表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/30

閑話その2:東条先輩と花火




たまには東条先輩にもいい目を見せてあげないと……。




 8月、東条先輩と花火に行く事になりました。

 そうです、あの7月のお誘いリベンジなのですっ!!

 理由があったとはいえお断りはお断りでしたから、そのせいで気まずくなるのは嫌だなと思っていたのですが、あれきりにならなくてでっかいホッとしました。

 東条先輩にはでっかい感謝ですね!


 お誘いは今回も東条先輩の方からでした。

 あの時みたいに先輩からお電話でのお誘いがあって、特にお断りする理由もありませんでしたし、そもそも先月の件があったから、という事でお受けする事にしました。

 一応美々ちゃんとさーりゃん先輩には報告……というか、相談しましたけど。

 美々ちゃんは頑張れ、って言ってくれましたし、さーりゃん先輩は「いーじゃんいーじゃん行ってきなよ。そういう機会は大事にすべきだよ」って言って送り出してくれました。

 なので、フラグが頭にちらついたから、という理由からでは無いですが、行く事にしたんです。



 当日の待ち合わせの場所は、なんと学園の正門前でした。

 先輩も私も車での登校ですから、駅でも現地でもどこでも待ち合わせ出来たのですが、人混みが多いことが予想されましたし、そうなると色々危ないから、という事でこうなりました。

 まるで人気の無いしんと静まり返った学園に、浴衣の女の子が……っていうのも、何だかでっかいシュールです。

 少しだけホラー演出なのではないかと疑い始めた頃、東条先輩がやって来ました。

 ちょっとだけ遅刻ですよ、もう。

 私の表情を見て先輩は、

「非日常を演出したつもりだったんだけど、ちょっと失敗だったかな?」

 とおどけて言いました。

 別におこじゃないですよ。ただちょっと肩の辺りがうっすら寒かっただけで。

 それから先輩は、浴衣の私を褒めてくれました。でっかいソツが無いです。

「やっぱり花火や縁日は浴衣でないとね」

 でっかい満足げです。


 浴衣は、せっかくだったので着て行ってみたんですよ。

 家が家なので、着物とか浴衣とか、それなりに持ってるので。

 多分、普通の人より馴染みがあるんじゃないですかね?

「先輩もその浴衣、お似合いですよ」

 そんな先輩も浴衣姿で、いつもより渋かっこいい感じ。

 いいですなー、と、思わずお年寄りみたいな感想を抱いてしまいました。

 萌えっていうと少し違うかもしれませんが、軽くって子供っぽい人よりは、こういう年上っぽさを感じられる方がグッときますね。……軽くって子供っぽいのが誰とは言いませんが。

 似合ってると褒めて褒められた所で、東条先輩の車に乗って、いざ会場へGO!なのですっ。



「ボクと2人で出かける事に関しては、親はなんて?」

 道中、心配になったのか、後部座席でお隣同士の先輩がこちらの顔を覗き込んで来ました。

 うう、先輩?少し近すぎやしませんか~?

 やさしい表情の先輩に、その気が無くてもドキドキしちゃいます。

 しかも少し視線を下げれば……。

 襟元少し緩めで着ていらっしゃるのでしょうか、その、さ、鎖骨の辺りが……っ。

 これが世間一般で言われるところの、いわゆる“チラ見せ”ってやつですか!?

 わーん!でっかい逃げ場がありませんっ!!

「大丈夫です。変な嘘も吐いていませんから安心して下さい。東条先輩の名前出したら一発で信用して貰えました」

 赤くなりそうな頬を気力と根性で抑えつつ、冷静さを装った私のその言葉に、先輩は「そうかそうか」と満足そうにこくこくと頷きます。

 う、ばれてませんよね?

 でも、頷く先輩の表情は本当に嬉しそうで、見ていたら、こちらまで微笑ましい気分になっちゃいました。

 普段は年上の頼りになる先輩ですけれども、たまにはこんな風に可愛い表情もする事があるんですね。

 でっかい新発見です。


「花火にはまだ時間があるから、縁日を少し冷やかそうか」

 会場に着いてすぐ、ぐるりと視線を回してから最後に私に顔を向け、先輩はそう言いました。

 ……先輩って、結構人の目を見て話す事多いですよね。

 たまに、自分では予想していなかったタイミングで視線が合ったりするので、でっかい動揺するんですよ!もう。

 先輩って結構かっこいいですから、そうやって顔を覗き込むの、遠慮して欲しい時もあります。……今みたいな時とか。

 なんだかでっかいドキドキしちゃいますよう~~~っ。

「何でも好きなもの買いたまえ」

 何故そこででっかいドヤ顔です?


 あれもこれもと買おうとする先輩を引きとめるのは大変でしたが、それも含めて賑やかで楽しくて。

最後には2人して大笑いしちゃいました。

 上機嫌な先輩を見ている内に、まるで親バカなお父さんと来てるみたいだな、と思わずくすっと笑ってしまったのは……でっかい内緒です。


 楽しかった縁日を冷やかしていると、不審な影を見かける様になったのは、もう間もなくで花火が打ち上げ開始時間になろうかという頃の事でした

 視界の端で、ちらり、ちらりと動く影。

 何でしょう?小動物が人間の視界から隠れる様な……。

 その内だんだん大胆になって来たのでしょうか?隠れる影は、こっちをじっと見ているような影に変わった気がします。

 えー、えー……と?

