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完璧娘の化けの皮

悪役令嬢の父(宰相)視点。

私は、ダニエル・ゲパルト。

この国で、宰相の職を勤めております。

娘ヘイデンは、優秀で貴族教育を大の大人も逃げ出しかねない速さでものにしています。


娘は、次期国王と言われる第一王子アイザック・ルクス様と仮初めの婚約しました。

実は、この国の王になる絶対条件が『ゲパルト家の娘との婚姻』。


遙か昔、高位の神々を怒らせたこの国は異国から来た平凡顔の心優しく美しい娘カイリー・ゲパルト様によって、この国は滅亡するのを免れた。

そして、高位の神々がこの国が再び悪しき道に行かぬように、心優しく美しいカイリー・ゲパルト様の血筋を王家に取り入れるよう願ったので、代々ゲパルト家の女子の中で最も優秀な者が次期国王の婚約者となることが義務づけられた。


国王陛下のお子様は、五人いるのですが側室様を合わせてすべて王子様。

身分の低い側室様のお子である第二王子様は、王位継承権がございません。

第二王子様以外は、自分より優秀な未来の側近をあてがわれました。

立派な側近になる年齢までに、信頼関係を築けという心遣いはありません。

王太子になるための試練です。

国王とは、国をまとめ率いる者。自分より優秀な者たちがいて当たり前。

その優秀な者たちを前に、劣等感を抱くことなく、それを受け入れ、さらなる努力が出来る者でなければ、国王となるに相応しくありません。

その試練に合格したのが、第一王子アイザック・ルクス様。

そして、第一王子アイザック・ルクス様が側近候補たちを正式に未来の側近たちとご希望なさいました。

この時に、正式に第一王子アイザック・ルクス様の婚約者として我が娘が決定しました。


第一王子アイザック・ルクス様の未来の側近たちですが、どうやら我が娘が苦手な様子。

娘のことで?、第一王子アイザック・ルクス様に文句を言っているようです。

苦虫を噛み潰したようような顔をして、それに答える第一王子アイザック・ルクス様。

何があったのでしょう?


それは、娘が貴族における義務教育の場である学園に通うことになってから知ることになります。

今年は、試験的な試みで庶民で優秀な女の子リシー嬢が入学することになりました。

これは、国として決定したことです。

貴族枠ではなく、優秀な庶民がいれば城での登用を検討する一環として。

彼女が学園でよい生活態度とそれなりの成績を残せば、今後も庶民の入学人数が増えるでしょう。

リシー嬢は、国の一代プロジェクトで選ばれただけあって、学園に馴染めるよう努力し、クラスメイトたちもそれを手助けするようになりました。

リシー嬢が学園に馴染めるよう率先して手を貸したのが、第一王子アイザック・ルクス様とその側近たち。

いくら王族でも、手を貸しすぎて庶民に勘違いされたらまずいと第一王子アイザック・ルクス様に忠告しようと、その前にどの程度手を貸したのか調べることにしました。

その結果、第一王子アイザック・ルクス様は『王家の影』に命じて我が娘ヘイデンを監視していることがわかりました。

王家の影というのは、王家のために隠密任務を行うエリート集団。

王族の中でも、国王陛下と第一王子アイザック・ルクス様しか個人的に動かすことが許されていません。

第一王子アイザック・ルクス様では、国王陛下に比べて動かす制限が多すぎます。

それでも、王家の影を動かすことを許されるとは。

私と国王陛下は、王家の影の隊長を呼び出して、第一王子アイザック・ルクス様が何を命じたのか教えるように迫りました。

そしたら、あっさり王家の影の隊長は第一王子アイザック・ルクス様の命じたことを教えてくれました。

これは、第一王子アイザック・ルクス様が王家の影に私と国王陛下限定で、命じた内容を話す許可を与えていることが大きいでしょう。(王家の影を動かすのに、国王陛下の許可は要りません。王家の影の隊長が判断します)

