69.クレーム対応
「ちょっと待て!何街中で喧嘩してんだ!」
「だって!沢山売れって言ったり、高すぎるって言ったり、文句ばっかり言って邪魔して来るんだもん!」
止めに入ると、既にカーチはかなりご立腹の様子で、これは一食触発だなと自分が引き取る事にする。
「あんたも、結局何が要望なんだ?子供に無茶な当たり方して、到底まともな用件とは思えないが?」
「あ?何だおっさん?客に向ってそりゃどういう態度だ?」
「悪かったな。俺はクラーヴン、しがない鉄鍛冶屋だ」
「ふーんおっさんの作品か、どれもこれもただの鉄……何を血迷って見本市なんてやってやがるんだ?」
「こっちは名乗ったのに、そっちは名乗らないのか。まあいい。俺の武器の見本市をやって何が気に入らないんだ?」
「こっちが聞いてんだよ?」
「答える義務はねぇ」
「あ~そういう態度か、客商売でそういうのはいただけないな~。クラーヴンつったか?どこに店出してんだよ?あ!隠しても無駄だからな?手間がかかるから素直に吐けよ」
「【古都】だ。別に隠す必要もねぇ」
「は!辺境ど田舎の鍛冶屋かよ!道理で質が悪いと思ったぜ。田舎もんがよ~あまり粋がってっと……」
「何よ!お前なんかただの馬鹿じゃん!ばーか!ばーか!クラーヴンの武器の凄さもわかんないクセに!」
「邪魔すんな餓鬼が!」
男がカーチを突き飛ばす。幸い街中のお陰かダメージ判定はでなかったが……。
「敵性勢力ト 認定シマス 排除開始」
鉄人のスイッチが一番最初に入ってしまった。ロボの理性的な判断どこにいった?
そしてカーチの命令もないまま、不穏な振動が地面の下から聞こえ、さらに会場を仕切るパネルの一枚が吹き飛び、ブルドーザーが突っ込んできた。
そのまま男を排土板で押し込み、一直線に街の大通りのど真ん中を駆け抜けていく。
幾らキャタピラで車輪ほどスピードが出ないとは言え、相当の力で押されっぱなしの男は足の踏み場を失い、押されるがまま。
暴れれば、下に落ちてキャタピラに踏まれるという位の分別は働いているのだろうか?
そしてそのまま、街の外に出た瞬間男の下からドリルが突き出し、先端が突き刺さらないように必死で男は掴まっているが、もしちょっとでも回転したらどてっ腹に大穴が開くだろう。
自分とカーチ、鉄人、その他ぞろぞろと野次馬が付いてきたが、さてどうするか?
「何でこんな事したの!」
「こ、こんな事って、お前らがしたんだろ……」
男は震え声で必死に抵抗するが、それが余計にカーチの癇に障ったようだ。
「ちーがーう!なんで難癖つけたのか聞いてるのに!何でそんなに馬鹿なの!モグラちゃん!」
カーチが叫んだ途端、モグラちゃんのドリルがゆっくりと回転し出す。
「待て!待ってくれ!待ってください!助けて~!!!」
男は掴まるのもやっとの様子で、本気で震え、半泣きで助けを求めている。
「助ケマセン 敵ハ 排除シマス」
鉄人は雷撃砲を構えて、いつ地面に落ちてきても止めを刺す準備は万端だ。
「カーチ、一旦止めて頂戴。話を聞くから」
そう言って間に入ってくれたのはマリー、正直自分より冷静に見える。
何しろこの状況、ちょっと楽しんでいたし、何ならプレイヤー相手に機械人形がどれ位やれるのか興味あったので、止める気も全くなかった。
「な、何でも話す!だから助けてくれ」
「助けるかどうかは、あなた次第です」
「ああ、何でも聞いてくれ!」
「カーチ、回せ」
「え?クラーヴン?」
「いいから、回してやれ」
「ちょっ!何でだよ!何でも話すって!」
「聞いた事しか答えないとか、そんな温い事で助かると思ったのか?正直【帝国】ってのは厳しい土地でな。【帝国】を馬鹿にしたプレイヤーを五体満足で返したら、俺の方が何されるか分らん。正直お前のような子供にまで馬鹿にされるような奴は目じゃないんだ。白い黒神に首狩りライダーに脳筋将軍から集団戦最強まで、化け物粒揃い、しかも全員情け容赦無しのキレた奴らばかり、俺のようなしがないど田舎の鉄鍛冶屋じゃぁ、逆らえん。死んでくれ」
「いや、待てって!本当に何でも話すから!」
「頼む!死んでくれ!」
「助けてください!だずげで~!」
そこで、カーチの指示でモグラちゃんがドリルの回転を止める。
正直プレイヤーなのだから、死に戻るだけだと思うのだが、やっぱり目の前にデカイドリルがあって、ちょっと手が滑ればドリルに貫通されると思えば、そりゃ怖い。
幾らアバターのゲーム世界だって、ドリルに貫通されて死ぬのはちょっとやばすぎる。
とりあえず、あとの尋問はカーチとマリーと一緒に来てくれた黄色いヒーローに任せて自分は砥ぎに戻る。
正直、この程度の小者は興味ない。
自分が興味あったのは、デカイドリルがどれだけプレイヤーに影響を与えるかだけだ。
泣いて許しを請うなら、威圧感もまあ上々と言う所、今後はもっと凶悪な武器を装着してもいいかもしれない。
そう、例えば一本ドリルじゃなくて、複数ドリルの装着とか、剣がいっぱい付いた板を二枚用意して、プレスするマシンなんかもいいかもしれない!
頭のおかしいクレーマーのおかげで、凶悪な妄想が止まらず、同時にニヤつきも隠せない。
きっと今の自分は満面の笑みで微笑んでいる事だろう。




