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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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360/727

360 おにのめにも44――『つまり、確実な2秒か』

『動かし方は、ドラゴンベインとほぼ同じか』

『ええ。共通規格だから。前の持ち主の癖はあるでしょうけど、お前が扱いやすいように仕様(フォーマット)を上書きして、ふふん、私がフォローするから問題無いでしょ』


 無限軌道ではなく、左右四個ずつ、合計八個のタイヤが付いた真っ黒な戦車。タイヤを守るスカートもなく、装甲も薄い、防御力の無さそうなクルマだ。

 だが、これはクルマだ。戦車の形をしているが、ただの戦車ではなくクルマだ。

 パンドラの力でシールドを発生させ、攻撃から身を守るクルマなら、それらは問題にならない。タイヤのグリップ力は高く、小回りが利き、装甲を薄くした分、軽くなり、走行性能は非常に高い。キビキビと動き、砂地でも問題無く走っている。


『ふふん。メインディスプレイを見なさい。このクルマの一番の特徴は機動力を生かした探知能力だから。このクルマのレーダーは一級品ね』

 どうやら、このクルマの一番の特徴は高性能なレーダーを搭載しているということのようだ。セラフのお墨付きだ。今も周囲の詳細な情報を、かなりの広範囲から拾ってメインディスプレイに表示している。


『レーダーか。だが、お前の力があれば不要だろう? 俺にはあまり恩恵を感じないな』

『ふふん。これを見てもそう言えるかしら? 私と連結(リンク)させれば……』


 メインディスプレイに表示されている情報が一気に増える。敵の移動ルートや行動などの予測が表示されている。


『これは……どの程度の精度なんだ?』

『ふふん。99.999パーセント――ほぼ百パーセントの確率ね。そして、これは2秒先の未来を表示しているわ。その意味がお前なら分かるでしょ』


 2秒!


『それは確実な未来で、か?』

『当然でしょ。精度を下げれば、1分、2分? いいえ、次の一手を読むことも出来るでしょうね』

『つまり、確実な2秒か』


 2秒()先の未来が見えるなら、それは……。


 俺はパニッシャーの砲塔を動かし、こちらへと迫るハンザケを狙う。轟音とともに放たれた砲弾は狙ったとおりにハンザケの足に命中し、その態勢を崩す。走る勢いのまま体勢が崩れ、転ける。転けたハンザケと後続のハンザケが衝突する。衝突が衝突を生み、次々とぶつかり合っていく。そして、ハンザケたちの動きが止まる。


 狙い違わず。


 針に糸を通すようなピンポイントでの砲撃。動いている相手に、これか。


 俺は砲撃を続ける。そのどれもが俺の狙い通りに、狙った場所に着弾していく。


 パニッシャーに搭載された主砲は発射されてから約1秒で(・・・・)着弾(・・)している(・・・・)


 この距離なら――パニッシャーの攻撃は狙った場所に必ず命中する。回避することは出来ない。出来ることはシールドで防ぐことくらいだろうか。後は、着弾に2秒以上かかる場所まで後退すれば……だが、その行動も予測出来る。


 これがパニッシャーの性能、特性。


 2秒の射程内に入った時点で相手は詰みだ。


 砲撃は面白いように狙った場所に着弾していく。シールドを持たないハンザケに攻撃を防ぐ手段は無い。俺は次々とハンザケの集団を殺していく。


 面白いクルマ、面白い能力だ。


『だが、それでも数の暴力には勝てないか』


 動きの止まっていたハンザケたち。だが、転がっている仲間を乗り越え、踏み潰し、後続が前進を再開する。


 ドラゴンベインを乗り捨てるように使い、カスミのグラスホッパー号とこのパニッシャー、その全力で駆除を続けているが、それでも、まだ全体の三分の一も駆除出来ていない。


 戦線を下げるしかない。


 パニッシャーを後退させる。


 攻撃は必ず命中する。だが、それでも手数が足りない。数の暴力。ハンザケの何匹かが俺達の防衛ラインを突破する。


『しまっ……いや、狙い通りか』


 そして、そこにいくつもの爆発が起こる。


 砲撃だ。


 キノクニヤの街の方から攻撃が飛んできている。


 俺とカスミの攻撃をかいくぐったハンザケが吹き飛んでいる。


 現れたのは装甲車とヨロイ。それに武装した荒くれたち。先頭の装甲車の上には刀を突き立てた鬼灯が仁王立ちしていた。


 チョーチン一家だ。


『なんで、あいつはあんな場所に立っているんだ?』

『ふふん。目立ちたいんでしょ』

 セラフの言葉は意外と正解かもしれない。


 チョーチン一家のトップとして、あえて姿を晒すことで仲間を鼓舞しているのだろう。


『しかし、やっと来たか』


 ハンザケが迫っていることを信じていなかったのか、それとも鬼灯が動けるようになるまで待っていたのか。だが、これで数の不利は覆せるだろう。


「待たせたな」

「ああ、随分と待ったな」

 俺は鬼灯の言葉に軽口で返す。


 鬼灯をよく見れば、その体は小さく震えていた。恐怖で震えているのではないだろう。

『さっきまで死にかけていた奴だからな』

『ふふん。今も死にかけでしょ』

 動けるだけでも奇跡か。刀を突き立てているのも、そうやって体を支えないと倒れてしまうからなのだろう。


「行け! チョーチン一家の力を見せる時よ。攻撃!」

 鬼灯が叫ぶ。


 チョーチン一家の荒くれたちが空気を震わせるような雄叫びをあげ、ハンザケの集団に突っ込んでいく。


『これで何とかなるか』

『ふふん。ノルンの端末の仕組んだ策略が、この程度で何とかなるようなものだと、お前は本気でそう思っているの?』

 俺はセラフの言葉に肩を竦める。


 確かに、だ。

2022年10月9日修正

後退するれば……だが、その → 後退すれば……だが、その

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― 新着の感想 ―
[良い点] 消耗戦だ! [一言] とりあえずジリ貧だけは免れそう? 新しいクルマの性能がなかなかよくて何よりです。 にしても個人で3台も所有してるクロウズって、わりとすごいんじゃなかろうか。
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