38 シルフィーユ様との茶会
叙勲祝賀会から数日後、イヴェル侯爵家の茶会に招かれた。
シルフィーユ様は有言実行のお方。
夜会で約束したことが早速履行され、今日は2人でお茶会をする。
私は招かれたことが光栄すぎて震えてしまう。
「えっ⁈婚約者のフリ?ユリウスとは何もないの?」
シルフィーユ様が呆れた顔をされている。
でもどんな顔でも美しい。
「ユリウスに呆れたわ。セレス嬢はそれでいいの?」
「私は既に婚約破棄された身ですし、我が家が伯爵家として落ち着くまで、クローディア公爵家にお世話になっている状況ですから」
「聡明で物分かりが良いのも考えものね。ユリウスはそこに付け込んでいるのだわ」
ユリウス様のことをこのように言えるのは、シルフィーユ様しかいないだろう。
「私はともかく、ユリウス様の方が困ると思いますが……。ユリウス様にはずっと婚約者がいないのですか?」
「そうなの。珍しいわよね。公爵夫妻は幼少に婚約者を決めようとなさったそうよ。婚約者選びの茶会も開かれてた。けれどユリウスが気に入った子がいなかったみたい」
「はぁ……」
そういえば、両親存命中に招かれたクローディア公爵家の領地お茶会にも、年の近い女児とその親が多く参加していたなぁ。
「ユリウスはあの容姿でしょう?子供の頃から女の子に囲まれてしまって。本人にとって嫌なこともたくさんあったのよ。だからどんどん無表情になって、特に女性を惹きつけないようにしていたの」
ユリウス様の無表情の理由がなんだか切ない。きっと相手に誤解されないように距離を取るためだったのだろう。
シルフィーユ様もそうだが、ユリウス様も美形でいらっしゃるので、自分の意思とは関係なく人を惹きつけてしまう。
色々ご苦労があったのだろう。
美しいのも大変だなと同情してしまう。
「けれど筆頭公爵家の嫡男がそれでは家が困るでしょう?そのため『ユリウスが学園を卒業するまでに自分で婚約者を見つけるか、見つからない場合は学園卒業後に親の決めた相手と婚約する』という約束をしたみたい」
「だから学園卒業間近のこの時期に、婚約者希望の令嬢が殺到しているのですね。
しかしながら、よくそんな約束ができましたね。公爵閣下は器が大きくていらっしゃる」
「ユリウスの祖父の前公爵様が、今の公爵様に口添えしたらしいわ」
お立ち寄り頂きありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
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