604 ドラゴンファンタジー26
[師匠、これ、上手く行くと思う?]
ダークラットに乗った俺の元にアイダからの通信が入ってくる。
「さあな」
俺はどちらとも言えないと返事をする。
[聞く価値も無い幼稚な作戦でしたわ]
イイダからの通信も入ってくる。
アイダとイイダは失敗する可能性が高いと思っているようだ。だが、物事、やってみなければ成功するかどうかはわからない。成功する可能性が高いと思われるような作戦でも、何らかのイレギュラーがあれば失敗するだろう。そして、その逆も言えることだろう。
……。
ダークラットの座席に深くもたれかかり、俺は目を閉じ考える。
俺が考えるのは何処までやるのか、ということだろう。アイダとイイダの二人に任せても良い。これは――俺がここに居るのは完全な寄り道だ。
ここまで来れば……そうだな。二人は、もう俺の手助けが必要ないくらいに成長した。これ以上、俺が付き合う必要は無い。
二人にとってもこれがクロウズとしての最後の依頼になるだろう。だから、ここまでだ。これが、最後だ。
……。
……。
……。
俺はゆっくりと目を開ける。
……来たか。
「二人とも来たぞ」
俺は二人が乗るクルマに通信を入れる。
二人が乗るクルマ――それは、三年前、二人がクロウズとしてデビューした時に手に入れたクルマだ。そう、ノーフェイスが乗っていた、あのクルマだ。俺が半ばまで切断し、大破させたクルマ。二人は、俺が大破しもう使える見込みはない、と判断した、そのクルマを修理し、新しいパンドラを手に入れて積み込み、改造し、そして使えるようにした。
二人の――いや、どちらかというとアイダの方だろうか。アイダが、誰もが壊れて使えないと思ったであろうクルマに執着していたのは、俺には無駄なこととしか思えなかった。だが、アイダの執念は――アイダの思いが、俺のその判断を覆した。俺が見限ったものをアイダは諦めなかった。それはアイダが俺を越えた瞬間だった。
アイダとイイダ、二人のクルマは、俺が切断した部分を残すように改造したからか、その前側部分が二つに分かれ、別々に動くようになっている。メインとなる砲も右側に一門、左側に一門、別々に、左右合わせて二門搭載している。その姿から双頭竜と呼ばれ、それに乗って戦う二人はダブルドラゴンと呼ばれるようになった。
二人を象徴するクルマだ。
[師匠、まだ見えないけど? 本当に来たの?]
[ふふん、まーってましたわ]
そして、現れる。
それは巨大な人型だった。赤ん坊のような体型の巨大な人型の集団が、ゆらり、ゆらりとこちらに歩いてきている。
数十――いや、百を越える規模の集団がこちらへと迫ってきている。そのマイペースな動きは、こちらに敵意などなく、目的もなく、ただうろうろと散歩しているだけにしか見えない。
連中の進行方向にハルカナの街がなければ、無視されていただろう。だが、奴らは適当に動いているように見えて、進行方向を変えることなく、ハルカナの街を抜けるルートを進み続けている。このままではハルカナの街は踏み潰され、破壊されることだろう。
[師匠、アレがアースカーペンター?]
[アレは……なんですの? ビースト? それともマシーン?]
初めてその姿を見たであろう二人から困惑した声の通信が入ってくる。
「アレが何、か。だから、アースカーペンターという存在なんだろう」
人型ではあるが、人ではない。生物のようだが野獣ではない。自然に発生したものでは無く造られたものだろうが機械でもない。合成の人型、巨大な人造人間とでも言うような存在だ。
大地に大工、か。なんで、そんな名前がつけられたかわからないが、アレはビーストやマシーンと言った分類には入らない、アースカーペンターという新種だと思うべきなのだろう。
[師匠、もう……ぐ、射程……]
アイダの言葉が途中で途切れる。通信障害が起きているようだ。
俺は小さくため息を吐く。
「作戦通りだ。二人ともとりあえず作戦通りに動くぞ」
それがどんなに拙い作戦だとしても、とりあえずは指揮官の指示に従うべきだろう。俺たち以外のクロウズも動き始めている。
作戦はこうだ。
俺たちクルマ持ちが先行し、アースカーペンターを指定のポイントへと誘導する。そして、その誘導先のポイントでは指揮官のクルマが待機している。そのクルマに搭載した大口径の砲でズドン、と、そういう作戦だ。
色々と突っ込みどころしかない作戦だ。だが、今回はそれに従ってみようではないか。




