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80.【古都】が攻められた日

 その日は妙に空気が重苦しく、いつもの曇天が一層分厚く圧し掛かってくるようだった。


 チラッと外を見たきり、室内でいつも通り鍛冶仕事をこなしていたが、胸騒ぎが収まらない。


 内乱の総仕上げ【古都】攻めの報があってすぐ避難するヒトもいれば、あてもなく留まるヒトも少なくなかった。


 一応、今回の内乱の趣旨として、政権交代劇であり一般市民に害が及ばないよう最大限留意するとなっているし、何よりゲーム内での事、あまり過激な表現はないだろうと自分は店に残留する事にした。


 総仕上げと言われるだけあって、現政権トップである筈の皇帝の支配地域は最早【古都】を含む周辺地域程度で、ほぼほぼ負け確定状態。


 ソタローと宰相の工作や攻め方が良かったのか、はたまた隊長帰還が遅すぎたのか、詳しい理由は分らないが、いずれにせよ自分がこれまでプレイしてきた【帝国】の環境が大きく変わる事を予感し、その最後を見届けるのも一興と思った次第だ。


 正直な所、民衆の大虐殺とか行われるなら、絶対に避難したし知り合い全員連れて逃げたろうが、今の所そういった事例は一つも無いようだし、ソタローなら間違ってもそんな事はするまいと思う。


 いや、仮にそんな事をしたらさり気なく【古都】に潜んでいるビエーラ、カヴァリー夫妻が黙ってないだろうし、寧ろ損になるだろう。


 そうこうしている内に響き渡る少女の声。


 何と言うか、まったく緊張感が無い。さすがは隊長の人選と言った所か?


 やる気が感じられなさ過ぎて、逆に煽りに煽っているのがよく分かる。


 噂では宰相側の攻め手の人数はこちらの防衛人数の数倍と聞いているが、こんな挑発して大丈夫なのか?


 いや、寧ろ挑発することすら作戦なのか?


 戦の事はよく分らないが、とりあえず戦いが始まるならと一旦作業の手を止め、親方と軽く一杯引っ掛けながら、戦況を音だけで伺う。


 少しすると、まるでヒトの根源的恐怖を掻き立てる異様な地響きが聞こえてくる。


 徐々にその音が地面の揺れと連動し、地震慣れした日本人の自分でさえ危険を感じるレベルに達し、ある瞬間ぴたっと止まった。


 その後も、なにやら少女の声は聞こえていたが、それどころじゃない。


 高まる鼓動を落ち着けて、ひっくり返った酒を拭く。


 他に被害はないか確認したが、まあ片付ければ問題ないレベル。


 何がなんだか分らないが、一向に進展も物音も無くどうしたもんかと親方と目を合わせているうちに、そろそろ阿空が飯を食いに来る時間かと、食事を用意する。


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 「ありゃぁ、虐殺だな」


 「まじかよ。虐殺だけはないと思ったのに……誰がやられた?」


 「敵兵だよ……ほぼ全滅に近い。【帝国】の上に行くほどヤバイってのは聞いてたが、あそこまでとはな。普段は飄々としてるくせに、ここぞとなったら手段を選らばない。まさしく鬼ってのはああいう奴のことを言うんだろうよ」


 「敵兵を虐殺?いや聞いた話じゃ向こうの方が戦力的に圧倒してるって……」


 「その筈だった。俺も死闘ってヤツを経験できると思って震えたぜ。だが、うちの大将の頭の出来は鬼か悪魔か邪神のそれだ」


 「大将ってのは隊長の事か?」


 「ああ……まず一手目に散々挑発して【古都】に引き寄せておいての雪崩だ。アレで敵兵の約2/3を生き埋めにしやがった」


 「雪崩で生き埋めって……あの揺れはソレか!しかし、俺も【帝国】生活長いが、雪崩は初めて聞いたぞ?」


 「よく分からんが、歴史を紐解くと雪崩を利用してこの都を防衛していたって過去はあるらしい」


 「つまり、大昔からあるギミックを利用して敵を削ったのか。まあ圧倒的不利な状況じゃやるしかないかもな」


 「だが、敵もまだ諦めなかったんでな。ほぼ同数か、やや向こうの方が戦力的には上、だがコチラには【古都】の壁がある。そんな耐久戦にもつれ込むかと思いきや……」


 「なんだよ。溜めるなよ。雪崩以外にもギミックがあったってのか?」


 「ああ、いつの間にやら【古都】の壁に据えつけられてた大量の高火力兵器で、隊列を組む敵兵を薙ぎ払った。何しろ【帝国】の戦術の強さは隊列と連動して【兵士】の能力を上げてる事で、集の力を引き出す所だと思うが、それを逆手にとって、隊列を組んだ所為で上手く逃げれる事の出来ない【兵士】達を皆殺しにしたんだ」


 「……その兵器って重機関銃とか言ってなかったか?」


 「よく知ってるな!射手の精神力をバカスカ食うらしく、次から次へと交代しつつ、精神力を回復する薬を飲みまくってたぜ!」


 やっちまったー!鬼に手を貸しちまったー!これで俺も鬼の仲間入りってか!重機関銃の威力は何となく危険な感じはしたが、まさか虐殺レベルとは思わないだろう。


 いや、しかしよく考えれば分かる事だったのか?タダでさえ雪に足を取られて移動が困難な地形の【帝国】であんなもの据え付けたら、そりゃ逃げ遅れた兵達がバカスカ背中から撃たれるのは間違いない。


 まあ一応現実と違って術武器なので、術には術で対応すれば無効化なり防御なり出来るはずだが、まあいきなりバカスカ撃たれて冷静に対応しろって言うのが無理だよな。


 「なぁ、どうしたんだ?オチがまだだぜ?」


 「その話にオチなんてあるのか?」


 「ああ、何しろそれでも命からがら逃げようとした指揮官とわずかな【兵士】達だがな。隊長が単独、敵が大河を渡ってきた巨大船舶を占拠して逃げ場を奪った挙句、一対一で敵将を討って、全員降伏させたんだよ」


 「何やってんだアイツ。完全な虐殺の上にトドメまで刺しに言ってんのか!」


 「何でもその船舶を交渉用に欲しかったんだとさ。んで、降伏した【兵士】達は生き埋めになった【兵士】を掘り返す作業に追われてるって訳」


 「掘り返すって、虐殺したんだろ?」


 「まあ重症で当分は病院から出て来れないだろうな」


 まぁ、そう言う所はゲームで良かった。

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