546 オーガキラー18
「お嬢、それでは作戦を説明します」
オウカは聞いているのか聞いていないのか適当に相槌を打っていた。ゴズはため息を吐きながらも説明を続ける。
「クルマが必要なら、持っている奴から奪えば良いんですよ」
「なるほど」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。
「お嬢、言っている意味が分かっていますか?」
「うむ。ゴズ、盗む訳ではないのだろう?」
オウカは思考を放棄したかのような脳まで筋肉が詰まっている発言を好むが、考える力が無いほど頭が悪い訳ではない。考えた上で直感を優先しているだけだった。
「ええ、もちろんです。狙うのは賞金首です。クルマ持ちの賞金首を狙います」
「なるほど」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。その姿は一見、何も考えて無いように見える。
「狙う賞金首はウォーミの街に張り出されていたものです。未だ倒されず残っていたものです」
「なるほど」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。
「ええ、タイミング良く残っていました。ですが、問題もあります」
「なるほど」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。何も考えていない訳ではない。
「クルマ持ちの賞金首。倒してクルマが手に入るなら、もっと狙われても、色々なクロウズが動いても良いと思いませんか? ですが、クルマ持ちの賞金首は基本的に不人気になる傾向があります。今回のように、だいたい、何処の街でも残っているんですよ」
「ふむ」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。
「クルマ持ちの賞金首が不人気になる理由。一番の理由は単純にクルマを相手にするのが大変だからです。しかも、賞金首になるような相手です。生半可な火器では返り討ちに遭うだけです。充分な武装、火力が無ければ倒せないでしょう」
「ふむ、確かに」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。
「次の問題は、こちらがクルマを相手に出来るほどの武装で挑んだ場合、相手もただでは済まないということですね。せっかく賞金首を倒しても、相手のクルマが大破していては、出来るコトなんて部品取りくらいです。それすら出来ない可能性もあります」
「ふむ。確かに」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。
「戦いが激しくなれば、こちらにも損害が出る。それでも賞金額が大きければ良いのですが、だいたい何処もクルマ持ちの賞金首の賞金額は低めです。以前はもう少し大きかったんですけどね。これはまぁ、オフィスがパンドラ集めを止めた弊害だろう。ビーストやマシーンの退治にはオフィスから補助が出ているため、賞金額が大きくなります。ですが、クルマ持ちの賞金首は、その賞金首によって被害が出ている個人からの賞金だけです。恨んでいる個人がコイル持ちなら良いですが、そうとは限りません。オフィスに手数料を取られながら、賞金首として賞金を掛ける個人がどれだけ居ることやら……。扱いとしてはバンディットよりは少し上くらいなんですよ」
「なるほど」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。
「以上が、クルマ持ちの賞金首が不人気な理由です」
「なるほど」
ゴズの言葉にオウカはただ頷く。
「お嬢、真面目に聞いてますか? 聞き流してませんか?」
「ふむ、なる……ゴズ、うるさい。しっかり聞いている」
「本当ですか?」
「相手は賞金首。ならば斬れば良い。そうだろう?」
オウカの言葉にゴズは大きなため息を吐く。
「確かにそうです。お嬢なら、いや、お嬢だからこそ可能でしょう。クルマ持ちの賞金首が不人気な理由は説明しました。ですが、お嬢の実力ならクルマに傷をつけることなく、中の賞金首だけを倒すことも可能でしょう? クルマ対クルマではなく、クルマ対生身だからこその作戦です」
「ふむ。突っ込んで運転している奴だけを斬る、か」
「はい、その通りです」
「分かった。うち向きの相手ってことだな」
「ええ。そうです。それを説明しました」
ゴズが頷く。
「相手は?」
「賞金首、砂漠のマッハライダー。ウォーミ南の砂漠で活動しているバンディット集団の頭です。乗っているクルマは小型の戦車タイプですが、メインの武装が一撃の威力に優れた大口径の大砲のため、少々厄介です。サブとして小口径ながらばらまきに特化した機銃もあるようですね。マッハと呼ばれている理由は砲弾を回避する高速移動を得意としているからのようです。対クルマ戦では高い勝率を誇っています。敵わないと思った相手の前には現れないみたいですね。それこそマッハで逃げるとか? 賞金額は二千四百コイルです」
「ふむ。ずいぶんと安いな」
「ええ、安いですよ。被害も少ないみたいですし、だから今まで生き残っているんでしょうね」
ゴズはそう言って肩を竦める。
「ふむ。だが、そこまでの情報が揃っているなら、それでも……」
オウカはそう言ってゴズを見る。ゴズは何も言わず肩を竦めたままだ。オウカは情報の出所を考え、聞いても無駄だと理解し、口を閉じる。
「それで、お嬢どうですか?」
「うむ。それで」
「分かりました。お嬢、いつ動きますか?」
ゴズの言葉にオウカがニヤリと笑う。
「今だ」
「お嬢なら、そう言うと思いました。準備は終わっていますよ」
「うむ。サクッと行ってサクッと斬って、サクッとクルマを手に入れよう」
「ええ、そうですね」
オウカとゴズがニヤリと笑う。
そんな二人のやり取りを、興味深そうに少女が眺めていた。




