92.お騒がせ第13機関長
【教国】は一都市で一国を形成する特殊な形態の国だと聞いてはいたが、実際にその目で見てみると荘厳とでも言うのか、国の入り口の大広場からして文化的。
足元の石畳すら綺麗に複数の色のブロックが使われており、もし上空から見たらどんな姿なのか、想像するだけで自然と心拍が早くなる。
そんなぱっと目に入ってくる光景すら感慨深い筈なのに、さっさと【教国】の中心と見られる大きな城?何様式と言うかも分からない、中世ヨーロッパの成熟した文化を参考にした様な大層立派な建物に平気で向かって行く隊長。
止める間もなく、衛兵と見られる【兵士】に話しかけて困らせている。
「頼みがあるんだけど、キジンと第12機関長に会わせて貰える?」
「あ、ああ……申し訳ございません!どちらも守秘条項に関わるので、私では対応しかねます!」
「そう?じゃあ誰に聞けばいい?誰が居る?手が空いてるヒトでいいんだけど」
「多分機関長クラスの権限が必要になると思われますが、この場で面会予約をする場合、どの機関長もかなりの面会希望が続いておりまして……」
「なるほど?特殊な関係や権限か、事情がないと無理って事だね?」
「は、はい!お手数お掛けしますが、面会予約を取っていただけますか?」
「う~んちょっと待っててね」
【兵士】から離れて、こちらに戻ってくる隊長だが、出来れば無関係を装いたい。
「なんか、色々面倒みたい」
「まぁ、幾らなんでも顔パスは無理だと思ったぜ。真面目に働いてるヒトを困らせるのも悪いし、ここは素直に面会予約だけして後日また来ようぜ」
「ふぅ……俺は平気で武器持ってるヒトにあんな詰め方する隊長にドン引きだよ。逆に言うと本気で顔パスで勝手をしなかった事はほっとしてるがな」
「う~ん……折角来たし、潜入しちゃう?夜に窓とかから入り込めば行けるくない?」
「いやもう、絶対やめろ!」
三人で話していると、いつからそこに居たのかヌッと目立たない男が現れ隊長に注意した。
いやまあ、男の言ってる事はごもっともなので、もっとしっかり言い聞かせて欲しいが。
「あっ!第10機関長!」「蠍!久しぶりだな」
二人共知り合いだったらしい。
「ああ、本当にこのタイミングで帰って来て良かったぜ。あのな?隊長は第13機関長なんだから、潜入なんか絶対するなよ?普通に入ればいいんだからな?あとそっちの2人はこの一回指名手配された位じゃ、何にも懲りんどころか、平気で外法の感覚が身につくイカレた奴に影響されるなよ」
「当たり前だろ。俺が潜入するのはここで暴れる理由がある時だけだ。その時はまず氷精で窓を全部割る。大きな音で誘い出した所を……」
「やめろ!一応歴史ある建造物なんだ!絶対壊すな!お前が本気で【教国】に手を出さなきゃならないなんて事になったら、俺が最大限協力するから、絶対に窓を割るな!」
「俺はただの生産職だからこいつらみたいな乱暴な事はしないから安心してくれ。それよりキジンってのと第12機関長には会えるのか?」
「まともな奴もいるのか……そうだなどちらも秘匿情報ではあるが、第13機関長と例の件を解決した立役者が居るんだ。別に構わんついて来い」
蠍や第10機関長と呼ばれた男について、一番立派な建物に入って行き、やたら美しい彫刻や宗教画が天井や壁を華美じゃない程度に飾っている廊下を抜け、今度は全く飾り気すらない木製の欄干が続く通路を抜け、下をチラッと見ると明らかに業務中と見られる【教国】人達が忙しそうにしている。
明らかにこの国の裏側と見られる通路を上へ下へと移動し、自分がどこにいるのかも完全に判らなくなった頃に、いきなり現れる鉄製の扉。
「一応ブラックフェニックスが封印した改人とキジンはここに眠ってる。言ってみたら封印の間って所だな」
「出す訳にはいかないのか?邪神の化身復活とか言い出さない限りそう悪い奴らでもないだろ?」
「ふん、幹部勢はそれぞれ事情はあったかもしれんが、下っ端はそれこそまともに生きられずに力を求めた結果、改人になったような連中が大半だぞ?」
「まぁ、いきなり野放しは無理か。せめて改人から普通のヒトに戻せれば話も違うんだろうがな」
「それを第12機関長に研究させてるんだろ?全てあいつが元凶なんだから」
蠍とブラックフェニックスがそんな事を話しつつも、鉄扉の鍵を開けて、中に誘われる。
正直今外から扉を閉められたら大変な事になるなと思いつつ、薄暗い部屋の中に目を凝らすと一つボロボロになった和洋折衷な甲冑が転がっていた。
ブラックフェニックスがそれに近づく事から、これがキジンかと自分もよく観察する。
「パッと見どんな感じ?クラーヴンの手に負えそう?」
「コアになってる動力は生きてるな。あとは頭脳に当る部分なんだが……一応起動はしそうか?今の所キジンがキジンとして復活できるかは分からん。ボディについては……何をどうしたらこんな事になるのか分からんほど、ボロボロだ」
「すまん。こいつを止めるには破壊するしかなかったんだ。その上で封印をかけて何とか事なきを得たんだが……」
「それは別に仕方ないよね。頭脳部分さえ何とかなれば、一から体は作ってやればいいんだもん。あとはどうやってキジンのボディを作ったのか、第12機関長にちゃきちゃき吐いて貰おうか!」
なんとも楽観的な隊長と、己の手で破壊しつくしたロボを見つめるブラックフェニックスの対照的な雰囲気を眺めながら、キジンのコアが鉄人と同じ造りが全く不明の充填の必要のないタイプだと気づきつつどう報告したものか、一旦保留にしておくか?それが問題だ。




