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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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255 神のせんたく40――「あんたは賞金首だろう? それで充分だ」

『セラフ、俺の体はナノマシーンで創られている。間違いないな?』

 俺はセラフに確認する。

『何度も伝えたのに信じてなかったとかお前は馬鹿なの? お馬鹿なの?』


 俺はセラフの言葉を噛みしめる。


 信じていなかった、か。


 確かにそうなのかもしれない。俺は認めたくなかったのかもしれない。


 何度も何度も死にかけ、ボロボロになり、だが、その度に俺の体は再生していた。今だって、俺の体は人から、毛深い狼と人を足したような姿になっている。俺の体が人狼へと造り変わっている。


 どうやったら、そんなことが出来る? それを可能としているのは……。


 俺の体。


 小さな、目に見えないほど小さな機械が集合して俺の体になっている……か。


 俺はなんなんだ。体が造り替えられ、再生する。そして元に戻った後の俺は俺のままなのか。全身が――いや、脳だけはナノマシーンではなく生身なのか。記憶だけは……いや、そんなはずがない。

 頭が吹き飛び、再生したとしたら、それは俺なのだろうか。今の俺なのだろうか。俺のままなのだろうか。


 記憶、思い出、俺という意思……識。それは何処にある?


 タマシイ、か。魂という概念。魂が俺を俺たらしめているのか。


 魂。


 魂とはなんだ?


 俺はそれを、何か……俺は、それを、手にしようとして、欲して、それが……記憶の海に沈む。何かが溢れようとしている。昔の記憶。


 ズキリと頭が痛む。


 ……。


 俺はその痛みを追い出すように頭を振り、大きく息を吐き出す。


 目の前には俺の力では破壊することが出来なかったヤマタウォーカーの核がある。本体の輝きはいよいよもって危うい領域へと入ろうとしている。この力が解放されれば、確実に、この周辺は綺麗さっぱり吹き飛ぶことだろう。その力の中心となるヤマタウォーカー自身も無事ではいられないだろう。これはたんなる自爆だ。だが、それに巻き込まれれば、ドラゴンベインがどれだけ強力なシールドを張っていようと無駄だろう。


 確実な死。


 ぼうっと考え事をしている場合では無い。


 大事なのは俺の体がナノマシーンで創られているということだ。


『……セラフ、可能か?』

『理論上は可能ね』

 セラフは何処か諦めたような声で答えてくれる。ヤマタウォーカーのパンドラを諦める選択をしようとしているのかもしれない。セラフはドラゴンベインを遠隔操作で動かしている。だが、セラフ自身は――本体は俺の右目にある。このままヤマタウォーカーの自爆に巻き込まれるつもりは無いはずだ。

 ヤマタウォーカーの本体自体は八つの頭が発生させた強固なシールドに守られている。だが、そこに力を集めているからか、八つの頭自体は無防備な状態になっている。ドラゴンベインなら簡単に破壊することが出来るだろう。急いで八つの頭を破壊し、シールドの無くなった本体を破壊する。


 それで終わりだ。今ならまだ間に合うはずだ。


 間に合う?


 そう、今しかない。やるしかない。


 俺の体はナノマシーンで創られている。


 俺と同じようにナノマシーンで創られたあいつ(・・・)がやっていたこと。


 ……。


 だが、俺はナノマシーンのことを何も分かっていない。同じナノマシーンという名前でも俺と奴では違うものかもしれない。奴のナノマシーンだから出来たことなのかもしれない。


 ……。


 違うだろ。


 セラフは理論上は可能と言った。


 つまり、出来るということだ。


 俺と奴のナノマシーンが種類の違うものだったとしても出来るはずだ。出来ると分かっているなら、それをやるだけだ。


 俺は爪の折れた右の拳を構える。


 あまり悠長に考えている時間は無い。


 だが、どうやって行う? 出来ると分かっていても、俺はナノマシーンへの命令の仕方なんて分からない。


 ……。


 いや、そうじゃないな。分かっては……いるのか?


 俺は体の一部位だけを人狼化することが出来る。それと同じことだ。


 同じことをやるだけだ。


 大きく息を吸い、吐き出す。


 目の前の核を――斬る!


 俺は構えた拳を解放する。


 放つ。


 俺の右拳が消える。


 そして、目の前にあるヤマタウォーカーの核は真っ二つに切断された。


 切断。


 そう、俺はただ出来ると信じるだけでいい。


 ミメラスプレンデンスが行っていた技。奴の見えない蹴りは全てを斬り裂いていた。俺はそれを見て、そして実際にその攻撃を食らっている。知っている(・・・・・)。奴の技を俺の技に昇華する。


「名付けて斬鋼拳!」

『ださっ』

 俺の言葉を聞いたセラフがすぐに反応する。


『ダサい? いいんだよ。この技を発動し易いように何かに結びつける必要がある。何か? 発動の(キー)となる言葉を設定するのが一番だろう? そして、こういうのは、分かり易くて簡単な名前の方がいい』

『はいはい』


 目の前のヤマタウォーカーは核を破壊され、その輝きを失う。これで自爆することは無いだろう。そして核を失ったからか、転がっていた八つの頭も完全に動きを停止していた。


 ヤマタウォーカーを完全に破壊した。


 これでこいつのパンドラを手に入れることが出来る。目的は達成した。後はヤマタウォーカーからパンドラを回収するだけだ。


 ……。


 後は?


 俺はヤマタウォーカーの本体から大きく飛び退き、構える。そのままドラゴンベインの元へとゆっくり後退していく。そうだ。まだ戦いは終わっていない。


 これは前哨戦だ。


 このヤマタウォーカーを暴走させたあいつ(・・・)が何処かに居るはずだ。何処かでこの戦いを見ていたはずだ。


 と、その時だった。


 動かなくなったはずのヤマタウォーカーの本体が揺れる。そして、その中から現れる。


「ゴオォォジャアァァス」

 叫びながら現れた女。


 アクシード四天王の一人、ミメラスプレンデンス。馬の尻尾のように結んだ黒髪を揺らし、病んだ瞳で俺を見ている。


「そんな場所に隠れていたのか。ヤマタウォーカーと一緒に死ぬつもりだったのか?」

 俺は奴を視界に捉えながらゆっくりと後退する。ヤマタウォーカーは暴走した訳ではなく、こいつが乗り込み動かしていたのか。

「あら? 心配してくれたの? でも、この程度でなんとかなるはずがないでしょう? ふふふ」

 ミメラスプレンデンスが口元を歪ませ微笑んでいる。首を切り落としても生きていたような奴だ。周辺を更地に変えるような爆発でも生き残る方法があるのかもしれない。


 ……ふぅ。


 ここまでは予想通りだ。


「ふふ。私と戦うつもり? 私があなたに何かしたかしら」

 ミメラスプレンデンスは顔を歪ませ笑っている。

「あんたは賞金首だろう? それで充分だ」


 ここで奴を――倒すっ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今度こそ決着を! [一言] パンドラも賞金もウズメの報酬も頂きだぜー。 必殺技は、やはり技名を叫びながら繰り出したいもの。 さあ本戦開始だ!
[良い点] そうだ!ガムさんは賞金が欲しいんだ! いつでも金欠なんだ!
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