閑話その3:黒幕事情
今回は短いです。
暗い部屋。
パソコンのモニタの明かりだけが、僅かにその周囲だけをぼんやりと照らす。
画面に映し出される情報を見詰めながら、誰かと電話で話すのは――――――東条。
空条四家、東の一家、その御曹司――――――東条貴臣。
彼は何でも出来た。
彼は何でも持っていた。
だが、一つだけ、足りない物があった。
それは『空条当主の椅子』
それでも良かった。
そのままでも十分に、富と権力に群がる小魚達は釣れた。
それらは、彼の自尊心を満たしてくれていたから。
それは半分諦めであったが、納得もしていた事であった。
だが、“ソレ”を知った。
“ソレ”の存在は、東条貴臣に疑問を投げかけた。
何故放置しておく?
何故囲わない?
“ソレ”が手に入れば、空条という帝国は、さらにさらに肥沃に発展するであろうに。
だが空条という帝国、その帝王の座に一番近い男……空条明日葉は動かない。
動けば簡単に手に入れられる位置にいるというのに。
空条明日葉の現在の婚約者は“ソレ”に関わる人物。
やりようなど、いくらでもあるだろう。
電話口では、まだ話が続いていた。
まだ時期ではない、とか、焦るなとか、勝手な行動は慎んでもらわないと困るだとか、そんな言葉を彼は繰り返す。
手駒はいくつか手に入れた。
後はそれをどう動かすかだ。
だが残念な事に、駒の一つは言う事を聞かずに暴走し始めている。
まあいい。
もうひとつの駒――――――先ごろ“ソレ”と接近し、急激に親しくし始めた『神山真理亜』という人物が、まだ手元に残っている。
しかしこちらも計画通り順調、とは言えないのが痛い。
当初の予定では、もっとこちらに靡く筈だったのだが……邪魔が入った。
あの男―――東雲愉快。あの男さえ、ちょっかいを出さなければ……。
しかも“あの場面”を見られた。
だが、脅迫材料としての価値はきっとまだ残っている筈だ。
どうにかして東雲愉快を排除し、自分は大人しく優しい好人物を演じる事で、きっとその内絆されて言う事を聞く様になるだろう。
向こうはまだ何か喚いているが、もはやこちらとしてはどうでもいい。今や不快なだけだ。
言う事を聞かなくなった駒など不要。最悪捨ててもいい。
いや、捨てるついでに『神山真理亜』に近づこうとすると必ず邪魔に入ろうとする、目障りな『東雲愉快』を排除するのに一役買ってもらう、というのでもいい。
むしろその怒りが『彼女』に向かえば、その方が好都合だ。
煩いだけの電話を切って、再びモニタに視線を移す。
…………。
……誰も手に入れようとしないのなら。
久しく眠っていた野心が、鎌首をもたげる感触。
そうだ、
――――――必ず全てを手に入れる。
彼の見つめるその画面には、『央川櫻の極秘不確定情報』が映っていた。
というわけで東条先輩が敵対化しましたよ……っと。
以下どうでもいい話。
コンシュマ版(予定)だと、好感度によっては悪の心に目覚めなかった……というか良心が目覚めた(笑)東条ルートが開幕。
東雲君が原作通りの地雷役として突っ走ります(爆)
うん、本当にどうでもいいね!




