767 リインカーネーション37
「こ、これどうするんだよ?」
「肉だ。まだ使える」
……。
やれやれ、とても不愉快。
転がっている私の頭にとても不愉快な声が聞こえている。
私の死体の周りに車輪がついた円筒形たちが集まり始めたようだ。
「この女は嘘吐きだ」
「肉だ」
「敗北者」
「嘘吐きは処分」
「再利用か?」
不快な声が聞こえる。
身の程を知らない愚か者たちめ。
私はため息を吐こうとし、頭と体が離れ離れになっていたことを思い出す。
「まったくよォ、こんなのが四天王? こんなに弱くてよォ。こいつが死んだら約束はどうなるんだ? たくっ、叶えてくれるのか? ゴミクズが、約束を守ってくれるのかよォォォォッ!」
そして、私を取り囲んでいる円筒形たちの中から見覚えのある女が現れた。
アークシード。
いえ、今はアクシードだったかしら。
そのアクシードが攫い、四天王で調整した個体だ。調整したのは主に、あのクソ野郎だったかしら?
ふふふ、クソ野郎。
私は胴体を起こし、転がっていた頭を拾う。綺麗にスパッとやられている。これならくっつけるのも簡単だろう。
頭をくっつけ、軽くトントンと叩き、首を回す。
「うー、あ、あー、あー、声のテスト、テスト。ふふふ、動く、動く」
うん、問題ない。頭と胴体はちゃんとくっついた。
私は女を見る。
女が驚いた目でこちらを見ている。
「ひゃ、ひゃあ、生き返ったー」
「嘘吐きが生き返った」
「生身だったはずだ、生身だったはずだ」
私を取り囲んでいた円筒形たちが騒ぎ、慌てて逃げ出す。
残ったのは私とこの女だけ。
「ふふふ、それで? 四天王最弱だったかしら? それはもう担当が居るのだけれどごめんなさいねぇ」
私は髪を掻き上げる。
「ゴミクズがぁ、ゴミクズがよォォ!」
女が叫んでいる。
「ふふふ、上司に対する態度とは思えないけど? でも、その態度、良いね。ふふふ、で? これで分かったんじゃあないかしら? 生き返ること、不死、嘘じゃないって分かったんじゃあないかしら?」
「約束、約束だからな! 守れよ、守れよォォ!」
私は女の声を聞きながら肩を竦める。
さて、あのアマルガムシリーズを真似た少年はどうなっているのかな?
私は針をあの少年の体の中に潜り込ませた。定着するまで多少時間はかかるかもしれないが、私の因子は上手くやれるだろう。
「ふふふ、はいはい。それじゃあ、頑張ってね」
私は体をナノマシーンに分解し、消えるようにして移動する。
あの少年は私と同じように旧時代のナノマシーンで構成されていた。
アマルガムシリーズのように一部だけがナノマシーンになっているなんて感じじゃない。全てが旧時代のナノマシーンで造られている。なのに、バラバラになることもなく調和し、一つの人として生きている。喋ってみた感じ、しっかり自分の意志を持っているようだった。
本当に面白い。
見守ろう。
私はこの都市の施設で待つ。
少年が再び動き出すのを待つ。
潜り込ませたナノマシーンを使って少年の身体を調べたところ、一部、異常が見受けられた。
「ふふふ、これを異常と言って良いのかしら?」
旧時代のナノマシーン。
崩壊後の世界に作られた人もどきとは違う。それらも私たちと同じように全てナノマシーンで構成されているが、旧時代のものより優れている分、自由がない。人の細胞がナノマシーンに置き換わっただけ。物体を構成している原子がナノマシーンに置き換わっているだけ。本当にそれだけ。
人は人だし、動物は動物だ。
建物の壁だって、そこらに生えている植物だって、同じ。
旧時代を再現し、置き換わっただけ。
何も変わらない。
何も変わっていない。
何も変えることが出来ない。
外部から特殊な方法で干渉しない限り何も出来ない。
そんなナノマシーンだ。
だけど、あの少年は違う。
私や、私たちアクシード四天王と同じ。
どこからあんな少年が生まれたのだろうか。
そして異常。
異物が見られる。
構成しているナノマシーンの中に一部、異物が混じっていた。
そこだけ異質だ。
もしかすると、その異物が少年の核なんだろうか。
それが少年の体を構成するように指令を出している?
そこだけ旧時代のものでありながら、今の技術が入り込んでいる。
「今の技術で再現しただけのまがい物なのかしら? となるとこの異物は端末? 端末を直接埋め込むなんて、ふふふ」
確かめよう。
潜り込ませたナノマシーンだけでは限界がある。
直接会って、確認した方が良い。
私は少年を待つ。
少年を待つことにする。
「誰だ」
そして現れる。
どれだけ待っただろう。
「早かったじゃない」
私は何年でも何百年でも待つつもりだった。
だが、少年はすぐに現れた。
思っていたよりも優秀だ。
「本物か?」
「ほら、これ。必要でしょう?」
私は少年に拾っておいたナイフを渡す。
「お前は……」
「私はオリカルクム。今はそう呼んで」
そう、私はオリカルクム。
先生の研究施設で生まれたオリカルクムシリーズの最後の生き残り。
旧時代の生き残り。
そして、今はアクシード四天王のミメラスプレンデンス。
ふふふ、それで、あなたは何者なのかしら。




