070 賞金稼ぎ07――『まるでゲームだな』
「受け取りなさい」
スーツの女の言葉に合わせたように黒いボディアーマーの男たちが部屋の中へ入ってくる。表情を見せるためなのか、頭はヘルメットのみで顔を剥き出しにしているが、これから何処の暴徒鎮圧に向かうつもりなのだろうか、と思ってしまうほどの完全防備なアーマー姿だ。
そんな厳つい男たちが机の上に四角い金属板を置いていく。あれがタグとやらだろうか? 免許証? IDカード? いや、少し大きめのドッグタグが近いだろうか。
「随分と荒っぽそうな連中だな」
「見た目だけの連中だよ」
俺の独り言にウルフが反応する。
「そうなのか?」
「あの男を見なよ。顔が傷だらけだろう? つまり、傷を負うほど弱いってことだよ。しかも、それを消そうともしない。弱いから、はったりのためにそういう外見にしているんだよ」
「そういうものか」
確かに、このウルフが言っていることに一理ありそうな気はする。
だが、そんな見た目だけの連中が、騒いでいたアンテッドとやらを瞬時に拘束出来たのは何故だ? そんなにもアンテッドとやらは弱い集団だったのだろうか。それとも何か裏があるのか? その可能性は否定出来ない。
『ふ、ん。雑魚は雑魚でしょ』
『まぁ、そうだろう』
厳ついボディアーマーの男の一人が俺たちの前にもやって来て机の上にタグを置こうとする。そして、その手を止め傷だらけの顔を歪ませ首を傾げる。
ん? どうしたんだ?
ボディアーマーの男が、偉そうな態度で席に座っているセラフとその後ろに立っている俺を見比べている。
ああ、そういうことか。
「俺が受け取る」
傷だらけの顔を歪ませ困惑していた男からタグを受け取る。ボディアーマーの厳つい男はホッとしたような表情を作り、部屋の外へと戻っていった。
『セラフ、お前の空気を読まない行動でさっきの人を困らせたみたいだぞ』
『はぁ? 文句があるの? なんで私がお前より立場が下みたいに立つ必要があるの? 馬鹿なの』
そんな馬鹿みたいな理由で座ったのか。
『お前は俺の体を手に入れるつもりだろう? その体を立たせて良いのか? それにお前の本体は俺の右目にあるのだろう。本体よりも偽りの体の方が偉いのか』
セラフが無言で立ち上がる。
……。
俺はセラフと入れ替わり椅子に座る。
人工知能というと賢いイメージがあったのだが、セラフを見ているとそのイメージが覆されてしまう。
『はぁ!? な、に、それ! 馬鹿なの?』
セラフのあまりにも高度な罵倒にため息が出そうになる。
「なんで、突然、席を替わったんだい?」
ウルフが聞いてくる。何故、こいつはここまで俺を構ってくるのだろう。
「足が棒になるほど疲れたからだよ。これでも銃よりも重いものを持ったことがないくらい貧弱でね」
俺は大げさに肩を竦める。
「ウルフが聞いてるのに、お前、何、そのふざけた態度」
ウルフの隣の女が騒がしく噛みついてくる。こいつもさっきのアンテッドの連中みたいに、ボディアーマーさんに連行されないかな。
「ふふ、君は面白いね」
「そりゃどーも」
俺たちがこんなやり取りをしている間も説明会は続く。
「そのタグにはお前たちの情報が登録され、本人以外では認証出来ないようになっている。ランクや貢献度を表示させることも出来るので上手く扱うように」
情報が登録されている?
いつの間に、どうやって?
……。
いや、そうか。
あれか。
思い当たることがあった。
クロウズ試験の時に身につけた腕輪だ。あの腕輪を介して情報を収集し登録したのか。
「タグはクロウズの口座とも直結している。お前たちが試験で稼いだコイルは、その新しく開設された口座へとすでに振り込まれている。後で確認しておくように」
なるほどな。
これでやっとお金が手に入った訳だ。ゲンじいさんの借金返済に充てるのも悪くないが、まずは手に入れたクルマ用の武器を探してみるのが良いかもしれない。その辺もゲンじいさんと相談か。
その後も説明会は続く。
クロウズの仕事は人々を守ることらしい。
危険なマシーンやビーストなどを倒すこと。これは微量ながらお金が貰えるようだ。
そして、賞金首の討伐。これがメインディッシュだろう。
後は、オフィスに持ち込まれた依頼の解決か。依頼には必要ランクと推奨ランクがあるようだ。クロウズのランクを上げなければ受けられない依頼もあるとか。
クロウズのランクを上げるには討伐や依頼をこなし貢献度を稼ぐ……だけだ。
なんという原始的で分かり易い組織だろう。まるで中世ヨーロッパのゲーム世界に入り込んでしまったかのような錯覚を覚える。
『まるでゲームだな』
『ふふふん。良く分かってるじゃない』




