562 オーガキラー34
砲塔に座ったゴズがコンコンと装甲板を叩く。すると運転席に座るオリハの目の前に周辺の地形が表示された。それを確認したオリハは無言で操作パネルに指を伸ばす。
「む。オリハ、それは?」
「お嬢、これ、マニュアル操作。ゴズに慣れておけって言われた」
「ふむ。そうか」
オリハは黙々と操縦桿を握りながら、その横に設置されたパネルを操作する。ずいぶんと忙しく動いている。オウカはその様子を見、外の――ゴズが居るであろう場所を見て、大きなため息を吐く。
砲塔に座ったゴズがもう一度、コンコンと装甲板を叩く。それに合わせたかのようにダークラットに装備された機関銃が動く。
暗闇に火花が飛び散る。
何かの叫び声が響き、大きな何かが地面にどさりと落ちる。
「オリハ、次だ」
ゴズはハッチの下へと呼びかける。
「はーい」
ゴズの言葉に、のんきなオリハの声が答える。
機関銃が動き、火花が飛び散る。次々と何かがどさりと落ちてくる。
次の瞬間、ダークラットに大きな衝撃が走り、車体が大きく揺れる。ゴズはとっさに砲塔を掴みダークラットか振り落とされないように耐える。
ダークラットが攻撃を受けている。
「音波か。オリハ、この程度ならしばらくは耐えられる。構わず進め」
ゴズの言葉に答えるように機関銃が火花を飛ばし続け、そのまま前進を続ける。
黒い影のような何かがダークラットの周囲を飛び交い、音波による攻撃を繰り返す。飛び交う何者かの攻撃によってダークラットのシールドに衝撃が走り、大きく車体が揺れる。ゴズは砲塔にしがみつき、振り落とされないように耐える。
「む。ゴズ、揺れているが大丈夫なのか?」
ダークラットの車内から何処か不安そうなオウカの声が聞こえる。揺れは止まらない。飛び交う何かからの音波による攻撃は続いている。
「お嬢、大丈夫ですよ」
ゴズはオウカにそう答えながら考え込む。
「しかし、どういうことだ。この暗闇の中でどうやって正確にこちらの位置を把握している? 音波か? エコーロケーションでこちらの位置を把握して、いや、待て」
と、そこでゴズは気付く。もっと単純で分かりやすい理由に。
「俺は馬鹿か。もっと簡単なことだろう。オリハ、光だ。ライトを消せ! 多少ぶつかっても良い、それくらいならシールドも持つだろう。突っ込めッ!」
「はーい」
オリハののんきな声とともにダークラットがライトを消し、加速する。ダークラットが洞窟を疾走する。
ガチガチと洞窟の壁に車体をぶつけているが気にしない。とにかく全力で走る。
キイキイと鳴き声を響かせ何かが飛び交っている。明りを消したことでダークラットを見失っているようだ。
暗闇の中をダークラットが走る。
そして前方に光が見えてくる。光に近づくほど、キイキイという鳴き声が遠ざかっていく。飛び交う何かは光が苦手なようだ。
「抜けるぞ」
ダークラットが洞窟を抜ける。
そこは南の新天地。
多くの遺跡が眠る地。
そして、洞窟を抜けたダークラットを待ち受けるものが居た。
巨大な人型。
赤ちゃんのような体型の巨大な人型がダークラットを待ち構えていた。半マシーン、半ビーストといった容貌の巨体が大きな拳を振り上げている。
「お嬢ッ!」
ゴズが叫ぶ。
「うむ」
オウカが頷き、ハッチから飛び出す。
振り下ろされる拳――振り下ろされたはずの巨大な拳が宙を舞っている。
くるくると飛び、どさりと落ちる。
無骨な刀を持ち、ハッチから飛び出して斬り抜けたオウカが、ダークラットの砲塔に着地する。
赤ん坊のような体型の巨人が無くなった片手を見て不思議そうな顔をし、残ったもう片方の手で、何処から取りだしたのか悪臭を発する泥団子のようなものを握る。
赤ん坊のような体型の巨人が泥団子をダークラットへと投げようとしている。
再びオウカが飛ぶ。
無骨な刀を持ち、それを振るう。
一閃。
煌めきが走り、赤ん坊のような体型の巨人の残った腕も斬り飛ぶ。
「ふむ。物足りぬ。つまらぬものを……」
「お嬢、まだ終わっていません。油断を――」
ゴズが油断しないように、と言葉を続けようとした瞬間だった。
両腕を失った赤ん坊のような体型の巨人が大きな口を開け、そのままオウカを噛み千切ろうとのしかかってきた。
オウカが無骨な刀を後ろ手に、ただ振り上げる。
それだけでオウカを噛み千切ろうとしていた赤ん坊のような体型の巨人が真っ二つになる。
「お嬢が油断をする訳がなかったですね」
「うむ」
真っ二つになった赤ん坊のような体型の巨人がドサリと崩れ落ちる。
「お嬢、さすがですね。こいつらは大きいだけで見かけ倒しのようですね。これなら……はぁッ? はぁ? はぁ」
……。
ゴズはその光景を目にして大きなため息を吐く。
オウカはらんらんと目を輝かせ、牙が見えるほど口角を上げる。
オリハはレーダーを見てどうしようか悩んでいた。
それは――無数の赤ん坊のような体型の巨人がこちらへと走ってきていた。




