75.噛み合わぬギアの軋みは魂の叫びか?
暗闇に迸る閃光が、バチバチと瞬く度に白線が目の内に残る。
明らかに暴力的なそれが、一つまた一つと全身鎧を着た異形の何かを破壊していく。
次から次へと起こる爆音に耳が慣れる頃には、リング上は火の海だった。
その中に一体佇む、また異形の何か。
「マタ 何モ 持タヌ 空ッポノ 哀レナ 鉄屑バカリ」
[静かに呟いたそれは誰がどう聞いても言語だが、どことなくたどたどしい]
[しかし、言葉を発するという事はこの異形にはきっと意思があるのだろう]
「くっ!これは一体どうなっている!貴様がやったのか!って言うか急に来いってどうなってんだ?」
[現れたのは通りがかりのヒーロー!ライダーマスク!日々の日課であるパトロール中に出くわしてしまった地獄絵図に動揺を隠せない]
「ソレガナニカ ???」
対して一切の心の動きすら見せない異形は静かにライダーマスクに振り返る。
「そ、それが何か?ってか?いやこれだけ大事になってるんだから、何かあったんだろうよ!」
[良くも悪くも普通の感性を持つ庶民の味方ライダーマスクは、未だ状況が飲み込めない]
「敵性ヲ 確認シタ為 破壊シマシタ」
「そ、そうなのか……え?じゃあ仕方ないのか?」
[何故これほどまでの破壊行為をする必要があったのか?一体何の為に戦う?]
「え?フォローされた?」
「約束ノ為」
「な、何の約束だ?」
「破壊 シナケレバ ナリマセン」
「何を?」
「ワカリマセン」
「いや、分らずに破壊するってどういう事だよ!そりゃ戦うのは仕方ないだろう。でも何でかも分らずに破壊するって、何考えてるんだ?」
「何ヲ 考エテイルカ ? ワカリマセン タダ 私ヲ 私タラシメルノハ 約束ガ アルカラデス」
[その台詞にあるのは絶対的な揺るがぬ使命と他者の入る隙間もない拒絶感、そのままその場を立ち去ろうとする異形]
「待て!お前の所業放っておく訳にはいかん!っていうか闘技場で戦わずにどっか行っちゃうの?」
「邪魔ヲ スル気 デスカ ?」
「無為に破壊するのをやめてくれさえすれば、俺から手出しはしない」
「無為デハ アリマセン 約束ガ アリマス」
「じゃ、じゃあせめて誰かに許可を取るとか!事情をちゃんと説明するとか!」
「無理デス 交渉ハ 決裂 シマシタ 排除シマス」
「クソ!やるしかないのか!」
[約束以外のモノを持たぬ異形の名を高らかに叫べ、ライダーマスク!正義の心を教えてやるのだ!]
「え?無茶振り?て、鉄人だから~あ~え~……揺るがぬ約束を持つ者『アイアンハート』!お前のその意志の強さはきっと弱気を守り悪を挫く力となる筈!道を間違えるな!」
[ライダーマスクVSアイアンハート Fight!]
小型のドリルランスを取り出し両手で構えるライダーマスクを、殺気すら発さずにじっと見つめるアイアンハート。
ライダーマスクの踏み込みに合わせ、左手を差し出すと……。
「雷撃砲 発射」
左手から迸るのは極太の雷撃の閃光。
尋常じゃない光を発して、地面を走りライダーマスクに襲い掛かる。
それを高くジャンプして回避したライダーマスクのランスが唸りを上げて高速回転を始めた。
しかし、ジャンプして避ける事は想定していたのか、一瞬の間も置かずに右肩の筒から、今度は広範囲の雷撃が迸る。
空中にいたライダーマスクもその放射に掴まり、痺れた様に微振動を繰り返しながら地面に叩きつけられた。
そこに更にもう一度、左手から太い雷撃が地面を走ってライダーマスクに追撃を加える。
だがライダーマスクも然る者、ドリルを地面に突き立て土精術を展開、土壁が電撃を阻む。
そして、作り出した壁をブラインドに軽量の特権である移動力の高さで一気に間合いを詰めた。
「うおーーー!これが正義の一撃!目覚めろ!アイアンハートーーー!」
ライダーマスクの魂の叫びが闘技場に響き渡るが、何故かその場に立ち尽くし、遂には膝をつく。
アイアンハートの右手から射出されたのは、キラキラと光る金属線とそこに繋がる針。
それが一斉に数本発射され針の一本を回避し損ねた事で、ライダーマスクは雷精デバフの麻痺を喰らってしまった。
動けないライダーマスクに今度は左肩の筒が向けられる。
発射されるのはタダの水のようだが、その威力が尋常じゃない。
「ウヴヴヴヴゥオワー!幾らなんでも無茶振りが過ぎるだろうがよー!!!」
軽量のライダーマスクはあっという間にリング外まで押し出され、あえなく敗北。
[勝者!アイアンハート!]
「正義ノ 心 ?」
[約束以外何もないアイアンハート!その鉄の体に心が宿る事はあるのだろうか?]




