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【第七章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第六章:新年会? いいえ、波乱のフラグです

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100:希望と不安のフラグ

 日が上がり切る頃、ソーマたちはゼルガンに連れられ、彼の鍛冶場へと足を運んでいた。

 猪熊亭の賑わいから少し離れた路地に構えるその工房は、昼夜を問わず鉄と炎の匂いが漂い、まるで鍛冶師そのものが宿ったかのような重厚な気配を放っている。

 扉を押し開けると、赤熱した炉の残光が室内を照らし、金床に散らばる火花が宝石のように瞬いていた。


 ソーマは思わず喉を鳴らす。

 ――ここから、新しい武具が生まれるのだ。


「ふぅ……やっぱり落ち着くな、この匂いは」


 ゼルガンは深呼吸し、炉の熱気を胸いっぱいに吸い込む。


「さぁ、中に入れ。約束していたものを見せてやろう」


 仲間たちは互いに目を見合わせ、一歩、また一歩と工房の奥へ足を進めた。

 ゼルガンがまず手を伸ばしたのは、ソーマから渡された一本の剣だった。

 ソーマがこの数日、借り物として握っていたロングソード。

 刃には細かな亀裂が走り、柄の部分も摩耗していた。


「……たった数日でここまでとはな。もはや普通の剣では、ソーマの剣技に追いつけん」


 一目見ただけでそこまで判断するあたり、やはり鍛冶師の目は鋭い

 ソーマは苦笑いを浮かべつつ頭を下げた。


「せっかくの借り物を持たせてもらったのに……使いこなせなかった俺がまだ未熟なんです」


 ゼルガンはその視線を受け止め、首を横に振る。


「違う。借り物は借り物だ。――お前にはもっと相応しいものを握ってもらう」


 次にゼルガンの視線はジョッシュへ。

 ジョッシュは気まずそうに砕けたバットの残骸を抱えている。


「……悪ぃな、ゼルガンさん。せっかく作ってもらったバット、爆発に巻き込まれちまった……」


 だがゼルガンは鼻を鳴らし、豪快に笑った。


「ハッ! 壊れることを恐れて物を振るうようなやつに武器を預けはせん。砕けたなら、それを超えるものを作ればいいだけだ」


 その言葉に、ジョッシュは唇を引き結び、目を輝かせた。

 ゼルガンは奥の台に布で覆われた大きなケースを置き、その布を豪快に払った。

 そこには、見たこともない光沢を放つ武具が整然と並んでいた。


「アスガンドで戦ったゴーレム、ドラゴニア。そのコアと残骸を、余すことなく叩き上げた。お前たちのためだけの一品だ」」


 その言葉に、一行は思わず息を呑む。


 ゼルガンがまず取り上げたのは、一振りの剣だった。

 深紅を基調に、刃と鍔には黄金の文様が走る。

 赤と金が交互に脈動し、まるで竜の心臓が鼓動しているかのようだ。


 そして剣の根本、柄には――剣には不釣り合いな、銃の引き金のような突起と、グリップには弾倉を思わせる部品が組み込まれていた。


「ソーマ。これはお前の新しい剣、竜機剣(ドラグニル)だ。ドラゴニアのコアを宿し、振るうたびにその力が刃を走る。もちろんそれだけではないがな」


 ソーマは震える手でそれを受け取り、ゆっくりと鞘から抜いた。

 ――瞬間、深紅の光が剣身を走り、工房全体を照らし出す。


「……応えている……俺の動きに」


 手に馴染む重量感。

 呼吸と同調するような振動。

 ソーマの胸に、熱い鼓動が重なった。


「そしてこれが対となる鎧、竜機装(ドラグレギナ)だ。防御と機動を両立した竜の装備だ。ドラグニルと対を成す。細かい機能はまた説明してやる」


 ゼルガンが差し出したのは赤金の装甲。

 竜の翼を思わせる装飾と、可動性を確保した柔軟な造りが共存している。

 ただ纏うだけで、戦場を翔け抜ける竜の幻影が背後に浮かぶような迫力があった。


「……これが、俺の……新しい相棒」


 ソーマの目に強い光が宿る。


 次にゼルガンが手にしたのは、自然そのものを思わせる杖だった。

 世界樹の枝を削り出した木肌に、深緑の魔石が嵌め込まれている。


「クリス。これは樹命杖(ユグドラシルロッド)。アスガンドの鉱山で見つけた純度の高い緑の魔石を世界樹の杖に組み込んだ。癒しも攻撃も、命を巡らせる力が宿っている」


 クリスは両手で杖を受け取り、祈るように握った瞬間、杖の魔石が光を放ち、清浄な風が工房を包み込む。


「……これなら、私……もっと多くを守れる」


 その声音には静かな決意が込められていた。

 続いてゼルガンは重厚な棒をジョッシュへと投げた。

 赤黒い光沢の表面が炎のように揺らめき、竜の咆哮が今にも聞こえそうな迫力を宿す。


「ジョッシュ。お前には竜炎撃棒(ドラグスマッシャー)だ。振るえば竜炎が走り、打ち返せば爆ぜる衝撃を叩き込む」


 ジョッシュは両手で抱え込み、にやりと笑った。


「うおお……! 手に馴染む! こいつぁ……俺の新しい相棒だ!」


 最後にゼルガンが差し出したのは、小さな片眼鏡。

 竜の瞳を模した紅玉がレンズにはめ込まれており、覗き込むだけで世界を射抜くような威圧感を放っていた。


「エルーナ。お前には竜眼照準(ドラグスコープ)だ。装着すれば竜の視界を得られる。遠くも、闇も、隠れた敵さえも――すべて見抜き狙撃の補助もしてくれるだろう」


 エルーナは静かに片目に嵌め、視界を覗き込んだ。


「……あんな遠くの文字まで見える……それにこれは……距離まで……」


 無表情な声に、抑えきれない感動が滲む。


 新たな装備を前に、一行はしばし言葉を失った。

 炉の熱、機械の竜の力、仲間たちの呼吸。

 すべてが一つに溶け合い、新たな絆を結び直したように感じられる。


 ソーマは竜機剣(ドラグニル)を胸に当て、深く息を吸った。


「ゼルガンさん……ありがとうございます。これなら……また前に進めます」


 ゼルガンは豪快に笑い、腕を組む。


「当然だ。だが、その力をどう使うかはお前たち次第だぞ。……早速依頼でも受けて試してみろ」


 しかしソーマたちの表情は曇った。

 クリスが代わりに説明する。


「……依頼はすべて停止しています。魔族が依頼を偽装していたことが発覚し……勇者の卵や聖女の卵まで狙われているようで」


 ゼルガンの表情も険しくなった。


「……そうか。ならば尚更だ。新しい武具を試す場は限られるだろうが、焦るな。必ずその時は来る」


 ソーマは拳を握り、頷いた。

 不安は尽きない。だが、この装備がある限り、自分たちはまだ戦える。

 ――そう信じられた。


 その時だった。


 静まり返った工房に、澄んだ音が響く。

 ソーマが机の上に置かれた魔道通信機が、低く脈打つように光を放っていた。


「……誰からだろう?」


 ソーマに視線が集まる。


 誰から、何の報せなのか――

 新装備を手にしたばかりの一行は、緊張に息を呑んだ。

 記念すべき百話に新装備!

 おそらくこれがソーマの最終装備のはずです。

 少なくともこれ以上追加しようがないレベルの装備設定にしました。

 他メンバーもほぼ決定ですがあるとすればエルーナにガトリングかバズーカ持たせるくらい。


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