そして分かったのは、娘が第一王子アイザック・ルクス様とその側近たちにした貴族教育と王妃教育をものにしたとは思えない淑女としてはあるまじき恥ずべき行為の数々。

まさか、淑女の中の淑女と言われる娘が貞節を弁えないで、婚約者のいる身で婚約者のいる男性に言い寄っているとは。

そして、リシー嬢に対しては女性とは思えないほど残酷な行為をしていたことが分かりました。

嫌がらせの数々は、まだその残酷な行為よりはましです。

その残酷な行為というのは、雇ったならず者の複数の男性たちにリシー嬢を襲わせるという大変おぞましいものです。

もし、傷物にされたら貴族女性としては貰い手がいなくなって家に引きこもるしかないでしょう。

幸い、リシー嬢一人でならず者の複数の男性たちをすべて撃退したようです。

娘が、そんなことろまで墜ちているとは。

それが、第一王子アイザック・ルクス様とその側近たち、クラスメイトたちが、必要以上にリシー嬢を案じることになったのでしょう。

娘からリシー嬢を守るために。

ちなみに、リシー嬢は婚約者がいるいないにかかわらずクラスメイトの男性たちには言い寄っていないので、言いがかりをつける要素が存在しません。

他に娘がした悪事は、とある村に迷惑をかけその尻拭いに第一王子アイザック・ルクス様が奔走された。

とある商店に、貴族の幼い娘のようにワガママを言い、その尻拭いに第一王子アイザック・ルクス様がやはり奔走された。

書き切れないほど色々ありますが、娘がたくさんの人たちに迷惑をかけた尻ぬぐいをすべて一人で、第一王子アイザック・ルクス様が色々手を尽くして奔走したと言うことです。

これまで、私たちが我が娘ヘイデンの愚かな行為に気付かなかったのは、第一王子アイザック・ルクス様が、国家予算ではなく個人で得た資産を使って解決されてきたからでした。

言い訳でしかありませんが、私と妻、国王陛下や国の重鎮たちが我が娘ヘイデンの愚かな行為に気付かなかったのは、未来の王妃としての手本のような行動しかしなかったからです。


王家の影から、国王陛下と私、国の重鎮たちに最悪の報告がもたらされました。

学園が、長期休暇を始める前の集会で娘がリシー嬢に謂れなき断罪をするというのです。

もう、妻には現実を見てもらわねばなりません。

以前から、妻には娘が未来の王妃に相応しくない行為をしていると説明しているのですが、どんな証拠を出そうと信じようとしませんでした。

ですが、それももう終わりです。

懇切丁寧に説明して、娘の現実を見てもらいましょう。


学園に長期休暇があるのは、王都や人の住む場所から離れているからです。

魔法の授業があるので学園外で被害が出ないように、それと学園の教育方針からでもあります。

数日間、馬車を走らせてようやく学園に到着しました。

そこで見たものは、娘の貴族令嬢として未来の王妃としてのあってはならない姿でした。

第一王子アイザック・ルクス様とその側近たち、王家の影が判断して下した予想通りの行動をしていたのです。

リシー嬢に対して、謂れなき断罪です。

「リシ―様。あなたは私に数々の嫌がらせをしました。その責任をとって、今すぐこの学園をお辞めなさい!」

と厚顔無恥にも我が娘が言い切ったのです。

ようやく娘の現実を見た妻は、ショックのあまり気絶してしまいました。

私は、気絶し倒れるのをなんとか堪えました。

私まで、倒れるわけにはいきません。

娘が信じられないような金切り声を出してリシー嬢を追い詰めましたが、それに対して反論できないくらい完璧な正論とリシー嬢のアリバイを第一王子アイザック・ルクス様とその側近たちとクラスメイトたちが、娘に叩きつけた。

娘は、彼らに対して見苦しい言い訳を始めました。

言い訳が通じないと分かると、顔を真っ赤にして涙を浮かべて下唇を噛みしめて彼らを睨付けました。

あぁ、今すぐにでも倒れたい。

国王陛下は、これ以上学園の生徒たちの時間を無駄にしてはいけないと、この茶番劇の終了させました。

そして、学園の校長に我が娘のせいで中断してしまった集会の続きを行うことを命じました。


娘と妻を連れて帰る馬車の中では、終始無言でした。

これで、娘が今までの私たち大人以外に対してした態度を反省していればよいのですが...


