538 オーガキラー10
オウカの無骨な刀がきらめき、バンディットの体が千切れ飛ぶ。オウカの実力なら、痛みを与えず綺麗に斬り殺すことも出来るはずなのに、あえて相手が苦しむような雑な殺し方をしていた。
「ひゃああ、女だぁ。大女だが、女だ」
「うるさいぞ」
新しく現れたバンディットの体がオウカの一撃で吹き飛ぶ。
「ひっひっひっひ、一郎がやられたようだな。一郎は我らの中で長男。最強の存在だ。だが、この次郎は、それに次ぐ実力を……」
「うるさい」
新しく現れたバンディットの下半身が吹き飛ぶ。上半身だけになったバンディットが「おぽおぽ」と謎の言葉を発しながら呻いている。そのバンディットを蹴り飛ばし、オウカが進む。
オウカとゴズはウォーミのオフィスで依頼を受け、このウォーミ南方の砂漠にある洞窟を根城としたバンディットの巣窟にやって来ていた。
「お嬢、容赦がないですね」
「ゴズ、うるさい。うちには、こいつらに掛ける情けなど、ない!」
ゴズがオウカの言葉に苦笑し、肩を竦める。
「いやはや、ここまで進んで、この依頼が塩漬けになっていた理由も良く分かりますね」
「ゴズ、うるさい」
「うじゃうじゃと数の多い武装したバンディット。しかも入り口と通路が狭く、クルマやヨロイでは侵入が出来ない。生身での探索が必要。お嬢でなかったら、戦うだけでもずいぶんと苦労したと思いますよ。さらに蟻の巣のような無駄な広さ。人質がいるから、火で燻り殺すことも出来ない。しかも報酬も少ない、と。この依頼が放置される訳ですね」
「ゴズ、こうるさい」
オウカとゴズがうじゃうじゃと現れるバンディットを殺し、砂漠の洞窟を進む。
それはオウカとゴズがウォーミへの護衛依頼を終え、オフィスで報酬を受け取っていた時のことだった。
「こちらが報酬の六百コイルになります」
「ああ、確かに」
ゴズが窓口で単三乾電池六本を受け取る。
「ゴズ、次はこの依頼を受けよう」
オウカがオフィスに張り出されていた依頼の紙を持ってくる。
「お嬢、街に着いたばかりで次の依頼ですか? 少しは休憩しないので? 少しくらいは身綺麗に……」
「ゴズ、うるさい。うちが受けると言ったら受ける!」
窓口対応はゴズの役目だ。その間、オウカを放置していたのが悪かったようだ。暇なオウカが張り出されていた依頼に目を通し、気になる依頼を見つけてしまった。
ゴズは大きくため息を吐き、依頼内容に目を通す。
砂漠の洞窟を根城としたバンディットの殲滅と人質の救出。報酬は千コイル。
「お嬢、本気でこの依頼を受けるので?」
「うむ。護衛依頼ばかりで飽きていた。これはちょうど良い」
「クルマもヨロイも持っていないですからね。依頼が、駆け出しがやるような護衛依頼ばかりになるのは仕方がないですよ。後はもう賞金首を狙うか……」
「ゴズ、こうるさい。とにかく、これを受ける」
ゴズがため息を吐き、肩を竦め、窓口へと向き直る。
「それで、俺たちがこの依頼を受けても大丈夫なのか?」
「あ、はい。不人気で放置されていた依頼です。どうぞどうぞ」
「不人気になっていた理由は? 予想は出来るが聞いておく」
ゴズが窓口で確認をする。
「そうですね、色々と理由はありますが、前金無しの成功報酬だということが一つ。その難易度の高さに対して報酬が少なすぎることが一つ、後は人質救出というオーダーが厄介だからですね」
窓口の女が一つ一つ指を折りながらゴズとオウカに説明する。
「人質か。この依頼が張り出されたのはいつだ?」
「一月前です」
受付の言葉を聞き、ゴズはオウカがすぐに依頼を受けようと言いだした理由を理解する。
「ギリギリだな。この依頼が放置されていた理由はそれか」
一月――バンディットに捕まった人々の生死ギリギリのライン。それが過ぎれば人質の救出という条件が消え、依頼の難易度は大きく落ちる。
ゴズが大きなため息を吐き、オウカを見る。
オウカは親代わりだったカスミがバンディットに捕まり、そこで受けた仕打ちを知っていた。オウカがバンディットを忌み嫌っている理由だ。
「お嬢、分かりました。この依頼を受けましょう。残された時間は少ないかと。急いで出発しましょう」
「うむ。ゴズ、とくだ」
ゴズとオウカが砂漠に開いた洞窟を進む。すでに殺したバンディットの数は二十を超えている。この洞窟は、かなり大きな規模のバンディットの巣窟になっているようだった。
「ひゃっはひゃっは、ここは通さねぇぜ。ここには大事なものなんてないぜ! ここを任されているのが、この九郎様だからな!」
通路の先でガトリングガンを構えた大柄なバンディットが待ち伏せをしていた。バンディットがガトリングガンをオウカたちへ向ける。
「うるさい」
オウカが一瞬で間合いを詰め、持っていたガトリングガンごとバンディットを真っ二つにする。切断されたガトリングガンがガシュンガシュンと音を響かせ虚しく回転していた。
「お嬢、どうやら、ここは何か大事なものをしまっている倉庫みたいですね」
ゴズが転がっているバンディットを蹴り飛ばし、通路を開け、その奥に進む。
「お嬢、奥に反応が」
「む。人質か?」
二人はさらに奥へ進む。
そこに居たのは……、
「ボーイ、あんどガール、ヘルプだ。ミーをレスキューしてくれ。ガール……いや、ミズ、ヘルプだ」
壊れた機械のように喚く、クマのぬいぐるみだった。
クマのぬいぐるみが縛られ転がされている。
ゴズが顔に手をあて、大きなため息を吐く。
「船長、他の人質が何処に居るか知っているか?」
ゴズがクマのぬいぐるみに話しかける。
「ボーイ、ユーはミーを知っているのか?」
「そんなことはどうでも良い。どうだ? 知っているのか?」
「……知ってる。知ってるからヘルプだ。ここのバンディットが喋っていたのをリッスンした。ミーなら案内、オーケーだ」
ゴズはクマのぬいぐるみの言葉に肩を竦め、オウカを見る。オウカが頷き、クマのぬいぐるみを縛っていた紐を切る。
「おー、ミーもバッサリ斬られるかと思ったぞ。ミズ、もう少し、やさ……」
「いいから早く案内してくれ」
クマのぬいぐるみ……何者なんだ?




