表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

675/727

675 ラストガーデン46

「何かね、アレは? クルマ? クルマだと? ふむ。あのクルマ、何処かで見たことが……」

 ウルフ二号はのんきな顔でそんなことを言っている。再生薬が効いているのか右腕の痛みはもう忘れてしまっているようだ。


「少し黙れ」

 俺は右のこめかみを軽く叩き、クルマの遠隔操作を続ける。こちらを狙う以上、自動操縦に任せるのは不味いだろう。


 これくらいか。


 砲塔の角度を調整する。


「あのクルマ、こちらを狙っているようだが、君の仲間ではないのかね。どういうつもりかね」

 ウルフ二号が騒がしい。俺が黙れと言った意味が分からなかったようだ。

「どういうつもりだと? 艦橋に戻るために砲撃で壁を崩して道を作るつもりだ」

「何故、そんなことをするのかね。会場に戻るのならばエレベーターを使えば良かっただろうに、どういうつもりなのかね」

 ウルフ二号が驚いた顔で俺を見る。


 エレベーター?


 ……。


 どうやら、このウルフ二号が隠れていた部屋にエレベーターがあったようだ。飛び降りる前に、探すか、聞くかすれば良かったのかもしれない。


 まぁいい。


「そうか、それで?」

 このウルフ二号を連れて艦橋の庇の上に飛び降りてしまった以上、もう上には戻れない。他に方法はない。


 俺はクルマを動かし砲塔の角度を微調整する。


 このくらいか。


 そして、クルマの砲塔が火を吹く。轟音を上げ放たれた砲撃が俺のすぐ横で炸裂する。俺はとっさにウルフ二号が爆風で吹き飛ばされないように抑え込み、その体を守る。


 ……少し角度を間違えたようだ。


 ウルフ二号は大口を開け、驚き固まっている。すぐ側で爆発が起きたのだ。下手をしたら死んでいる。死を前にして、やっと状況が分かったのだろう。


「……あのクルマ! カラーリングは違うようだが、アレは間違い無く本家の至宝。なぜ、このような場所に、まさか!」

 驚き固まっていたウルフ二号が何かに気付いた様子で俺を見る。

「アレは俺が報酬として受け取ったものだ」

「まさか、仲間というのは……? あのクルマを運転しているのは、あの人が、あの人が来ているのかね。ここに来ているのかね! そして、私がここに居ると知っていながら攻撃をしたのかね!」

 ウルフ二号はそんなことを言っている。


 あの人?


 ああ、なるほど。


 あのクルマを運転しているのがアイダだと思っているのか。


「残念ながら、違う。言っただろう、アレは俺のクルマだと」

「あのクルマを扱えるのは本家の正統後継者だけなのだよ。あの人以外に誰が動かせるというのかね!」

 俺はウルフ二号の言葉にため息を返し、肩を竦める。中が無人であることを見せない限り、こいつは俺が何を言っても信じないだろう。思い込みが激しすぎる。だから、今回のような事件を起こしたのだろう。


 俺は騒いでいるウルフ二号を無視し、右のこめかみを軽く叩く。


 微調整だ。


 次は上手く当てる。


 俺の指示に従いクルマの砲塔が火を吹く。轟音を響かせ、砲撃が炸裂し、爆発する。


 そして、艦橋の上部が崩れる。中への道が開かれる。


 俺はウルフ二号を担ぎ直し、崩れ瓦礫だらけの道を通り、艦橋の中に入る。


「攻撃があったようだったけど、大丈夫だったのかよ」

 俺に気付いたポニーテールの少年がこちらへと駆け寄ってくる。

「問題ない。さっきのは俺のクルマによる一撃だ」

「そうか、それなら……って、学園長? 怪我しているじゃあないかよ。学園長、大丈夫ですか?」

 ポニーテールの少年は俺が担いでいるのがウルフ二号だと気付いたようだ。


「ふむ。そこの君、私をこの暴漢から助けなさい」

 ウルフ二号はしれっとそんなことを言っている。

「学園長? どういうことですか?」

 ポニーテールの少年は事態が飲み込めないのか首を傾げている。

「早く私を助けなさい」

「はぁ、はい。分かりました」

 ポニーテールの少年がこちらへと手を伸ばす。俺はその手を掴む。


 この馬鹿は何をするつもりだ?


 この艦橋であった俺とウルフ二号(こいつ)の会話を聞いていなかったのか?


「待て。こいつが今回の黒幕だ」

 俺はポニーテールの少年に告げる。

「え? それはそうだろ? だって学園長なんだから、企画したのは学園長だよ、な?」

 ポニーテールの少年は何を言っているんだろうという顔で俺を見ている。


 どうやらこの少年は分かっているようで、イマイチ分かっていなかったようだ。


 俺はポニーテールの少年を掴んだ手を離し、肩を竦める。


「とにかくここから出るぞ」

「お、おうさー。学園長、とりあえず外に出ましょう。他の先生と合流すればきっと大丈夫ですよ」

 ポニーテールの少年はとても良い笑顔でそんなことを言っている。


 これがウルフだったなら、この状況から胸くそ悪く抜け出していたかもしれない。だが、こいつはウルフではない。ウルフ二号だ。ポニーテールの少年を言いくるめることも、利用することも出来ない。出来ていない。


 もう終わりだ。


 俺とポニーテールの少年は階段を駆け下りる。


 後は――


 ポニーテールの少年が言っていたように他の先生とやらと合流するか。


 課外授業の途中だが、今更、もう関係ないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