妻と娘を連れて、王城に数日後に行かなければいけません。

一体、この国の法で娘をどう処罰すれば良いのでしょう?

娘と第一王子アイザック・ルクス様は、神との契約における婚約。

神から与えられる呪いを防ぐ意味での婚約です。

仕事以外で王城に行くまでの数日間、娘が第一王子アイザック・ルクス様以外にもした恐るべき行いの数々を妻と娘を交えて話し合いました。

妻は、娘が第一王子アイザック・ルクス様つまり王族を見下すということを平然と行っていることを知り愕然としました。

私も、初めて知ったときはショックのあまり言葉を失いました。

娘は、終始青ざめて震えて俯いています。


王城のとある一室に集った、国王陛下とはじめとした重鎮たち、第一王子アイザック・ルクス様とその側近たち。

そして、私たち家族。

皆が重苦しい雰囲気の中、第一王子アイザック・ルクス様がお言葉を発した。

国王陛下に、ご自分の王位継承権を剥奪するように迫ったのです。返上とか放棄ではなく。

これを聞いたとき、私と妻は顔を真っ青にして青ざめました。

まさか、第一王子アイザック・ルクス様はご自分を犠牲にすることによって、この国を神からの呪いを回避しようと。

第一王子アイザック・ルクス様は、王太子に相応しい人物。

国王陛下は、考え直して欲しくて説得にかかろうとされました。

「アイザック、考え直さないか?」

「申し訳ありませんが、国王陛下。ヘイデン・ゲパルト公爵令嬢の犯した数々の罪を考えると私には荷が重すぎます。

ここは、ヘイデン・ゲパルト公爵令嬢を押さえ込むことが可能な弟ブラックが王太子になるべきです。

私には、婚約者がいるような高位の男性たちに次々と色目を使うふしだらな女性の手綱を握る技量はございません」

「なら、ヘイデン・ゲパルト公爵令嬢を」

「それはなりません。国王陛下。王家とは国民に尽くす者。国民を危険に晒すような真似はいけません」

「うむ。そうか...」

「ですので、私は彼の地。エッグリモーネに赴任したいと」

「あの、海沿いの地か」

「はい。あの地は、重要と思われていないのか過疎化が進んでいます。いずれ、あの地は重要な地となるでしょう」

ご自分を犠牲にして、必死に国王陛下を説得にかかる第一王子アイザック・ルクス様。

第一王子アイザック・ルクス様の必死の思いに、説得を諦めざるを得なかった国王陛下は決断を下されました。

「アイザック、王位継承権と王籍を剥奪する。そして、エッグリモーネへの赴任を命ずる。

ブラック、ヘイデン・ゲパルト公爵令嬢の新たな婚約者になることを命ずる」

このような結果になってしまって、国に忠誠を誓う者としてはなんとも情けない。

娘を見ると、納得できないような顔をしています。

娘自身が招いた結果であるというのに。

娘が『未来の妻』になると知った第二王子ブラック・ルクス様以外が、王太子になることを全力で拒否されました。

あとから知ったことですが、第一王子アイザック・ルクス様はご自分が王位継承権を剥奪するよう仕向けることを他のご兄弟にあらかじめ話されていたのです。

そして、拒否しなかった第二王子ブラック・ルクス様が、王太子となったのです。

王位継承権を失った第一王子アイザック・ルクス様は、何かを決意したように第二王子ブラック・ルクス様に隣国である魔術大国産の犬の首輪(なぜか、リード付き)を手渡されました。

そして、第二王子ブラック・ルクス様はすぐさまその首輪を我が娘ヘイデンに付けました。

いやいや、なんでそんなに笑顔なのですか? 第二王子ブラック・ルクス様。

私は、第二王子ブラック・ルクス様のその笑顔になぜか恐れをなした。

すると我が娘は、理解できない言葉をしゃべり出した。

「うそよ。うそよ。うそよ。こんな展開、乙女ゲームではなかったわよ。なんで、アイザックが王位継承権を剥奪されるのよ。

彼は、王族じゃないといけないの! 逆ハーレムルートに入ったはずなのに...ここで、隠しキャラが出て本当の逆ハーになるはずじゃない!」

これは、何を言っているのです?

他にも娘が見苦しく何か叫んでいるのですが、叫んでいる言葉を脳が理解することを受け付けません。

この場が凍り付いたことを無視して、第二王子ブラック・ルクス様は嬉しそうに娘をお姫様抱っこして連れ出しました。

娘が退場したことを確認した国王陛下は、二週間後に第二王子ブラック・ルクス様と娘が結婚することを決定されました。

そして、その間、国王陛下は私と妻に娘を自室監禁するよう命じました。


自室監禁せざるを得ない娘は、納得いかないようで汚らしく叫んでいます。

「なんで、あのヤンデレと結婚しないといけないのよ!!!」

「アイザックが王族で、私と結婚しないと逆ハー出来ないじゃない!!!」

「どうして、あの時にスティーヴンが現れないのよ!!! 私のこと愛してるでしょ!!!」

ス、スティーヴン? スティーヴンってもしかして、スティーヴン・シゴトシタクナイ様のこと?

あ、あの隣国の王位継承権第一位の第三王女様の婚約者の?

ま、まさか...

エッグリモーネへの赴任準備に追われている元第一王子アイザック・ルクス様に問い合わせましたら、

「そうです。あの王位継承権第一位の第三王女様の婚約者様のことです。隣国に留学した際、ヘイデン嬢はいつも通り他国の王族の婚約者に色目を使い、第三王女様の不興を買っていました。第三王女様の怒りを静めるのは、本当に大変でした。それと、あのヘイデン嬢のためにに作らせた首輪ですが、隣国の平和と友愛と真実の神がこの国を心配して下さったものですので、大事にしてください」

それって、この国の神の許可済みじゃないですか。

どうやら、娘は隣国に留学した時に隣国の神の怒りを買ったようです。

娘がその罰を受けなかったのは、カイリー・ゲパルト様の血族だからというだけ。

つまり、ご先祖様の功績があったから隣国の神の怒りをなんとか逃れただけ。

なんてことをしてくれているのでしょう。

私と妻と執事は、元第一王子アイザック・ルクス様のお返事の手紙を読んだ時に気絶したのはいうまでもありません。


無事に第二王子ブラック・ルクス様と娘は結婚した。

元第一王子アイザック・ルクス様曰く、第二王子ブラック・ルクス様は娘の性格ごとすべて愛しているので、いずれ娘は『真実の愛に目覚めるだろう』といい笑顔でおっしゃっていました。

どうやら、娘は『真実の愛』というのが好きらしい。

国王陛下主導で、『娘は体調を崩し、病弱になった。公の場にでれるのは最低限』というのを噂で広めます。

娘が犯した数々の悪行を考えると、私が反対できるはずもありません。

むしろ、親のつとめとして率先して私がその噂を広めるつもりです。

国王陛下にそのことを言うと、「そうですね。お願いします」となぜか敬語で言われました。


我が娘ヘイデン、あなたには大変失望しましが、親としては幸せを願っています。

第二王子ブラック・ルクス様との真実の愛で、あなたに似ない元気な子を産んでくださいね。


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