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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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208 機械の腕43――「お前が修理屋か?」

 裸族の首輪付き?


 違うと否定して追い返したいところだが、せっかくユメジロウじいさんが紹介してくれた修理屋だ――その程度で追い返すのは問題があるだろう。


「お前が修理屋か?」

「質問に質問で返すとか常識が無いと思うんだけど」

 ランドセルを背負った少女が呆れたような顔でため息を吐いている。


 俺は肩を竦める。

「俺の格好を見れば分かると思うが裸を好んでいる訳では無い」

「あ、そう」

 ランドセルを背負った少女が首を傾げる。


「俺はガムだ。修理屋でいいんだよな?」

「そうだけど。何、疑ってるの? 私はこのまま帰ってもいいんだけど」

 俺は首を横に振る。

「いや、確認だ」

「そう? それでどの子を見れば良いの?」

 俺はランドセルを背負った少女をドラゴンベインとグラスホッパー号の前に案内する。


「これは酷い」

 ドラゴンベインとグラスホッパー号の無残な姿を見たランドセルを背負った少女は大きなため息と共にそんな言葉を呟いていた。

「直りそうか?」

「直すけど」

「けど?」

「な、なんでもない。直すから待ってて欲しいんだけど。これは……二番装甲にポリフレームが必要そうだけど……う、うん、素材を注文したから、それが来るまでに直せるとこを……」

 ランドセルを背負った少女が手首に巻き付けた腕時計のようなものに話しかけている。


 俺はランドセルを背負った少女の修理を見守る。ユメジロウじいさんが派遣してきた人材を疑う訳ではないが、それでも俺のクルマに何をするか興味があるからだ。


 少女の背負ったランドセルが開き、そこから細長い機械の腕が現れ、作業を開始する。どうやら背負ったランドセルが修理用の道具のようだ。


「その左腕……」

 ランドセルの少女が作業を行いながら俺に話しかけてくる。

「左腕がどうしたんだ?」

「使いこなせているかと思ってだけど」

 使いこなす、か。俺は機械の腕(マシーンアーム)九頭竜(ハイドラ)を使いこなせているだろうか?


 だが……、


「使いこなせているかは分からないが、助かっている」

 俺は左腕を持ち上げ、調子を確かめるようにグー、パーと拳を握り、開く。

「そう、そう!」

 ランドセルの少女が楽しそうに笑う。

「この機械の腕(マシーンアーム)がどうかしたのか?」

「それを調整したのは私なんだけど。でも、誰も扱えなかった。でも、ガムは問題無い」


 ランドセルの少女が頼んでいたのか金属板やパイプなどの資材が置き場に搬入される。ランドセルの少女は楽しそうに鼻歌を歌いながら修理作業を行う。


『この少女が九頭竜(ハイドラ)を調整した?』

 俺は少女の作業を見る。ゲンじいさんのところで作業を手伝っていた俺だから分かるが、その腕は悪くない。いや、もしかするとゲンじいさんより上かもしれない。幼く見えるだけで実際の年齢はもっと上なのだろうか?


『ふふん。そういう調整が施されたデザイナーチャイルドなんでしょ。何処かの実験施設から流れてきたんじゃないかしら』

『デザイナーチャイルド?』

『お馬鹿なの? 分からないの? 人工的に天才を創ろうとしたってことでしょ』

『この子が?』

『完成度は低いみたいだから、それで廃棄されて、ここまで流れて来たんでしょ』

 完成度は低い、か。まるで人を機械のように――いや、そうした結果が目の前の少女か。


 俺は少女の作業を見守る。

「な、なぁ?」

 ランドセルの少女が話しかけてくる。


 見られながらでは作業に集中が出来ないのかもしれない。

「邪魔だっただろうか?」

 俺はそう思ったのだが、ランドセルの少女は首を横に振る。


「違うけど。最初のことだけど」

「最初?」

「一応、その……謝る」

 俺は首を傾げる。


 謝る? 何のことだ?


「私の外見で侮る奴が多いから、それでああいう態度をとったんだけど」

 ああ、そちらか。


 てっきり裸族と呼んだことを謝罪してくれるのかと思ってしまった。


 俺は肩を竦める。

「気にしていない。俺も幼く見られがちで侮られるから気持ちは分かる」

「そ、そう」


 俺は少女の作業を見る。背負ったランドセルから伸びた機械の腕の一つが少女に溶接マスクをかぶせ、もう一つが金属板を削り、もう一つが破損した部分を溶接する。


 作業は手際よく行われているようだ。


「ガム、私はシーズカ。この街で修理なら私に頼めばいい」

「そうか」

 この少女の名前はシーズカ、か。


 腕の良い職人はそれだけで価値がある。俺の左腕にある九頭竜(ハイドラ)の調整を行ったのもシーズカなら、そちらでも頼ることがあるかもしれない。


 だが、

「腕の良い職人と知り合えたのはこちらとしても有り難い。だが、裸族は止めてくれ。首輪付きはまだしも、そう呼ばれたくはない」

「そ、そう? 分かったけど」

「けど、なんだ?」

「え? 特にないけど?」


 ……。


 少女は作業を続けている。


「そのクルマ――グラスホッパー号にもう一つパンドラを取り付けるようなことは可能だろうか?」

 俺は作業中のシーズカに聞いてみる。

「この子ならもう一つくらいは可能だけど」

「けど? 何か問題があるのか?」

「それは武器屋の範疇。それくらいなら私でも余裕だけど」

「武器屋?」

 聞いたことがないな。武器を扱っている店のことか?

「武器屋って名乗っているクルマやヨロイを改造している連中だけど」

「そいつらはこの街に居るのか?」

 シーズカは首を横に振り、肩を竦める。

「何処かに定住はしてないけど、この街に立ち寄ることは多いから、そのうち会える」

「そうか」


 出会えれば改造を頼むことがあるかもしれないな。


 シーズカの修理作業は続く。今日中には作業が終わりそうだ。


 後はこの街のマスターに会うためにオークションを攻略するだけか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 服を着たので脱裸族! [一言] いろいろ不自然な生まれが多い世界…… でもまあ、みんな何となく何とかやってる感じー。 双パンドラ仕様とは夢があるな。 ともあれ、まずはオークション!
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