42.自分が父親になるなど想像もつかない。
別荘から〈隠れ家〉へ戻り、〈隠れ家Ⅱ〉を使って昨日、切り上げた場所から冒険をスタートする。
ベルナベル曰く、一日か二日かかるらしいから今日中に目的地には着かないだろう。
ひたすら歩き、ときどき方角を確かめ、また歩く。
ベルナベルの〈威圧〉のせいで魔物は近づいてこないため、ピクニックのようなものだ。
順調に歩みを進めて、あと半日程度の距離で夕方になってしまい、冒険を切り上げることにした。
続きは明日だ。
聖痕をもつ魔物との戦いも、恐らくは明日である。
〈隠れ家Ⅱ〉で宿に戻り、記憶を統合する。
本体である俺は〈匿名掲示板〉で気になる書き込みを見つけていた。
234.名無しの地球人
聖痕ゲット
どうやら聖痕を入手すると任意のスキルを強化できるらしい
これは信ぴょう性のある書き込みだ。
恐らく明日の新聞のトップニュースになるだろう。
書き込みの名前はリョウマ、男だろう。
これで地球人が入手した聖痕はよっつだ。
明日、いつつ目を持つ魔物と遭遇予定だが、そもそも聖痕は全部で幾つあるのだろうか。
偶然の遭遇に任せていると、終わる気がしない。
やはり聖痕の入手を優先して行動するべきだろう。
……最後に殺し合いにならなきゃいいんだが。
〈匿名掲示板〉では聖痕を入手したふたりの殺し合いを煽る書き込みや、ひとり目が聖痕のスキル強化について言及しなかったことを責める書き込みなどがあり、混沌としている。
攻略スレの勢いはいつもより速い。
ベルナベルと食堂に夕食を食べに行く。
別荘にはやはり〈代理人〉を送っておいた。
赤ちゃんができるのは時間の問題だろうか。
自分が父親になるなど想像もつかない。
地球での俺は三十歳で精神障害者だったから、結婚は諦めていた。
それが異世界へ来て健康になった挙げ句、ベルナベルとカーシャを相手に二股かけているような感じになっていて少し不思議な感じだ。
そんなことをつらつらと考えていた食後。
ホロウィンドウがポップアップしてきた。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈牢獄〉のクラススキルを習得しました》
新しいスキルは〈隠れ家〉と〈隠れ家Ⅱ〉から行き来できる〈牢獄〉だった。
何に使うのかは正直なところ分からないが、ベルナベルに問うととんでもない設備らしい。
「面白いぞ、主。この牢獄、入れられた者は死ぬことができなくなるようじゃ」
「なんだぞりゃ。自分で入った方がいいんじゃないのか?」
「主は〈隠れ家〉にいる限り死ぬことはないじゃろ。それより、面白い使い方がある」
「なんだ?」
「この牢獄に入れられた者はどんな拷問をされても死ぬことができぬということじゃ。主の治癒魔術も相まって、地獄の苦痛を――」
「いや、だからそんな相手が現状、いないだろ」
「…………ふむ、確かにそれもそうじゃの」
まあ拷問に使えるということは覚えておこう。
翌朝、戻って来た〈代理人〉を解除して記憶の統合を行い、再び〈代理人〉を生み出してベルナベルとともに冒険に送り出した。
そして案の定、〈新聞閲覧〉のトップニュースはリョウマが聖痕を入手したことだった。
「昨日、リョウマ(人間族/男/16歳)が聖痕を身に宿したオークジェネラルを死闘の末に倒した。銅ランク冒険者パーティ六人のうち、三人が死亡する被害を出したものの、リョウマは無事に生き残り聖痕を身に宿した。これで地球人が入手した聖痕はよっつになる」
オークジェネラルがどの程度の強さかは知らないが、多分ベルナベルなら指パッチンで瞬殺できる強さだろう。
……俺が戦ったらどの程度、苦戦するんだろうな?
ボーンナイトを前衛に召喚して、〈ホーミングジャベリン〉を撃ち込むことになるのだろうが。
実戦経験の少なさはいつか致命的になる気がする。
〈代理人〉にはその辺を補うため、戦闘経験を積んでもらいたいところだ。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 39
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈代理人〉〈隠れ家Ⅱ〉
〈二重人格〉〈睡眠不要〉〈闇市〉〈ボーンナイト召喚〉〈別荘〉
〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉〈アイテムボックス〉〈経験値15倍〉
〈契約:ベルナベル〉〈隷属:青葉族〉》
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