564 オーガキラー36
「オリハはダークラットで待機だ。俺とお嬢はこの周囲の確認をしてくる。分かったな?」
ゴズの言葉にオリハが首を傾げる。
「オリハ、俺たちが戻ってくるまで、このクルマを守っていてくれ。敵と思われるものが現れたら容赦無く攻撃するように」
オリハはゆっくりと指を折り、何かを数え、頷く。それを見たゴズが「任せた」と声をかけ、ハッチからダークラットの外に出る。
「ふむ。ゴズ、ここはなんだ?」
ゴズがダークラットから外に出た時には、オウカはすでに遺跡内の探索を開始していた。そのオウカがゴズに問いかける。
「お嬢、遺跡です」
埃のかぶった棚や地面に転がった良く分からない機械の部品などを調べ、確認していたオウカが、ゴズの答えに顔をしかめる。
……。
「えー、ああ、お嬢の言いたいことは分かります。分かりますよ。ここが何の施設だったのか。どんな目的で作られたのか、とか、どういった経緯で遺跡になったのか、聞きたいのはそういうことですよね。正直、それは自分にも分かりません。遺跡で見つかるのはクルマやその部品、銃火器などが中心です。どこの遺跡も、そういったものばかりが保管されている。旧時代は至る所で戦いがあったのでしょう。戦争の時代だったのでしょう。何と戦っていたかは、マザー……いえ、まぁ、今と同じようにマシーンたちと戦っていたんじゃあないでしょうか。武器……、兵器、それらが手つかずで残っているのは、まぁ、それらが使われる前に負けたからでしょうね。大量の武器を、優れた武器を作っても勝てなかった。そして、残った。全て予想ではありますが、そんなところでは?」
「ふむ、む」
オウカは腕を組み、一つ頷く。そして、棚にあった謎の道具を確認しようと埃を払い、その埃を吸い込んで大きなくしゃみをした。
「お嬢、毒性は無いと思いますが、気を付けてくださいよ」
「ゴズ、これは?」
オウカは棚にあったものをゴズに見せる。
「ゴミです」
「む」
オウカが見つけたものをゴズが確認する。そんな風にしながら遺跡の探索を続ける。そして、車庫のようになっていた部屋の奥に下へと続く大きなスロープを見つける。
「お嬢、どうしますか?」
「ゴズ、進むべきだろう?」
オウカは何故、そんなことを聞くのか、という顔でゴズを見る。
「お嬢、確かにそうですね」
「ふむ。この下にあるであろう武器を運ぶためにもクルマは必要、そういうことか。ゴズ、ダークラットでこの先に進むとしよう」
「確かに。では、お嬢、それは今すぐに、ですか?」
ゴズの言葉にオウカは頷く。
「良いんですね? このスロープは、この幅、傾斜……、クルマでの移動を前提にされたもの。この先にクルマ用の武装があるかもしれませんね。期待が持てそうです。ですが、ですよ。お嬢の言う通りクルマで降りるとして、それはパンドラの回復を待ってからでも良いのでは? 正直、先ほどの戦いで、ダークラットは、かなりのパンドラを消費しています。パンドラが回復するのを待ってからの方が安全に探索が出来るでしょう。それからでも良いのでは?」
ゴズの言葉にオウカが首を横に振る。
「ゴズ、試すような真似は止せ」
「お嬢、確認ですよ」
オウカの言葉にゴズは肩を竦める。
「ゴズ、スロープにある痕跡をお前が見逃すとは思えない。ここまでの探索でもそうだ。クルマが走り抜けたであろう跡があった。しかも、まだ新しいものだ。そのクルマはこの階層にあるものには目もくれず、下へと向かっている。そうだろう?」
「そうですね。だからこそ、パンドラを回復させておいた方が良いのでは?」
オウカは顔に手をあて首を横に振る。
「無駄口はすかぬ」
ゴズは肩を竦める。
「分かりました。お嬢の決定に従います。ダークラットまで戻りましょうか」
「うむ」
オウカとゴズはダークラットまで戻る。
「オリハ、問題は?」
オリハは首を横に振る。
「すぐに進むが問題は無いな?」
「カレー?」
オリハが不思議そうに首を傾げながら、お腹に手を当てる。
「オリハ、食事は後だ。パンドラの回復待ちの間に食事をするのも一つの案としては有りだ。だが、今回は急ぐ。どうやら、この遺跡、クルマで先行している奴……奴らか? が居る。そいつらに時間を与えたくない」
ゴズはオリハに、意訳したオウカの考えを説明する。オリハが、ゴズの答えに納得したのかゆっくりと頷く。
「うむ。では行くぞ」
オウカの号令で、改めて下の階層に続くスロープへとダークラットを進ませる。
「お嬢、方針は?」
「任せる」
「分かりました。では、友好的なら力で押さえつけて従わせ、敵対的なら蹴散らす。お嬢らしく、そのような方針でよろしいですね?」
「うむ。良い」
ゴズはオウカ好みの方針を提案する。そして、オウカはそれを認める。
長いスロープを降りた先は先が見えないほどの広間になっていた。そこには何も無い。何も置かれていない。ただ、床にうっすらと白い線の跡が残っているだけだった。
「どうやら、ここは地下駐車場だったようですね。この先にも道は続いているでしょう」
「ふむ」
「とりあえず進みますよ」
ゴズがダークラットを駐車場の先を目指し、進ませる。
遺跡の探索は始まったばかりだ。




