59.一旦帰還
カーチが土の下から見つけてきたロボの残骸は一旦しまい込み、この先どうするか考える。
「3択なの。1.帰る 2.回り道を探す 3.ログアウトできる場所を探す 引き返すならそろそろリミットだし、回り道を探してこの先に賭けるのも一つなの」
「全テ 可能デス」
鉄人曰く全ての選択肢に問題ないらしい。相変わらず情報が小出しのロボだが仕方ない。
「全て可能ならもう一つ聞きたいんですけど、この近くで地上に出られる道はあるのかな?」
「記録ニハ 存在シマス」
つまり、一旦帰還して次回はこの近くから探索を始める事も出来るわけか……。
正直な所、自分はそれもありだ。
何しろ霊子分解装置の修繕もまだ途中だし、カーチの新機械人形も直してやりたい。
下手に【古都】に戻って内乱に巻き込まれるのは御免だが、やはりロボの修理は慣れた親方の工房『ゴドレンの店』がやりやすい。
「じゃあ泊まれる場所を確認してから、時間があったら外に出れるかも見てみたら?」
「そうするとしようか、地下道探索の続きはまた次回に取っておこう」
と言う訳で、鉄人の案内で相変わらず壁と区別のつかない金属扉を開いて地下道の壁に入りこむ。
そこは結構だだっ広い資材置き場と見られる空間。
鉄ラックが並び埃をかぶった道具やら材料やら残っている辺り、やはりヒトも手を使って作業していたのではないか?と思われる。
単純に機械文明のヒトが直接武器を持って戦う事をしなかっただけじゃないか?と言うのが今の自分の予想だが、今後どうなるかは分からない。
床すら分厚い金属格子で出来ていて、よく見ると底の方に水が流れている。
水漏れしている壁があったくらいだし、やはり水源に近い場所を通っている地下道なのか、はたまた雪解けの水が流れる地下水路でもあるのか。
奥には休憩用と見られる部屋があり、やはり金属のベッドと簡単な調理場が併設されている。
とりあえず、ここでログアウト出来ると分った以上、次は外に出られるかどうかだ。
「まだ時間あるし、外に出られるかどうか確認するチームと、料理して待つチームで分かれるか?」
「そうするの。私は見てくるからクラーヴンにご飯はお任せするの」
言うが早いか、鉄人を連れてカーチとビエーラはどこかに行ってしまった。
「カヴァリーはいいのか?」
「多分ここはセーフゾーンだと思いますけど、何があるか分かりませんから護衛兼食事係ですよ」
ふむ、それじゃあと男二人で手分けしてログアウト前の食事の準備をする。
「今日はちょっと薄味の物が食いたいな。確か貰った米があったし、炊いちまうか」
「じゃあ、僕は蕪と魚のすり身が有ったのでそれであっさりとした煮物でも作りますよ」
「いいな~カヴァリーの料理センスは優しい味が多いな」
「そうですか?出汁をもう少し上手く取れればいいんですけど、まあ趣味程度ですよ。それよりクラーヴンは手際がいいし、迷いもないのは毎日大量に捌いてそうな雰囲気ですけど?」
「まぁ、現実の方でちょっとな。まあこの分なら女子二人も文句を言わない程度のものはできそうだな」
「ははは!別に文句なんか言わないじゃないですか。なんなら隊長の濃い味男料理だろうと、ソタローの初心者が計量通り作った感じの食事だって文句言いませんよ」
「あ~あいつらはな~戦闘こそ得意なんだろうが、料理をするには繊細な感性が足りないな。隊長は何となくで、それっぽくやっちまうし、ソタローは根が真面目なんだろうな。何かはみ出さないな料理も」
「その真面目なソタローが、内乱なんて起こすんだからゲームの世界もよく分かりませんよ。内乱なんてコンテンツが有った事自体驚いてるのに、その中心にプレイヤーがいるなんて誰も予想しませんって」
「まあな……そう言えばカヴァリーはこのロボクエストいつもついて来てくれるが、ロボは欲しくないのか?」
「欲しくないと言えば嘘になるでしょうね。ただカーチを見ていると縁みたいなのが有りそうじゃないですか」
「なるほどな。相棒になるロボとの出会いを待ってる訳か」
「カーチはこのクエストに組み込まれてそうですけどね」
「組み込まれてるってのは?」
「クラーヴンは戦闘職じゃないからこのゲームのクエストの雰囲気がちょっと掴めないかもしれないですけど、いつの間にか巻き込まれて、ルートを選定されてるんですよ。その中で自分の行動が分岐になるみたいな」
「あ~隊長が前に指名手配になったのも、クエストの一環だってやつだろ?カーチも巻き込まれてるってのは何で分るんだ?」
「何となくですけど、これまで全く戦闘手段を持ってなかった子供に戦闘手段を与えようって言う運営の意図を感じるんですよ」
「だから、アレだけ壊れたロボを平気で見つけ出すってのか?」
「そうじゃなきゃ、あんなピンポイントで地面掘り返したりしませんよ」
「それはそうだな。じゃあこのクエストは実はカーチのものだったんだな。まあ俺はその方が気楽だし、助かるがな。まぁ精々少しでも性能のいいボディや武器を作ってやるだけさ」
そんな事を言っている内に程よくご飯が炊け、味噌汁とは行かなかったが貝の汁物も出来た。
カヴァリーの作った蕪と魚のすり身の煮物も案の定優しい味に仕上がってるし、さっさと帰ってこないかな?




