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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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672 ラストガーデン43

 ミメラスプレンデンス。


 あのアクシードの本拠地で倒したと思ったのだが……。


 いや、待てよ?


 本当にあそこから、あいつは生き延びたのだろか?


 確かにミメラスプレンデンスは俺と同じように死んでも死なない――そんな奴だ。だが、俺はあそこでもう二度と復活出来ないよう徹底的に処理をし、殺した。因縁を終わらせた――はずだ。


 ……。


 このウルフ二号――ミメラスプレンデンスが死んだことを知らず、一人暴走している可能性がある。


 つまり、これは残党狩りか。


 厄介な置き土産だな。


「それで?」

 俺はウルフ二号との会話を続けながら右のこめかみを軽く叩き、周囲を探る。


 やはり、反応は三つ。一つは正面のウルフ二号。残りの二つは何処だ?


「それで、ですか。君は本当に……目上に対する敬意が無いようだね。君は礼儀を知らないようだ。ずいぶんと育ちが悪いようだが、ご両親からどういう教育を受けたのかね」

 ウルフ二号は呆れ顔でそんなことを言っている。

「なるほど、教育か。それで? お前の母親は確かウルフの娘のロボだったか? 父親が誰かは知らないがずいぶんと偏った教育を受けたようだな」

 俺の言葉を聞いたウルフ二号が不思議そうに首を傾げる。

「ふむ。知らない? 君は私の父の依頼でここに来たのではなかったのかね。ああ、言わなかったのか。あの人は今も私を息子だと認めない訳か。そういうことかね」

 ウルフ二号は呆れた様子で肩を竦めている。


 ……。


 このウルフ二号の父親の依頼?


 ……待てよ。


 このウルフ二号はイイダのことを伯母さんと言っていた。


 そういうことか。


 このウルフはアイダとロボの子どもなのか。


 どうして、そうなった。


 アイダは……俺を殺したロボと敵対していたはずだろう?


 それがどうしてこうなった?


 いや、それだけの時が流れているの……か。


 ……。


 色々あったということだろう。


 アイダとイイダ、そしてロボ。三人の物語があったのだろう。俺が眠っている間に起きた、俺の知らないことだ。


 そうか、そうだったのか。


「はぁ、気が変わった」

 イイダには悪いが、このウルフ二号が俺と敵対した以上、俺はこいつを殺すつもりだった。だが、イイダだけではなく、アイダも――二人ともが関わっているというなら、二人の師匠として殺す訳にはいかなくなった。


「気が変わった? 今更命乞いをしようというのかね。もはや謝って済むような状況ではないのだよ」

 ウルフ二号は呆れ顔のまま俺を見ている。


 このウルフ二号の余裕は何処から来ているのだろうか?


「わからないな。いくらお前が戦いを知らないとしても、さすがに俺の力くらいは分かるだろう? 俺の刃はお前に届く。俺がその気なら、今すぐにでもお前を殺すことが出来る。それくらい分かるだろう? お前の背後にある権力をあてにしているのなら、無駄だ。俺はお前がどれだけ権力を持っていようと、背後に誰が居ようと関係ない。隠れている二つの反応が奥の手だというなら、それも無駄だ。俺の刃の方が早い」

「二つの反応? ああ、もしかして左脳と右脳のことですかね。その二つはこの遺跡を管理するのに使っているだけですよ。そんなものが奥の手? そんなものは奥の手でもなんでもないのですよ」

 ウルフ二号は余裕の表情だ。


「お前は、自分が物語の主人公か何かで自分は死なないとでも思っているのか? お前が持っている権力、権威に俺がひれ伏すとでも思っているのか?」

 ウルフ二号は余裕の表情のまま顔に手をあて、考え込むようなポーズをとっている。


 ……。


「どういうつもりだ?」

「考えていたのですよ。君にどう言えば理解して貰えるかを」

「お前が崇高な使命とやらを持っているから見逃せ、とでも言うつもりか?」

「ふむ。君は何故、そんなにも偉そうなのかね。君よりも上の立場の私が居るのに、その態度、自信、それらがどこから来るのか、私には理解が出来ないね」

「そうか、それで」

 俺は左腕に仕込んでいた白銀の刃を構える。アイダには悪いが、この馬鹿の手足を切り落とす。それでもう馬鹿なことは出来ないだろう。


「やれやれ。これが見えないのかね」

 ウルフ二号が懐から鍵のようなものを取り出す。

「そうか。それで?」

「これが分からないのかね。これは学園長の証だよ」

「そうか、それで?」

「私が名実共に学園の長となったのだよ。それが分からないのかね? 慈善事業のような経営を行ない学園を傾けた伯母、それを私が立て直したのに! 伯母は最後の最後まで鍵を渡さなかった。だが、それでも待った。そして、ついに手に入れたのだよ。私を利用しようとしていた奴ら。出資しただけで栄誉にあずかれると思っていた馬鹿ども、崇高な使命を理解しないものたち、全て、全てエェッ! 私がどれだけ我慢をしていたと思っているのかね。私がどれだけ努力したと思っている! 全てが私の前にひれ伏すのだよ!」


 ……。


 ウルフ二号は得意気な様子で喋っている。


 鍵があったからなんだというのか?

 学園長になったからといってなんだというのか?


 俺は駆け、ウルフ二号との間合いを一気に詰める。そして、そのまま顔面を殴る。


 ウルフ二号が吹き飛び、錐揉みをするように転がる。そのウルフ二号が壁に当たって止まる。ウルフ二号はよろよろと上体を起こし、頬を摩りながら、信じられないものでも見るような目で、睨むような目で、こちらを見る。

「何をするのかね! これが分からないのか! 私は学園長になったのだよ!」

 そして、そんなことを叫んでいる。


 ……。


 俺は大きなため息を吐く。


 この馬鹿は何がしたいんだ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 言っても分からないやつは! [一言] 殴っても分からない! こんなのでもイイダ姉が庇おうとしたのは身内だからかなあとは思ったけど、アイダ弟が黙ってたのは縁を切ってたから、なのか。 そりゃ…
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