74.ブラックフェニックスと買出し
「「「「ブラックフェニックス!」」」」
「邪神教団との戦いで相打ちになったと聞いていたのに!」
「世界を守る礎となるため、ヒト知れず邪神教団との戦いに赴いたんじゃなかったのか?」
「不死鳥は何度でも生き返るってそういう事なんでしょ?」
「ならば何故生きている事を教えてくれなかったんだ!はっ!まさか俺達がピンチになった所を助けようとタイミングを見計らってたんじゃ!」
何かさっきの研究職っぽい人が黒い全身鎧を着て帰ってきたら、さっきまで完全に空気だったヒーロー達が一斉に騒ぎ出した。
「はいはい、うるさいうるさい。取り合えず俺個人の伝手になるが大物【商人】に心当たりがあるから【闘都】に向うぞ」
そういうなり、ぷいっと【王都】のポータルの方に向うので、ついていく。
そして都内を歩いている間もヒーローたちはやたらうるさい。本当に何がスイッチになって騒ぎ出すか分からん奴らだ。
自分もブラックフェニックスと言うのは聞いた事がある。
何しろ現行最高火力を叩き出せるとされている使い捨て武器のフェニックスフレアボムの使い手であり、開発者かもしれないと噂の相手だ。
普通に使ったんじゃ自爆にしかならない異常な火力の爆発兵器を作り出し、邪神の化身討伐に大きな貢献をした事で生産職からは色々と噂になる人物が『騎士団』所属と言うのは初耳だった。
しかし、ヒーロー達がうるさいんだが?
「(ねぇクラーヴン?ブラックフェニックスってさっきの人だよね?)」
「(そりゃそうだろ?)」
「(だってヒーロー達、気がついてないよ?)」
「(あれじゃないか?そういうフリ)」
「(フリ?)」
「(ヒーローは正体を知られちゃいけないとか、なんかそういうルールあるだろ?だから気がつかないフリしてるんじゃないか?)」
「(そっか!じゃあ私も知らないフリしておこう)」
そしてポータルで【闘都】に飛ぶ。
【王都】と同様に人が多く賑わっているが、より猥雑として尚且つ騒がしく、祭りを髣髴とさせる。
普段から静かな都に慣れてる所為か、非常に雑然とした印象を抱くが、偶には悪くない。
カーチのモグラちゃんやモーちゃんが邪魔になるかとも思ったが、普通に馬車も行きかっているし、現地人は慣れたものの様にスイスイ避けていく。
そしてそんな都をブラックフェニックスについて歩くと、少しづつ道行くヒトが減っていく?
家に帰ったとか、危険な生き物に食われてるとかそういう話ではなく。
どうやら閑静な高級住宅街に向っているらしい。
一軒の白い花の咲く生垣が美しい御屋敷に辿り着くと、平然と門の中に入り使用人と思われるヒトに正面から用件を伝え始めるブラックフェニックス。
幾らなんでも、こんな大きな屋敷で働いてるヒトに用があるなら事前のアポイントが必要だろうし、急に来た所で何日か待たされるのがオチだろう。
それであれば一旦【古都】に帰るか【闘都】に宿を取るか、ちょっと迷っている内に庭先に通された。
白い花に囲まれて、白い品のいいテーブルと椅子が並べられた涼風の気持ちいいテラス席。
そこに若く見えるがオーラと言うか風格は尋常じゃない年齢不詳の女性が掛けていた。
「よう、レディこちらさんがあんたに用があるんだってよ」
「あら、はじめまして。そちらの可愛いお嬢さんはよく知ってるわ。そしてそちらの男性はゴドレンの店の鉄鍛冶ね名前はよく聞くわよ」
「それは、どうも話が早い。実は食料を買い込んで帰りたいんだが、伝手がなくてな」
「それはそうでしょうとも?普段食べる分について制限をかけてはいけない。これは法律で決まっている事だけど、大量に買い付けるとなれば、それで商売している【商人】の不利益になるかもしれませんものね?」
「ああ、確かにその通りだ。だが大量にと言ってもうちの工房とご近所におすそ分けできる程度あればいいんだ。別に商売を始めようとか邪魔をしようってんじゃない。内乱で食糧難だから売れるものがあれば売って欲しいってだけさ」
「ふーん、そうね~それが私の不利益になる事は知っているかしら?」
「いや、全く。もしそうなら悪かったと思うし、すぐにお暇するが?」
「つれないわね。職人さんだから仕方ないかしら……?こちらの手の内を話すなら、私は海運業を中心に事業をしているんだけど、そうなると必然【帝国】西部との取引が多くなるわね?」
「つまり、内乱でいう所の宰相派と手を結んでいるから、俺に売ると色々と取引先の心象が悪いってわけか。それなら紹介してもらったブラックフェニックスには悪いが、この話はなかった事に……」
「別に俺は迷惑してないし、何なら別の奴を紹介しよう。ちょっと癖があるし【商人】でもないから後回しにしたが、向こうなら俺の頼みを聞いてくれるだろう」
「ちょっと待ってくださる?別にあなた達に食料を供給しても構わないの。ただ私には私の要求があるって事」
「何をしたらいい?」
「本当に話が早いのね」
「碌な事じゃないから、切り上げて次に行こうぜ」
「まぁいいじゃないか。金を払えばなんでも買えるほど世の中甘くないってことだ。話を聞くくらいは別に構わないだろ?」
「本当に話がよく分る方で良かったわ。実は今私のガイヤが遠出していてね退屈してるのよ」
「ほら来た。金持ちの暇つぶしなんぞ悪趣味だし、付き合うだけ損するぞ?」
「俺は生産職だし、鉄鍛冶しか出来ないが?誰かの武器でも作ってやればいいか?」
「違うの……あなたの横のその鉄の子、闘技場で戦わせてみない?」
「構イマセン ヤリマショウ」
鉄人があっさりO.K.した事で、闘技場参戦が決まってしまった。




