表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

723/727

773 リインカーネーション43

 イレギュラーに発生したイレギュラー。


 私は彼の中にあった異物がノルンの端末だと分かったとき、非常に落胆した。


 やっと本物と出会えた。


 本物になると思っていた。


 だから、余計にがっかりした。


 結局は、ノルンに誘導され(・・・・)作られたまがい物でしかないと思った。


 本物らしい偽物。


 虚飾。


 そうだと思った。


 でも……違った。


 違っていた。


 至る。


 至った。


 ……。


 ……。


 ……。


 自身のバックアップとして分体を作っておく。


 本体が死んだとしてもバックアップとして用意していた分体が動き、再生する。


 分体を含めた全てが私であり、全てで私だった。


 全てが私。


 私は不死に近い。


 天津老人が目指した不死――そのほぼ完成形と言って良いと思う。


 ()を壊しただけでは死なない。


 私を殺す方法。


 私を構成しているナノマシーンの活動が停止したとき、その個体(・・)は動きを止め崩壊する。もし、全てのナノマシーンの活動が停止すれば――その時はさすがに私も死に至るだろう。


 死。


 ……。


 でも、私が死ぬことはないだろう。


 まずナノマシーンの核を壊すことが難しい。それは数が膨大だから。私がメインにしている個体だけでも百兆近い数のナノマシーンが動いている。どれか一つが壊れても他がバックアップとして動き、壊れた個体を修理し再生させる。そんな個体を分体(バックアップ)としていくつも用意している。


 ナノマシーンの命令を書き換えて崩壊させることも難しい。私の体を構成しているナノマシーンは旧時代に作られたものだ。今の時代のノルン系統のナノマシーンとは種類が違う。命令系統が違う。私の体を構成しているものの方が上位。こちらから命令することは出来ても、向こうが私のナノマシーンに命令することは出来ない。


 もし、私のナノマシーンの命令を書き換えることが出来たとしても無駄だ。私はいくつも分体を用意しているのだから。違法な命令に感染した個体を切り離していけば良いだけ。その分、私の命令で動くナノマシーンの数は減るだろう。それだけを見れば終わりが近づくように見える。私を終わらせることが出来るように見える。でも、その分だけ今の時代のナノマシーンを取り込み、吸収し、改造すれば良い。旧時代のものと同じように造り替えれば良い。私はそれが出来る。そうして、私は再生し、増えていく。


 私が管理出来る、把握することが出来るナノマシーンには限界がある。無限ではない。無限に取り込み、増殖し、この世界を埋め尽くすなんてことは出来ない。


 終わりはある。


 完全な不死ではない。でも、それは終わりが見えないほど先にあるものだ。


 はずだった。


 ……。


 ……。


 ……。


 分体の一つがエラーを起こした。


 分体の一つにアクセスが出来ない。


 エラー個体を切り離そうとしても切り離すことが出来ない。


 いえ(・・)これは(・・・)切り離したくない(・・・・・・・・)という感覚(・・)


 私なのに私でなくなっている感覚。


 おかしい。


 この状態でエラー個体以外の私が壊れたらどうなるのだろうか?


 分体がバックアップである以上、私はエラー個体として再生されるのだろう。その時、私は私だろうか。


 私という識が消える。


 それは私の死。


 なるほど。


 これが天津老人の恐れた死、ね。


 エラー個体だとしても使われているナノマシーンは変わらない。エラー個体を経由して、分体を再構築し、命令系統を修復すれば再起動出来るかもしれない。


 ……。


 ……。


 エラー個体を残しても再起動するための仕組みは構築出来る。


 この程度では終わらない。


 エラー個体はどうする?


 エラー個体との繋がりを絶ち、処分するのが一番。


 でも。


 でも、だ。


 こんな、エラーが起こるなんて。


 起こるはずがないことが起こった。


 あり得ないことがあり得た。


 奇跡。


 そう、これは奇跡だ。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。



「ねえ、そうでしょう。私は間違っていた。間違っていなかったから、間違えた。間違えていたから、間違えなかった。ねえ、あなたはどう思う?」

「……」

「そう。二つで一つだった。だから、この状況は間違えている、間違っている。そうでしょう? 私は気付けた。ふふふ、だから行きましょう。借りを返すためにも」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