77.炊き出し
闘技の結果とレディの機嫌は上々、鉄人がまだ発展途上であるところから相手はライダーマスクと、レディがスポンサーをするにはやや物足りなかったようだが、内容としてはアレで良かったらしい。
寧ろ実験的な意味合いを含め物珍しい演出でそれなりにウケたので、今後の演出の参考になったと大量のお土産で好感触を示してくれた。
お土産と言うのは勿論尋常じゃない量の食料、しかも全部無料だった。
という訳で食料買い付けに来たにも関わらず貰ってばっかりだったが、レディ本人も周りのヒトもニコニコだったので多分裏はないだろう。
鞄いっぱいに食料を詰め込むと鞄の一スタックに99ケースの野菜なんかが入るので、もうなんて言うか業者並みの物量になってしまった。これで当分食料には困らないだろう。
と言う事で、それぞれ自分達が拠点とする場所に帰っていった。
ブラックフェニックスは自分に用があると思ったのだが、今回は顔つなぎだけでいいとの事。
なんでも多少時間がかかるかもしれない案件なので、内乱が終わったらまた会おうと約束して別れた。
カーチはMoDに一旦戻り、事後処理と今回の収入で出来る事が色々やる事があるからと、ちょっと忙しくなると言っていた。
天空戦隊は普通に【闘都】が今の拠点なので普通に残り、ライダーマスクと鉄人の闘技から色々とインスピレーションを受けたとか騒ぎながら都の雑踏に消えた。
そうなると、鉄人と2人ポータルで【古都】に帰ろうとしたが、内乱状況悪化による使用禁止となっており、途方に暮れてしまった。
全員別れた後に、帰り方が分らないから教えてくれとまた探しにいくのもしんどいし、どうしたもんか……。
やはり恥を忍んで、誰かに助けを求めるべきか?
「なぁ、これからどうするんだ?」
声をかけてきたのは阿空……存在感出さないから忘れてたけど、何でずっとついて来てるんだ?
「お前さんはどうするんだ?」
「金にも困ってないし【帝国】の内乱ってやつに参加してみようと思ってるんだが」
「物好きな奴だな。まあでも武者修行なら丁度いいのか?」
「どうだろうな?ただ【森国】も小競り合いはしょっちゅうあるし、身内の喧嘩は慣れてはいるな。その上で文化や戦闘方法の違う【帝国】の戦い方ってのを身につけられれば守護者としていい経験になるだろ?」
そして阿空と相談した結果、街道が整備されてるんだし馬車かなんか出るんじゃないか?と言う至極全うな意見から、馬車乗り場を探し、無事大河行きの馬車を見つけた。
邪神の化身というワールドクラスのボス戦中に整備されたという訳の分からない街道は本当に便利で、想定以上に早く大河に辿り着いた。
大河の渡し船を捜し、行きとは別の船頭に、料金を弾むので【古都】近くで降ろしてくれと頼んだら、快く引き受けてくれて、無事【古都】に帰還できた。
道中は阿空も鉄人もいるので思いのほか話も弾み、中々愉快な旅だったし収穫も多く、これからも偶には外に出掛けてみたいと思うには十分な結果だったと言える。
そして【古都】に入ると同時にヒトの行列が遥かに続き、どこを通り抜けて店に戻るかと最後の難関にぶち当たってしまった。
皆やや苛立ち気味でひたすら前を気にしているようだが、誰か状況を説明してくれるか、通り抜ける為に道をあけてくれないだろうか?
そんな中、列で大人に巻き込まれ転ぶ子供がいたので、助け起こす。
「す、すみません!」
どうやら親らしきヒトも一緒にいたので、丁度いいので状況を聞いてみる。
「いや、別にいいが、これは一体何の列なんだ?」
「これは炊き出しの列です」
「炊き出し?っていつの間にこんなに餓えたヒトがいっぱい増えたんだ?」
「徐々にですね。近隣の村や町なんかからもヒトが集まって、毎日炊き出しの列は大行列です」
「そ、そうなのか……」
「おい!前開いたぞ!詰めろよ!」
その時後ろに並んでいた男から、声をかけられ親子は少し進んだ。
これ以上、この場にいては列に横入りしようとしているようにも見えるだろうからと、さっと横切り、店に向う。
「親方!帰った!」
「おう!クラーヴン!食糧は買えたのか?」
「まぁ、何とかな……それより外は酷い事になってるな」
「全くだな。うちの近所はうちの蓄えで細々やってるが、それもいつまで続くかって感じだな。それよりそっちのは?」
「拙者阿空と申す者、武者修行の途中でクラーヴン殿にお世話になりました」
「んな、堅くなくて大丈夫だぞ?」
「いや、クラーヴンの師匠鉄のゴドレン殿と言えば、我が国でも一流の職人なら道具の一つも打って貰いたい、武人なら武器防具の一つでも持っていれば自慢できるお方だ」
「そうなのか?別に鉄製で良ければ何でも打つがな?とは言え最近は後進の指導が中心で腕がちっとばかし鈍ってるかもしれんがな!はっはっは!」
「まぁ、いいか。とりあえず阿空は武者修行の為に内乱に参加したいんだと」
「ふーん、じゃあ皇帝派はやめておけ」
「何故でしょうか?」
「まず負け確定の劣勢、そして食うモノがない。最悪だろ?」
「なるほど、ならば皇帝派につきます!」
「何でだよ!」
「劣勢につくからこその命ギリギリの戦いを味わい、また一段上を目指せると言うもの!」
「でも食うものもないんだぞ?」
「武家は食わねど高楊枝!それも修行!」
「とりあえずアレだ。どっちについて戦うかは好きにしたらいい、ただ飯だけはこの店に食いに来いよ。沢山手に入れたのは知ってるだろ?気にすんな」
「かたじけない!」




