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Hero Swordplay Showdown  作者: 大虎龍真
終章:Into Free
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63 PAST the FUTURE-その後の仲間たち-




・シン=オルデルステイン

 魔族による帝国消滅事変後、英雄の一番弟子として即座に頭角を現す。古都ソーディアンの後の発展を支えた冒険者パーティー『冠鷲クレステッド・イーグル』のリーダーを務め、当時の同都市ギルド長ジョゼフの愛娘と結婚。現役を続けながらも若い身で同都市ギルドの副ギルド長、そしてギルド長と歴任する。

 が、ここで旧知の仲であった王国の重鎮リィズからの招聘を受ける形で、王都レ・ルゾンモーデルに新設された治安維持機構『ケイサツ』の副長官に就任。期間は4年限定であった筈だが、国の存亡にも関わりかねないテロ事件を解決に導き、救国の英雄と称されるようにもなり、結局は任期満了後に今度は長官に就任。更に4年間『ケイサツ』の組織安定に尽力した。

 ソーディアンに戻ってからは再度冒険者ギルドの長に返り咲き、領主側とも協力して半ば陸の孤島であった同都市の改革と改善にも寄与する。各都市への移動路、運搬路が大幅に整備改善された結果、都市部が大規模化。彼が晩年に至る頃には出身であるサイデ村がソーディアンと地理的に隣接、合併し、サイデ特別地区となり、96歳の高齢で没した後はそこに埋葬されて墓が建てられた。

 『エルフ正統流刀剣術・亜流』の流祖としても知られ、彼の元には彼が現役を退いても尚、その技巧を学びたいと優秀な冒険者たちが集ったとされる。これら人材が原動力ともなり、当時は斜陽の道を転がりつつあった古都ソーディアンは王都に勝るとも劣らない大都市へと成長していくこととなった。ちなみに亜流と名づけた理由は、盾を決して使わず一刀流であった師匠の名を、勝手に使って良いものかと悩んだ末と伝えられている。



・モログ

 帝国消滅事変にて魔族と刺し違える形で死亡。もう一人の英雄とは違って遺体がある状態にて国葬された。彼の強者であればあるほど弱者を救おうとする姿勢は、後の多くの英雄的人物に受け継がれる。

 後年、彼の弟子、もしくは血縁者を名乗る人物が複数現れたが、多くは眉唾ものであった。その証拠に彼らは小さな黒髪少女によって軒並み叩きのめされたという記録が残っている。



・アルティナ=フェイク=バレソン=ディーナ=モーデル

 モーデル王国の中興の祖。治安向上、外交の安定、新たな人材の発掘、税制と財政の改革を断行した人物。彼女が女王を務めた40年の間に同王国は大陸の実質的中心の地位を完全なものとした。また、エルフ族の都市である森都アルトリーリアとも関係性を急速に深め、新しい技術である列車網による陸路、飛空船による空路を導入開発し、人類全体の発展にも大きな貢献を行う。また、更に周辺国家の安定にまで寄与。東の雄、バアル帝国が魔族の手により実質消滅すると、暫定政府の樹立から旧帝国国土の分割による反乱分子の鎮圧まで主導し、その後の援助まで行った。このため彼女は3人いたという俗説が流布される事態に至り、今日でも一定数信じる者がいるほどである。が、退位後わずか2年の内に還暦にも満たず崩御というのは激務による消耗が原因と考えるのが妥当であろう。

 ちなみに崩御後、王国各地で彼女に似た人物を見たという目撃証言が多数存在するものの、高名な人物につきもののよくある生存説の一つと考えられる。更に余談ではあるが、彼女が退位した後のモーデル王国国王は4代続けて凡庸と言われ、さすがの彼女も後継者の育成だけは上手くいかなかったと評されている。しかし、彼女の功績の後ではどんな優秀な人物でさえ霞んで見えるとし、近年ではこの4人の王の功績を改める研究がなされている。



・リィズ=オルレオン=ワレンシュタイン

 前述のアルティナ女王の一番の側近にして親友であった人物。その仲はまるで実の姉妹のようですらあったと伝えられる。ただしこれは当時のモーデル王国内では完全に周知の事実であったらしく、彼女は周囲より依怙贔屓などと断じられぬよう率先してうまみの少ない、それでいて困難な役回りをこなすことが多かった。新設された治安維持機構『ケイサツ』初代長官を務めたのもこの1つであり、今ではあって当たり前となった同機構の有用性を当時の世に示した。

