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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
かみ続けて味のしないガム

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671 ラストガーデン42

 掴むところのない反り返った壁を握力だけで無理矢理登っていく。俺は壁を登りながら、下を見て小さくため息を吐く。落ちれば死ぬ、そんな高さだ。


 ゆっくりと確実に登る。


 手を伸ばし、艦橋の天井部分の縁を掴み、その上に体を持ち上げる。そこで一息つく。


 俺は右のこめかみを軽くとんとんと叩き、状況を確認する。最下層の破壊は終わった。もうここで機械(マシーン)やビーストが生まれることは無いだろう。ウルフ二号は警備用の機械(マシーン)の性能に自信があるようだったが、こちらの方が早かったようだ。これは、煉獄の扉とやらの向こうにまで、すでにクルマが行っていたとウルフ二号が想像出来なかったのが大きいだろう。


 後は……ヴァレーたちは全員、生きているようだ。五体満足で無事なのかどうかは分からないが、とりあえず全員の生命反応がある。


 ……後で確認に行こう。


 ふぅ。


 俺は小さく息を吐く。


 とりあえず、ここを終わらせよう。


 この先にある反応は三つだけだ。


 ウルフ二号と……その部下か。まさか、さらに黒幕がいる、ということはないだろう。


 艦橋の出っ張りの上を歩き、そこからさらに少しだけ壁を登る。


 そこに空間がある。あまり広くない部屋だ。十メートル四方くらいだろうか。


 俺は壁を叩いて壁の厚さを確認し、その一番薄い場所を白銀の刃で斬り開ける。そこから部屋の中へ不法侵入する。


「どうやって、ここまで!」

 そこには驚いた顔でこちらを見ているウルフ二号の姿があった。居た。事前に確認していたとおりだ。


 ……?


 だが、そこにはウルフ二号しか居なかった。事前に確認していた反応、他の二つ――隠れているのだろうか?


 俺は部屋を見回す。良く分からない機械がゴチャゴチャと積み上がっている。多分、それらが機械(マシーン)やビーストに命令を出す機械なのだろう。これを壊せば、この施設は完全に終わりだ。

 出入り口や階段のようなものは見えない。食料や水、トイレも見えない。どうやってこの部屋に入ったのか? こんな場所に閉じこもってどうするつもりだったのか?


 ウルフ二号はどうやって部屋に入ったのだろうか。この時代に空を飛ぶ乗り物は無い。空から入れない以上、それ以外の方法になるはずだが……。

 食料や水は――と、そこで俺は無造作に並べられた機械の上に小さな白い錠剤が置かれていることに気付く。この白い錠剤が、食事の代わりなのかもしれない。これが食事だとして、排泄はどうするつもりだ? 垂れ流すつもりか?


 ……。


 そういえば、ヴァレーたちも食事はしていたが、トイレに行っていなかったな。遺跡の中に、ご親切にトイレがあるとは思えないから、そこら辺で適当にするしかないのだが……。

 いや、そもそもヴァレーたちはトイレに行こうとしていなかったか。二日間程度なら我慢出来る……という訳ではないだろう。


 薬か何かで処理をしているか、食事にそういうものが混ぜられていたと考える方が良いだろうか。


 自分が不要だから、と、そのことが頭から抜けていた。まぁ、知ったところで何も変わらない情報だから、俺も気にとめなかったのだろう。どうでも良いことだ。


「どうやって? 見れば分かるだろう?」

 俺は入ってきた壁の穴を顎でしゃくり、肩を竦める。


「ここは君のようなものが入って良い場所では無い。すぐに出て行きたまへ」

 ウルフ二号は当たり前といった顔でそんなことを言っている。

「状況が分かっているのか?」

「分かっていないのは君の方だ。これ以上、私の崇高なる偉業の邪魔をしないことだよ」


 ……。


 ……。


 どうやら、このウルフ二号は狂っているらしい。俺は肩を竦める。


「何故、こんなことを?」

「分からないのか。そう、知らない者には分からないのだろう」

「支配し、統治する……失われた秩序を取り戻すと言っていたか? 何故、そんなことをしようと思った(・・・)?」

「これは選ばれし者の使命。私は母から英雄だった祖父の話を聞いた。その最後も、だ。偉大な英雄ですら殺される。そう、それは秩序が無いからだ。力が足りないからだ。そして、母の友人――あの方から真実を聞いた。この世界の真実だ。そして、この遺跡のことを! 使い方を教えて貰った!」

 ウルフ二号は自分の言葉に酔っていた。


 俺はため息を吐く。


 こいつは、下で『私たち(・・)に必要な要人』と言っていた。仲間が居るはずだ。二つの反応が仲間かと思ったが、その姿が見えない。仲間、そして要人。


 要人、要人か。


 その要人とやらが、このウルフ二号に獄炎のスルトのことを吹き込んだ張本人ではないだろうか。


 そして……、

「その()は何処に居る?」

彼女(・・)がこんな場所に居ると思うのかね?」

 俺の言葉にウルフ二号はそう答える。


 当たり、か。


 当たっていたか。


 獄炎のスルトのことを知っており、機械(マシーン)やビーストに詳しい女。俺はそんな存在を一人しか知らない。


 そして、俺と同じように長い時を生きている女。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ミメラスプレンデンス、あいつか。


 このウルフ二号(ばか)の影に居たのはあいつか。そして、あいつはこのウルフ二号のような仲間を他にも作っているのだろう。


 何をするつもりだ?


 あいつは何をするつもりだ?


 俺は何度目になるか分からない大きなため息を吐く。


 本当にろくなことをしない。


 最近は大人しくなったと思っていたが、それは俺の勘違いだったようだ。


 ……本当にしぶとい奴だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] またしても! [一言] ドラゴンファンタジーの最後で詳細は語られなかったけど因縁は断ち切れなかったかあ。 ガム君と因縁のある盗人の子孫に目を付けて仕立てるあたり、さすがのストーカーっぷりと…
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