 何かでっかい変な人が付いてきてます?

 もしかして、東条先輩のボディーガードさんでしょうか?

 いえ、それにしては動きが不自然です。

 それに、“あれ”は女の人だから……もしかして東条先輩の事、好きな人……とかですか?

 ……というか、もしかして彼女さんとかいらしゃるのでしょうか?

 ……はうっ、うっかりしてましたです!そんな風に見えないし、そんな話も聞いた事無かったので、でっかいその考えは無かったです!


「あのっ、今まで聞いた事も……といいますか、考えた事も無かったのですが、せ、んぱいって、もしかして、あの、彼女さん……とか、いらっしゃったり、します?」

 慌てて……最後には、おどおどと伺う様な聞き方になってしまいましたが……そんな私の問いかけに、先輩はやたらさわやかな表情で、はははっ、と笑いました。

「心配する事無いさ。自慢じゃないけど彼女は今いないよ。いたらキミにちゃんと紹介してるし、そもそもこんな所、2人きりで来ないだろう?」

 その言葉は、私の不安をあっさりと吹き飛ばしてしまいました。

 ほっとして軽くなった気持ちのまま、言葉を続けます。

「でも、先輩の事好きな人多そうです。告白とか、多いんじゃないですか?」

「キミはボクをどんな目で見てるんだい」

 先輩、苦笑って感じです。

 悪い意味で言った訳では無いんですが……。

「告白は一切受けてないよ、自分の事だけじゃないしね」

 きっぱりとそう言って、ほほ笑む先輩。

 そっか、そうですよね。

 お家が凄い所だと、そういう事ありますから。うちの兄もそんな感じの部分がありましたし。

 でっかい納得です。

 むしろ、そういう方面がきっちりしてる事はでっかい好感持てますね!比較対象が誰か、なんて言いませんが!


 そんな話をしながら、花火まで時間を潰します。

 けど、さっきからちらちら見え隠れしてる女の人、いなくなる気配無いんですが……。

 もしかして、先輩に用があるんじゃないんですかね?

 それに、目つきがだんだん怖い事になってる気がしますし……。

「いいんですか先輩?」

 ちらりと視線を向けて問いかけます。

 ちょっとだけ声が小さくなってしまったのは、雰囲気と言いますか……。

 でも先輩は「気にしないほうがいい」というばかり。

「自慢じゃあないけれど、ああいう手合いは少なくないんだよ。空条四家なんかにいると、特にね」

 わあ、踏んでる場数、でっかい違います。

 私だったら、きっとそこまで開き直れないです。

 不安をどうにか……というより前に、別の意味で引いてしまった私の様子に、先輩は労わる様に微笑みながら手を差し伸べて来ました。

「そんなに怖いなら、手、つなごうか」

 でっかいびっくりな提案です!

 でも、でも良いんでしょうか?

 例えば、後ろの人とか……。

「人も混み始めて来たし、これからもっと人の多い場所に行くんだ。何かあったら困るだろ?」

 ね?と優しくそう言われれば、悪い気はしません。

 私の事を思いやって気を使ってくれた先輩が嬉しくて、私は頷きました。

「じゃあそれで」

 なんて、言葉では平気そうにしてましたけど。


 そんなタイミングでした。



 がらがら、がっしゃん!!



 うわ、今後ろで何かでっかい音しましたよ!?

 まだ花火じゃないですよね!?

 周囲をさっと黒い服の男の人たちが取り囲みます。

 あ、この人達東条先輩のSS(シークレットサービス)さん達です。

 周りが何だか落ち着かない雰囲気になって来ました。

 何があったんです?黒い服の壁に阻まれて、でっかい全然見えませんっ!!


 ぴりりぴりり


 突然、先輩の懐から携帯音が鳴りました。

「……………」

 とったは良いのですが、先輩何ででっかい無言です?

 それに何だか、でっかい怖い顔、してません?

 まっすぐ横を向いた顔しか見えないので、よく分らない様な……。

 携帯を少し操作して、東条先輩はこちらを向きました。

 結局一度もお話ししてませんよ?要件、大丈夫です?

「ゴメン、急用が出来たんだ」

 申し訳なさそうに視線を合わせて来た先輩。

 え?急用?え?このタイミングで、です?

「後の事は頼む」

「「「ハッ」」」

 返事も出来ないまま、状況は進んで行きます。

「悪いけど、今回はこれで失礼させてもらうよ」

 さわやかなウィンク一つ。片手を上げて黒服スーツの人1人と一緒にこの場を去る先輩。

 え?まさか置き去りです?!え、だってまだ花火会場にたどり着いてすらいませんよ!?

「お嬢様、こちらです」

 ぽかーんとする私を、黒服さんたちが取り囲みました。



 結局、東条先輩のSSのおじさま方に、家まで送って頂きました。

 その後、深夜近くになってから、東条先輩からメールが。

 内容は一言だけ。「すまない」と。

 一応返信しましたけど、大丈夫でしょうか……?

 お仕事でしょうか。それとも何か空条の方で問題でも……?

 少し心配ですが、関係の無い私には聞く事も出来ません。


 でも、あの騒ぎといい、先輩の携帯への着信のタイミング……。

 顔までは暗くてよく分りませんでしたけど、先輩の事を見ていたらしき女性の影……。



 何だかでっかい、もやっとしますよ……?







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