟だけが、偽りのない強さを生むと信じていた。


 討伐、護衛、薬草採取――


 訓練の合間に受けたどんなに小さな依頼でも、ソーマたちは一切手を抜かなかった。

 実戦の中で、動きや連携を磨いていく。


 クリスは魔力の流れを読み取り、詠唱の隙を短縮する術を身につけた。

 ジョッシュは地形を読む力と移動技術をさらに高め、まるで影のように動いた。

 そしてソーマは、あらゆる突き技に魂を込めて、精度と強度を極限まで高めていた。


 そして――その日が訪れた。


 ギルドで依頼を報告した帰り道。

 三人は、鍛冶屋の前に立っていた。


「……やっぱ、ドキドキするな」

「俺も。ここまで来たんだな……って、実感が湧く」

「ゼルガンさんのことだから、絶対に妥協してないはず」


 ソーマが扉をノックすると、鉄の音と共に扉が開いた。


「よう。来たか。待たせたな」


 ゼルガンの顔は、どこか疲れていたが、その目はしっかりと仕事を終えた職人の誇りに満ちていた。


「……さっそく、見せてくれませんか?」


 ソーマの声に、ゼルガンは無言で頷き、奥の工房へと導いた。

 鉄と革の匂い。

 炉の余熱が残る空間。


 そこに――並んでいたのは、四つの装備。

 まるで宝石のように光を反射し、静かに存在感を放っていた。


「まずは、お前のだ、ソーマ」


 ゼルガンが差し出したのは、銀灰色の細剣。

 刀身には淡い金の筋が走り、光を受けるたびに蜂の翅のようにきらめいた。


「――《蜂王剣(レギーナスティング)》。その名の通り、王の一刺しだ」


 手に取った瞬間、剣が空気を切って鳴った。


「……すごい。まるで……意志を持っているみたいだ」

「鍔と芯に針、水晶体は刀身に。突きに全振りした構造だ。魔力を溜めて放つ機能も入れてある。うまく使いこなせ」

「ありがとうございます……最高の一本です」


 続いて差し出されたのは、黒と金に彩られた軽装の鎧。


「――《鎧蜂(レギナギア)》加速特化型だ。魔力で発動させれば、瞬間的に最大速度を引き出せる」

「……これが、俺の……」


 ソーマはゆっくりとそれを抱きしめるように見つめた。

 異形の女王との死闘、その素材をまとうことの意味。

 ――全てがこの装備に込められていた。


「次は、ジョッシュ。お前のはこいつだ」


 重そうな革のブーツ。

 だが裏面には複数の突起が埋め込まれていた。


「《蜂靴(スティングスパイク)》――突起は針素材。滑り止め、蹴撃、全てに対応してる。もちろん収納可能」

「最高……!ゼルガンさん、完璧っすよ!」


「そして……クリス」


 ゼルガンが最後に差し出したのは、小型の盾。

 中央には蜂の紋章、淡く脈打つ魔力。


「《蜂王盾(クイーンズミラー)》――魔法障壁の反射機能を搭載してある。重さも調整した。扱いやすいはずだ」


 クリスは盾を両手で抱きしめた。


「……ありがとうございます。私、この盾で必ず、仲間を守ります」


 三人が装備を身に着け、ゆっくりと動きを確かめる。

 身体が、新しい力に適応していく。

 自分が変わったのを、肌で感じられる。


「これが……俺たちの、新たな武器……」


 ソーマが静かに呟いた。


「これで……次に出会う敵がどれほど強くても、もう、引けねぇな」


 ジョッシュがニヤッと笑った。


「うん。この力に、恥じない選択をしましょう」


 クリスの言葉に、ゼルガンは静かに頷いた。


「――命を賭けるってのは、そういうことだ。お前たちの覚悟、しかと見せてもらった」


 三人は並んで、深く頭を下げた。


「ゼルガンさん……本当に、ありがとうございました!」


 夕焼けの中、工房の扉が閉まる。

 金色に染まった空の下、それぞれの装備が光を返す。


 ――次の冒険へ。

 新たな一歩が、いま始まる。

 新しい装備ってのはいいですね。

 ソーマの今まで使っていた剣に関しては言及されていませんがケンから貰った剣です。

 今回作ってもらったレギーナスティングは攻撃特化で敵の攻撃を受けたりする時等のメイン装備は今までのロングソードって役割持たせておきます。


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