81.協力要請
「よう!クラーヴン!頼みがあるんだけど!」
そう言って、何事も無かったかのように現れる虐殺魔の変人。
「まぁ、俺も片棒担いじまった事だし、今更否とは言わないが、今度は何しろって言うんだ?」
「詳しい内容はあとでお茶会の皆集まってから説明するけど【黒の防壁】に向ってくるであろう多勢を相手取って欲しいんだよね」
「はぁ?俺が戦闘なんぞ出来ないのは知ってるだろうが?しかも虐殺とかは嫌だぞ。幾らゲームで重症が精々だって言われても、気持ち悪いもんは気持ち悪い」
「ああ、そう言うだろうと思って、生産職チームには穏当な方法で大軍を降す作戦を考えておいたから!大丈夫!」
「ちょっと待て!生産職チームって!俺だけじゃないのか?」
「うん、クラーヴンとカーチとポーだけど?」
「いやいや、ちょっと待て、戦争にだな女子供巻き込むってのはどうなんだ?」
「ビエーラは『うちの狩場で好き勝手させないの』って言ってかなり殺気ビンビンに放ってたけど」
「まぁ、ビエーラはある種特殊なトッププレイヤーだから置いておくとしてな。生産職と【商人】合わせて3人で何しろってんだ?」
「安心しなって!本当に穏当に済むから!ご飯とお邪魔用の仕掛けと地面に潜る能力これだけで片がつく!」
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そんな事を言われつつ、引き受けた作戦が【黒の防壁】におびき寄せて食べ物で足止めしている内に砦ごと沈める作戦だった。
ちなみに特に作戦名はない。
MMORPGなのに何か別ゲームを一人でやっていると言う噂もある隊長だが、その得意技の一つが砦潰し。
呼んで字の如く、砦を敵ごと潰して壊滅させる異常者しか考えないようなやり口だ。
皆正面から剣と術で戦ってる最中、何故砦ごと潰せばいいじゃんとか言う鬼畜な発想が生まれるのか、是非生い立ちから説明してもらいたいものだが、まあ引き受けてしまったものは仕方が無い。
ここ最近隊長にやたら重機関銃の設置だのと頼まれていた所為か、無駄に設置能力が上がり、敵軍が通るであろう道にひたすら大木を倒して転がしたり、大岩を仕掛けたりして、邪魔をする。
その間にカーチには【黒の防壁】の下の地面を掘ってもらい、ある程度の所で切り上げてもらう。
邪魔オブジェクトの設置が終わった所で、今度は【黒の防壁】地下の補強工事だ。
これもここ最近地下道やら地下施設を多く見てきた所為か、何となく必要な行程は分かる。
地下を掘り進めながらガンガン補強し【黒の防壁】地下をスカスカの何もない空間にしていく。
ちなみに【黒の防壁】と言うのは、北にある黒の森から溢れる魔物を狩りとって一般市民の安全の為に機能してる砦だ。
当然そんな重要拠点を潰してしまえば、色々と問題が湧き上がるのは目に見えているのだが、隊長曰く。
「あそこはもうかなり古いし、一度立て替えたほうがいいよ。自分が色々手を入れてかなり居住環境はよくなったけど、ここで一発新築にすれば、より安全快適に黒の森の魔物を狩れるから、気にしないで潰して」
との事だ。
何を言っているのかよく分らないが、噂によると隊長は街や街道も作るらしいので、もうその辺はお任せしよう。
変人はどこまで言っても変人だ。隊長が建てかえると言うなら、本当にここに新たな砦が築かれるのだろう。
そんなこんなせっせと砦を潰す準備をしていると、ある日大軍が目の前までやってきた。
砦内にいるのは三人だけ。
ポーは【帝国】お茶会の一人の料理人、勿論戦闘能力は皆無だし、今は必死で大量のご飯を用意している。
カーチはいわずと知れた【商人】だが、脱出まではやる事がないので、ポーの手伝いとして、大広間のテーブルに片っ端から食事を並べている。
そして自分は完全にやる事はやりきったので、とりあえずカーチと一緒に食事を並べまくっている。
ちなみに隊長からはとにかく量を頼むと言われているので、並べ方は雑そのものだし、保存食の類もいっぱい積み込んである。
このあと自分達が逃げれば、誰もいないのに食事だけは大量に用意されているホラーのような展開になる訳だが、何故か隊長は敵兵は必ず砦内に入ってきて食事をすると言い切っている。
普通はそんなあからさまに怪しい場所に入りこまないと思うのだが、既に西側は食料が不足し始めていると言う。
先には民から食料を奪った事にキレてた筈の隊長は、思いっきり同じことをやり返していながら、
『ニュアンスが違う』
の一言で済ますのだから、やはり色々とネジとかぶっ飛んでるヤツなのだろう。
という訳で、食糧不足で苦しいところに大量のご飯があったら!
なんて言うドッキリ企画の様な状況で、敵の偵察が砦内侵入してきた。
すぐさま砦の隅の庭から、カーチのモグラちゃんの能力で穴を掘り、皆で地下に潜っていく。
はじめこそ、モグラちゃんの能力は単独で潜る能力だとばかり思っていたのだが、掘って穴を広げる事も出来たらしい。
よく考えたらモグラちゃんが機能を止めていた場所は、更に奥まで掘ろうとしていた形跡だったようにも思えるのだが、問題は掘った土はどこに行くのか……。
答えは簡単なようで複雑。
このゲームで破壊されたものは全て霊子に変わって一瞬光って消えていく。目の前の光景が正にそれ。
つまりモグラちゃんは土を掘って潜る事も出来るし、土を霊子に返す能力もあるという事だ。
ロボなのに中々ファンタジーな能力を持っている。
兎にも角にも後からつけられては困るので、土壁を崩しながら、どんどん進む。
ヒトが土を掘るスピードとモグラちゃんが土を掘るスピードでは圧倒的に差があり、あっという間に地下へ抜け、そして外へと向う安全な通路に入る。
そこで仕掛けを発動し、崩れ行く砦を後ろ目に【古都】へと引き上げて行く。




