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Hero Swordplay Showdown  作者: 大虎龍真
終章:Into Free
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64 PAST the FUTURE-その後の仲間たち-②




・フーゲイン=アシモフ

 王国、そして彼の所属するワレンシュタイン軍にとって最大の仮想敵国であった帝国が消滅した後も各地で戦功をあげ続ける。また、旧帝国国土の分割時に精鋭を率いて遠征。敵味方の損害を極力抑えることに成功し、一軍の将としての才覚も存分に示した。元々が鬼族特有の荒々しい気性で知られた人物であったが、後に恩人と語る人物たちとの出会いによって豪快ながら要所要所で冷徹な対応もこなせる優秀な指揮官へと成長していた。

 この時点でとっくに軍司令官以上の地位についてもおかしくはなかった彼だが、デスクの前で椅子を暖め続ける仕事など真っ平だと昇格を断り、現場に出ることをこだわり続けたという。しかし、彼にとって直接の恩人であり主でもあるランバートが現役引退を表明。置き土産として最後の強権を駆使し、彼を軍の総司令官にまで押し上げていった。ところがその彼は、初日に大規模な領内南部の湿地帯に生息する大型モンスター群の掃討作戦を決行。そこで一切の軍規を無視し、ほとんど単身で突撃するという暴挙を行い、即日、降格を受けて元の上級大将に戻った。このことから彼は『一日総司令』や『一日番長』などと揶揄されるようになる。その後の彼に次の昇進の話は無く、現役を退くまで上級大将のままであったという。

 同時代に生きた多くの英傑と知り合い、模擬戦と称して数多くの手合せを行ったという逸話はあまりにも有名である。特に『龍と魔を斬った英雄』と引き分けた戦いは人気が高い。しかし後に、この英雄の一番弟子であるシン=オルデルステインとも行ったとされる模擬戦だけは後年の創作である可能性が高い。理由としては確かにシン=オルデルステインはワレンシュタイン領領都オルレオンに訪れたという記録があるものの、その期間フーゲインは軍の任務で遠征中により同都市を離れており、そもそも両者の間に面識すら無かったのではないかと考えられている。ちなみにその模擬戦の結果は、まだ年若く『エルフ正統流剣術・亜流』を興す前で、未熟でもあったシンのボロ負けだったと伝えられる。

 かなり高い生体レベルに達していたこともあって長生きすると周囲からは予想されたが、軍を退役後はみるみる老け込んでしまい、元々人間種としても寿命の短い鬼族であったこともあってか70歳を超えたあたりで死去した。彼もご多分に漏れず生存説が一部で信じられており、元王女らしき一行に晩年の彼によく似た人物もいたらしいが鬼族の証明である角が見られなかったことから、別人とする説が有力である。

 ちなみに彼の使用した『龍拳道』は非常に映像映えするためか、戯曲などでは登場の機会が意図的に増やされることが多い。その場合、主人公の強力な好敵手と描かれる。



・ズース=アー=ルゾン=アルトリーリア=クルーガー

 英雄たる孫を失ったことで、一時期は非常に落ち込み、後任を呼んで森都アルトリーリアに帰ろうかとも考えたが、孫の代わりにその友人たちを支えると決め、王都に留まった。そもそも国王が代替わりすると王国筆頭魔術師も交代するのが通例であったのだが、ズースは孫が森都の外で生きることを選んだために国王がアルティナ女王に替わった際に自ら続投を申し入れた事情もある。

 ただし、これら一連の流れが双方の距離を縮め、新政権の安定と王国全体の急激な発展を後押していく結果となるのは奇妙な運命とも言えた。

 まず、同王国内に属していただけであった森都アルトリーリアに住むエルフ族たちの意識を変えることとなる。英雄的功績を挙げた彼の孫の国葬が王都で行われることになり、ほぼ全ての森都アルトリーリアに住むエルフ族にも招待が送られることとなった。実際招待に応じたのは半分ほどであったが、本当に国を挙げた葬儀にほぼ全員が感動。更に亡くなった英雄の功績を事細かに、しかも演劇形式で紹介されたことにより大きく心を動かされることになった。中でも女王を始めとした政権の中心人物らと、エルフ族でも長老の座に近いズースとが双方共に互いを尊重し合った関係を築けていることに感銘を受け、以後、ヒト族の国家、とりわけモーデル王国への印象を大きく変えるキッカケともなった。

 このことにより、次に王都へと興味を持った複数のエルフ族が移住。元々、先の第一王子が起こした事件によって亜人種らが減った穴を図らずも埋める形となり、官民問わず重宝され彼らは次々と重要な地位に就任していく。元の住民たちとの軋轢も特になく、これには彼らの英雄の隠れた功績と評価できる。それまでのエルフ族は他種族にとって『実際に会ったことが無いので良く解らない種族』であったのに対して、かの英雄の活躍によって『長寿からか落ち着きがあり頼りがいのある種族』とのイメージがついたからであった。

 そして、更に多くのエルフ族が移住の流れとなる。彼らと協力し、ズースは王国の更なる発展と安定に寄与。鉄道網と空路の構築にも当然携わり、女王アルティナが退位すると同時に職を辞した。退任後は森都アルトリーリアに帰り、2度と歴史の表舞台に姿を見せることはなかった。



・バルセルトア=クルセルヴ

 凍土国と呼ばれたオランストレイシア王国出身の英傑。そして同国聖騎士団、最後の団長である。

 帝国消滅事変後、旧帝国国土の分割に参加。率いる軍勢と共に大活躍し、同国土の安定にも力を尽くしたことで報酬として凍土国オランストレイシアに冬でも凍らぬ土地をもたらした。その後13年平和が続いたが、同国で政変が勃発。彼も巻き込まれる形で本来の主である女王側についた。しかし、情勢は女王側に圧倒的不利であり、聖騎士団は壊滅、彼も最後まで主を守ろうとして命を落とした。

 若き日の、修行のためにモーデル王国で活躍していた時期はあまりにも有名で、ワレンシュタイン領で開催された第五回特別武技戦技大会の準決勝を知らぬ者はいないくらいである。結果は惨敗であるものの、その後、数多くのモーデル王国の英傑と知り合うキッカケとなった。彼が没した後、オランストレイシアは神聖オランストレイシア帝国と名を改めたが、僅か4年で滅亡している。その後は民主化の流れとなるなど、紆余曲折の道を辿る。

 彼も矢張り生存説の噂話が多く、その理由は修行時代に常に彼と共に旅をしていたドワーフ族に似た人物を従えた美丈夫を見たからというものである。また、直系の子孫がいたという噂もあり、それが耳の長いエルフ族の特徴を持っていたという。彼は生涯未婚であり、となると隠し子ということにもなってしまい、あまりに荒唐無稽で、後年の創作によるものであると結論づけられている。

 天才剣士、美形、修行で他国漫遊、若くして死去、とヒロイックな人物であるせいかたくさんの彼が生きた時代周辺の創作物に多数登場する。大抵は前述のフーゲインと同じく、『龍と魔を斬った英雄』の好敵手として描かれることが多い。



・ヴィラデルディーチェ=ヴィラル=トルファン=ヴェアトリクス

 帝国消滅事変後、一時期姿をくらましていたが、復活後は世界最強の冒険者として名を轟かせた人物。初期はモーデル王国だけで活躍していたが、次第に他国でも活動を見せるようになる。エルフ族であるため長寿で、各地を転々としつつも行く先々で数多くの浮名を流したとも伝えられている。また、所々で子にも恵まれ、引退しては20年ほど経って人々の記憶が薄れた頃に復帰するということを何度も繰り返した。最終的には1千歳を超えるまで生き、家族を含めた多くの人に見守られながら幸せにその生涯を終えたと伝えられる。

 魔法も最強、剣技の最強という途轍もない人物で、常に数多くの弟子を抱えていたという。しかし、本人は飽き性と語る。実際には10年以上師事したとされる人物も多く、エルフ族という長寿ならではの感覚であったのだろう。特に、モーデルから他国に活動拠点を移す時期に、前述のモログの弟子や血縁者を名乗る人物を片っ端から叩きのめしていた黒髪の少女を引き取り、一番弟子として鍛え上げ、亡くなるまでずっと面倒を見続けていた記録がある。彼女以上に生きたということでこの女性も、外見上はヒト族そのものだったが正体はエルフ族であったのだろう。

 なんでも斬った、と伝えられる剣技は若い頃『龍と魔を斬った英雄』から教わったが、基礎だけと語り、かの英雄の名で継ぐことも自身の名で流派を興すこともなかった。後年、彼女を慕う者たちによって『エルフ正統剣術・一刀流』と名づけられている。

 上記の事変時に命を落とした英雄たちと共に行動していた。彼らが死に自分たちが生き残ったことで一時期森都アルトリーリアとの関係が悪化したようで、事変後に姿をくらましたのもこのせいではないかと考えられている。後に和解したようで、森都アルトリーリアと自身の出身地である砂都トルファンとの交流の懸け橋を務めた。更に後年になるが、エルフ族が住む他の街にもすべて訪れ、その際に浅からぬ縁となったモーデル王国の詳細を伝えることで、それらの街すべてがやがて地続きでないモーデルの直轄領となり、同王国に更にたくさんのエルフ族が集う遠因を作る。上述の各地各国を転々としていたのもこのためであったと考えられている。このように、彼女は冒険者以外の面でも後の世に多大な影響を残している。



・ハーキュリース=ヴァン=アルトリーリア=クルーガー

 『龍と魔を斬った英雄』と語られる人物。今更その功績を一々述べる必要もないであろうが、その活躍期間がわずか一年の間であったことを知る者は意外に少ない。調べれば調べるほど異質な人物であると評され、ある時期は架空の人物であるとか、複数の人物の功績を民族高揚の目的で一人にまとめたという説が信じられたこともあるが、最新の研究では実在の人物と確定された。

 帝国消滅事変で死亡したが、その亡骸が発見されておらず、当然に生存説は長寿のエルフ族ということもあって他に類を見ないほどに多く、しかも各地各国だけでなく各時代に渡って存在している。しかし、いくら長寿といって数百年後にそのままの姿、つまりは少年の姿のままで現れたというのはさすがに無理があるだろう。全てをまとめるとエルフ族の寿命さえ何十倍も超えてしまう、というのもおかしい。

 彼は一般的に『武神』や『刀神』などと呼ばれることも多いが、一部民間ではこれら上記を本当に全て信じ、少数からとはいえ神として崇められていたこともあったという。しかし、生前の彼に似た人物が別の名前を名乗っていたがために、こちらの名の方が崇拝されるに至って下火になった過去がある。


 当然に創作物の題材となり易い人物であり、主役脇役チョイ役まで含めるとそれこそ星の数に達することだろう。本編でも主人公であり、作品によっては寡黙で冷徹な人物像から、人間くさく気さくで優柔不断な性格とまるで反対な描き方をされているが、本作品は前者に準拠しており、更に斬新な設定も加えている。是非、本編を楽しんで鑑賞していただければ幸いである。


※『Until the dying day』パンフレット制作者一同より





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