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61.原初のヒト

 途中に寄った村も町も似たような状態で、飢餓に倒れるヒトこそいないが、食料が心許ない事は共通している。


 何なら、今年は珍しく豊作だったにも関わらず、食料品が高く売れるからと全部売ってしまった農家は、離農して宰相派の【兵士】になったとか、そんな噂もあった。


 そしてもう一つ、どうやらカーチも帰り道にいくつかの村や街に立ち寄ったらしく、他国で食料を買い付けてくると言っていたらしい。


 基本的に武器商人だし、武器の素材やなんかには伝手もあろうが、食料品をどこから買い付けてくるのか?


 子供の安易な正義感か、はたまた根拠のあることなのか?


 何だかんだこのゲームの正式サービス直後から【商人】として積み重ねた信用やつながりは甘く見ていいモノではないだろう。


 そうなるとカーチも忙しくなるか……。


 内乱も徐々に本格化してキナ臭い感じもするし、ここはちょっと久しぶりに引き篭もるべきか?


 我関せず。


 碌な言葉じゃないが、まずは自分の身を守るのが第一。


 世の中には他人の心配を他所に平気でおかしな方向にずんずん進んじまう奴もいるが、自分には出来ない事だ。


 じゃあ自分に出来る事は?


 まずはカーチの機械人形を修理修復して動けるようにする事だ。


 食料を買い付けてくる武器商人に新たな仲間を付けてやる事、それが最優先だろう。


 やる事がはっきりと決まった所為か、足場の悪い雪道も足取り軽く。


 気がついた時には【古都】に辿り着き、一直線に工房へ帰った。


 「おう!帰ったなクラーヴン!なにやら悪い噂ばかり聞いてたから、心配したぜ」


 「そりゃ悪かったな。俺の方は上々の結果だったが、親方の方は変わりなかったか?」


 「おう!強いて言うならあちこちで食糧不足が始まってて、うちもあまり大っぴらに匂いを撒き散らしながら料理できなくなっちまったくらいか」


 「それは面倒だな。それでうちの食糧事情はどうなんだ?」


 「何言ってんだ酒と飯の備蓄だけは完璧だぞ。そもそもこの寒い気候のおかげで食料保存しやすいし、最悪ソーセージと燻製肉とチーズと酒で生活できるしな」


 ふむ、予想通りと言えばそれまでだが、親方がドワーフで良かった。食う事と飲む事にかけてはきっちりしてる。食べ過ぎる事を除けば。


 寧ろ食べ過ぎる事前提で大量に貯蓄してるので、こういう状況には強いとも言える。


 さて一安心したし、匂いを撒き散らさずに作れる飯といえば、何がいいか考えていると……。


 「大変だ!親方!あっ!クラーヴンも帰ってたのか!ゲフッ」


 クラームが店に飛び込んできて、勢い余ってカウンターに激突する。


 「何やってんだ?危ねーだろうが!工房内じゃ落ち着いて行動する!安全第一」


 「あ、安全第一」


 親方の拳をくらいながら復唱するクラーム。


 大怪我する前にきっちり駄目な事は駄目とはっきり教育を受ける。愛の鞭と言う奴だろうが、おっさんがおっさんに対して愛とか言うのは恥ずかしいので黙っておく。


 「それで、何をそんなに慌ててたんだ?」


 とりあえず、水を一杯持ってきて、クラームの話を聞いてやる。


 「そうだ!凄いぞ!原初のヒトが見つかったんだ!」


 「ふーん?それで?」


 「それでって……?」


 「ああ、クラーヴンは原初のヒトを知らんのか?」


 クラームとの会話があっさり終わってしまったので、親方が後を引き取ってくれた。


 「俺の勉強不足か、聞いた事無いな」


 「いや、一般常識っつうか、子供の頃に聞くおとぎ話っつうか?」


 クラームの言う事は非常に曖昧だ。そんな曖昧な情報に大慌てでカウンターに激突するんだからそそっかしい奴だ。


 「原初のヒトってのは神の尖兵として生まれた最初のヒトで、高い知性、高い戦闘力、高い技術、気高い精神を持ち、ヒトの身でありながら邪神の化身を遠い昔に撃退したと言われている種族なんだ」


 「なるほどな。大昔にあった本当の話として伝えられてる伝説の種族が見つかったと」


 「そういう事だろ?」


 「ああ!何か突然ポータルが繋がったらしい!そこはずっと夜の様に暗く、透ける様に白いと言われる原初のヒトの顔も青黒く見える程なんだって!」


 「ふーん、暗い所に原初のヒトが住んでたと、そして何が原因か知らんがポータルが急に繋がった。それで?」


 「個人的には失われた古代の技術に興味があるな。射撃武器が得意だったらしいとは言われてるんだが、弓とはまた違った武器だったともされてるんだ」


 「さすが親方!クラーヴンみたいに、すぐそれで?とか言わねえ!凄い事だよな!エルフとか会ってみたいよな!」


 「あ?原初のヒトってエルフの事だったのか?確かに遠距離武器とか術とか得意そうなイメージだが、弓じゃない射撃武器が得意って何を根拠にしてるんだ?」


 「そりゃ、世の中にゃヒトなんて到底及ばないほど長生きの生き物なんて幾らでもいる。例えば樹なんかはその代表だな。動けない代わりにやたら長生きで、本当に何でも知ってる。縁があれば他にも神に変わり世界を守る存在と出会えることもあるだろう」


 なるほどね~、片や内乱、片や原初のヒトが見つかる。


 ゲームの世界も随分と激動の時を迎えているようだ。

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