 しかし、女王と二人三脚の国家運営は当然に激務であったらしく、退位後わずか2年の内に崩御したアルティナを追うような形でその1か月後に本人も死去する。死因に不審な点は無く、中央の役目が終わるまでと長兄に任せきりだった自領の統治には最後まで関わることができず、ワレンシュタイン家で唯一、当主でありながらも領主を務めたことの無い人物ともなった。

 彼女も、本当は死亡していなかったのでは、という生存説が根強く残っている一人である。理由としては、死んだはずのアルティナ元女王に時折付き従っていた人物がリィズにも似ていたかららしい。しかし、その際には必ず黒髪黒装束の年齢不詳の女性に初老の男性も随伴していることが目撃されていることから他人の空似、もしくは虚言の類と推測されている。



・ランバート=グラン=ワレンシュタイン

 隣接する帝国からの脅威が文字通り消えた後は、当主としての責任をリィズに、領主としての役割を長男ロッシュフォードへとそれぞれに跡目を譲った。その後は半引退状態となり、ロッシュフォードが旧帝国国土の分割と安定のために貸し出された際にはその期間のみ一時的な当主代理として復帰するのみで、これ以降、表舞台での活躍は皆無とされる。人類初の王都から領都オルレオンまでを結ぶ列車路の建設をロズフォッグ家と共に支援、更に代替わりして彼の孫が当主を務める頃につながった空路の構築も、ランバートの功績とはされないことが一般的である。しかし、彼の残した多くの日誌や報告書は当時の風土や庶民の生活を知る貴重な資料として、後の世で学術的に高く評価されている。

 生体レベルも非常に高かったせいか大変に長寿で112歳まで生きた。玄孫(やしゃご)との釣りの際中に居眠りし、そのまま永眠したと伝えられる。



・スウェシア

 愛称としてシアと呼ばれることが多かった人物。こちらを本名と捉えていた人々も多かったようで残された資料の表記が一致せず、また更に伝説級の鍛冶職人として瞬間的に彼女の名前だけが売れた結果か彼女をかたる者は多く、その足取りを後の世で正確に把握することは非常に困難とさせてしまっている。

 一応の確定的な情報として、帝国消滅事変の後に5年ほどワレンシュタイン家に身を寄せ、軍の装備や設備の増強、改善などに尽くした。この時の働きの対価を元手にワレンシュタイン領で自身の店を開いたが、わずか数年で友人に譲渡。その後はモーデル王国の主要都市を転々としながら時に店を借り、槌を振るいその技巧を披露すると共に冒険者としても活躍している。民間伝承まで含めると彼女はモーデル王国以外も転々とし、遂には大陸の東の果てにまで辿り着いたのではとされているが、これら全てを含めると彼女は150歳近くまで生きたということになり、信憑性は低い。そもそも彼女が各地を転々としていたのは引く手数多であった貴族、領主、果ては複数の国家からの仕官への勧誘を躱す目的であったとされ、結局、彼女自身は正式にはどこにも所属せず、貴族籍を得ることもなくその生涯を終えた。

 彼女の子孫を名乗る人物は各時代、各地域に非常に多く存在し、中にはエルフ族までいる有り様で、彼女の学術的研究を遅らせる最大の要因ともなっている。彼女が製作、または製作に携わったとされる武具も無数に存在し、もはや真贋のしようもない。

 一方で彼女が造り上げた刀は数も少ないことから、熟練した専門家からすれば銘が無くとも指紋の如くに本人製作のものと解り易いとのことである。これは刀製作の黎明期にもう一人の高名な刀鍛冶職人モンド=トヴァリと共に携わったものの、その技術の継承や発展は彼に任せ、自分は自己研鑽に努めたいと自ら語ったと伝わっていて、直接彼女が指導した鍛冶職人がほとんどいないことが原因と言われる。彼女製作の刀はそのどれもが国宝級の扱いを受けているが、後年になればなるほど頼み込まれても余程のことがなければ刀製作は携わることすらも少なくなったという。これは結局、『龍と魔を斬った英雄』に贈った逸品には、使用した素材もあってか超えることはない、超えるつもりもないと考えた結果であるのかも知れないと考察されている。

 余談だが、モーデル王国の国宝『龍斬刀』も彼女製作の一振りではないかと噂が立ったことがある。本人が否定したにもかかわらずこの噂はかなり長く残り続け、後年に開発された年代測定用法器によって、彼女の生きた時代よりも更に数千年以上前の製作物であると判明し、ようやく決着した。しかし、数千年以上昔にさかのぼるとなれば下手をすると神話の時代にすらも手が届いてしまうため、新たな論争を起こす火種となった。




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