表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

218/727

219 神のせんたく04――「御山とやらの情報が欲しい」

 俺はユメジロウじいさんに別れを告げ、洗車場から離れる。


『ふふん、それでどうするの?』

 どうする?


 今後の予定をどうするか、だな。


『とりあえずユメジロウじいさんの助言に従って山に向かってみるつもりだ』

『ふふん、てっきり最前線に行こうとするかと思ったけど。あらあら、少しは賢くなったのかしら』

 最前線、か。


 俺が天部鉄魔橋(あまべてつまきょう)を占拠していたコックローチを倒したことで最前線への道は開かれた。最前線に行こうと思えば行くことが出来るだろう。


 だが――


『それは行けと言っているのか?』

『あらあら。お前がそんなお馬鹿じゃなくて良かったと思っているだけだから』

 俺は肩を竦める。


 最前線――そこはマシーンたちとの戦いのもっとも激しい場所なのだろう。そして、そこで待っているのは、この世界を支配しているマザーノルンの本体だろう。セラフの最終目的だ。マザーノルンを叩けば全て終わる。


 ……。


 だが、まだ行くべきではないだろう。遠回りなようだが、各地のオフィス――領域を支配している端末を乗っ取って行くべきだ。九つの端末――ノルンの娘たちを支配下におけば、それだけマザーノルンの力を削ぐことが出来る。最前線に向かうのはその後だろう。


 にしても、最前線か。


 この世界はすでにマシーンによって支配されている。どれだけ激しい戦闘が行われていたとしても、それは全て茶番でしかない。なんとも愉快な話だ。


『とりあえずは情報だろう』

『ふふん』


 俺は御山とやらの情報を得るため、オフィスに戻る。


 円形の変わった建物に入り、窓口へと向かう。

「ようこそ、ガム様」

 そこではこちらを待ち構えるように揉み手でにこやかな笑顔を浮かべた受付の女の姿があった。


『セラフ、これは?』

 このハルカナの街に来た時とは大違いの態度に思わず肩を竦めそうになる。

『ふふん。自分の立場というものを理解したんでしょ』

『なるほど』

 ここのマスターを支配したセラフが何かしたのだろう。


「随分と態度が変わったな」

「それはもう! マスターの方針が変わりまして、高額の賞金首を倒した実績、最高額落札者の称号も得た裸族の首輪付きであるガム様に無礼なことは出来ないと、そうなりました」

 窓口の女がにこやかな笑顔のまま頭を下げる。


 ……。


 はぁ。


 思わず大きなため息が出てしまう。


 あからさまなほど態度を変えたことにも呆れるが、未だに裸族の首輪付きという訳の分からない呼び方をされていることにため息しか出ない。


『セラフ、これは?』

『ふふん。ちっぽけな領域しか持たない、こんな人形に何を期待しているのかしら』

 俺は肩を竦める。


 いくら人型をしていても所詮は人造人間。人の機微などは理解出来ないのかもしれない。


「とりあえず、その裸族とやらは止めてくれ」

「はい、分かりました。それでは借金王の首輪付きとお呼びしましょうか?」


 ……。


「その借金王というのは?」

「ガム様が非常に高額の――そうですね、だいたい一千万コイルほどの借金をされているという情報を手に入れたので、そこから来ています」

 何処から入手した情報だ? 何故、そのことを把握している? この世界を支配しているマシーンどもからしたら、その程度の情報は入手出来て当たり前なのか?


 だが、少し情報が古いようだ。


「その借金なら返済済みだ。わざわざ変なあだ名のようなものはつけなくていい」

「そうですか。それでは首輪付きのガム様とお呼びします」

「首輪付きは外せないのか?」

「はい。それはハルカナの街でつけられた二つ名ではないので、ここでは外せません」

 二つ名が外せない?


 二つ名なんてものは誰かが勝手に呼び出したあだ名のようなものだろう? それを着け外しするというのか?


 まるでゲーム感覚だ。いや、こいつらからすればまさしくゲームなのか。人を使ったお遊びの一環なのだろう。だから、こんなふざけたことを言ってのける。


 ただの末端でしかない、この人造人間にこれ以上言っても無駄だろう。元々の用件を済ませてしまおう。


「御山とやらの情報が欲しい」

「分かりました。少々お待ちください」

 窓口の女が備え付けられたキーボードをお遊びのようにポンポンと叩く。


「はい、出ました。このハルカナの街の西側にあるビッグマウンテンのことを一部の人たちが御山と呼んでいるようです」

「一部?」

「はい。ビッグマウンテンを信仰している人たちですね。山の中腹に集落を作り、ご神体を祀っているそうです。近くにはオフィスもあるので詳しい情報はそちらで手に入れられてはどうでしょうか?」

「オフィスがあるのか」

「はい」

 窓口の女がにこやかに頷く。


 なるほど。


 オフィスがあるのなら、ますますそこに向かうべきだろう。


「そこに向かう道は?」

「ここより北西に向かい、天部鉄魔橋の手前から山道への道に入ることが出来ます。非常に険しい山道になりますが、クルマをお持ちのガム様なら問題ないでしょう。飛行系のビースト、甲殻を持った蟲系のビーストが多く棲息しているようです。逆にマシーンは殆ど見かけないようです。山の生活に適応したバンディットの姿もあるようですね」

 機械の類は棲息していない、か。


 工場跡などではなく、山だからな。自然に適応した野生動物が中心なのだろう。


 にしても戦車に向かってくる野生動物、か。


『分かっているでしょうけど、凶暴な連中ばかりだから』

『ああ。まともな動物が出てくるとは思っていない』


 とりあえず決まったな。


 次の目的地はビッグマウンテンだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 祝・裸族の撤回! [一言] 二つ名は称号システムみたいなのかなー。 しかしこの受付嬢、塩対応から胡椒対応になっただけみたいな気がする。 これも個体の獲得した特性なんだろうか? セラフが、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