56.水溜り
一時休憩が終わり、今日はもう少し進んでみようかと言う話になった。
何しろ休憩出来る施設があるという事が分ったというのが大きい。
この後も、類似の施設は点在するらしいので、まずは今の警備室を拠点に最悪時間までに戻ってこれる範囲で進むと言う事でまとまった。
そうと決まれば、早速暗い地下道に踏み出す。
お腹がいっぱいな所為か妙にアグレッシブな気分になり、先ほどまでの不安はどこへやら、自然と進むスピードが上がる。
とは言え、歩速はモグラちゃんやビエーラ合わせなのでそこまで早くない。
と言うか、ビエーラは実は結構足が遅い。
防具こそ防寒対策ばっちりの軽装だが、武器がひたすらに重い筈だ。
伊達にプレイヤー最長射程のクロスボウを使っていない、持ち上げるだけでも相当な筋力が必要なら、矢をセットして弦を引くだけでも、使い手を選ぶロマン武器の具現化。
射程と物理威力のみを追求した為、フルメタルなクロスボウなのだ。
そしてその重量すら一流のビエーラを載せて二人乗りで、駆け回るカヴァリーとカヴァリーの騎獣シェーベルと言うのはちょっとおかしいというのも自然と知れてくる。
まぁ、今はカーチと言う子供も連れているし、全力ダッシュで飛ばす場面じゃない、ゆっくり余裕をこいて地下道を進めばいいのだ。
ついでに新型のドローンが出てきたら、ばらして調べ尽くせれば尚いい。
慣れた作業でドローンを駆除しつつ、進んでいると前方の床の色に違和感を覚えて、全体止まれ!
「なんだろうな。ここまで水溜りなんかなかったよな?」
「まあ地下道ですから、水の多い場所もあるんじゃ?」
「多分違うの、何かトラップの匂いがするの」
「(くんくん)する?」
適当なパーツをアイテムバッグから一個出して、水溜りに落とす。
すると、金属パーツがバチバチと音を発て、一瞬で塗装が剥がれるように銀色の表面が黒く焦げて酸化していく。
「漏電トラップですか……普通電気エフェクトとか出てそうですけど……」
「あれなの。唐突なリアル嗜好なの。現実の漏電で怪我しない様にとか、そんな所だと思っておくの」
「この水に電気流れてるの?」
「多分な。はっきり見えないって事はダメージかデバフを貰う程度なんだろうが、先に進むにはこの辺にあるギミックを操作する必要があるだろうな」
散開し、周囲の壁を調べていくと、鉄人が壁の一部を開く。
調べる前に一事言ってくれればいいのに。
壁の奥には何となくイメージ通りの機械室、多分発電所と言うかエネルギー供給所か?
まあでも漏電しているという事は雷精エネルギーを使用した施設が有るのは間違いないだろう。
一体何からエネルギーを作り出しているのか、気になって仕方ないのだが、ここは一旦その欲望は抑えて狭い機械室奥に入り込む。
足元に十分注意して、奥の突き当りまで進むと、壁の一部が割れて水が染み出している。
「経年劣化って感じだな。水を止めて乾くまで待つか、ここの施設のエネルギー供給を止めるか」
「こっちにクレーンがあるの」
「クレーンで何しようってんだ?」
「水の上越えられない?」
ビエーラとカーチは機械室の中二階に進み、そこで指し示す方には確かにクレーンがあり、太いケーブルが水溜りの上まで降ろせそうだ。
「何かに使えそうだが、越えるにはこれだけじゃ足りんだろう」
「じゃあコレですね」
と言いながら、カヴァリーが足場に使えそうな長い鉄柱を見つけていた。
現実なら一人で持つには危険そうなサイズと重量だが、ゲームの補正があればどうと言う事はない。
「ふむ、じゃあクレーンで水溜りのヘリにケーブルを下ろせるか?」
とは言ったものの、よく考えたら<機構>や<機工>を持っているのは自分だけなので、使い方は自分が確認せねば。
操作盤を探し、慎重に動かしていくと、水溜りのほとりに無事ケーブルを下ろせた。
ビエーラがあっさりと鉄柱を持ちあげ、表に持って行きワイヤーの下に置く。
そこに手持ちのワイヤーやケーブルで補強しつつ、つなげて再びクレーンを操作する。
水溜りの上に鉄柱で一本道を作ると、早速カーチが恐れ気もなく渡って行ってしまった。
すぐに追うようにカヴァリーも反対岸に降り立ち、自分が機械室から出た時にはビエーラも向こう側にいる。
ちなみに鉄人はホバーでささっと水の上を飛び越えてしまった。
残るはモグラちゃんと自分だけ。
唐突にモグラちゃんのドリルが高速で回転し始め、地面に潜り始める。
少しすると反対側から出てきた。
舗装された床も潜れるのかと、呆気に取られていると。
「早くクラーヴン!」
カーチにせかされてしまったので、鉄柱を渡る。
このパーティでも特に動くのが苦手な自分には、中々一本道を渡るってのはハードルが高いのだが、
吊っているワイヤーケーブルを伝うように、ゆっくりと渡りきった。
鉄柱を降りて最初に目に付くのは、動きを止めたドローン。
何となく攻撃的な装備のそれを見て思う。
「この漏電トラップでこいつらが堰き止められていたのか?」




