53.輸送路
最低限の灯りはありつつも、やはり薄暗さを感じさせる通路を進む。
ファンタジー世界から機械世界の基地、そして薄暗い現代的なトンネル風通路。
こう世界観がぐちゃぐちゃと入り混じると、TRPGの某SAN値ゲームを思い出すのは自分だけだろうか?
絵柄やイメージは大分違うのだが、何かヤバイモノの意思に導かれているかの様な、本当に自分の意思でこの道を進んでいるのか、分からなくなる感覚。
行く先には直角に折れる道がある。
あそこを折れた瞬間に異形の化け物が現れるのか?聞き耳ダイスロール!
「クラーヴン!」
「うおっ!なんだ急に!」
「全然急じゃないの。いきなりしかめっ面になって脂汗かいてたから、お腹でも痛いのかと思ったの」
「いや、そういう生理現象的なものはちゃんとゲーム側から警告が入るだろ?確か脳波をチェックしてるとか何とか」
「じゃあ、なんでそんな変な顔してたの?」
「そんな変だったか?」
聞くと、皆一様に頷く。特に反応しないのは鉄人とモグラちゃんだけ。
「モグラちゃんも心配してるよ?」
モグラちゃんは反応していたらしい。
「まぁ、なんだ。薄暗い一本道を歩くと色々妄想が沸くだろ?特に目の前に折れる道があるんだ。道角ってのは何が起きるか分からない」
「食パンかじった女の子が走って来たりとか?」
「カーチはその年齢で随分古いテンプレ知ってるんだな」
「お婆ちゃんの漫画にあった」
「そうか~カーチからしたらお婆ちゃん世代か~」
そんな事を話している内に異様に高まっていた緊張もほぐれて、平常心で道を曲がるとそこは……。
「駅ですかね?荷卸場にも似てますけど、明らかに駅のホーム位の高さがありますよね」
「鉄人!もしかして坑道につながってる地下道って、大型の輸送車両で一気にここまで持ってきてたのか?」
「ソウデス ココデ コンテナノ 入替ヲ シテイタ 記録ガ アリマス」
貨物用地下鉄でも走っていたのだろうが、ホームらしき場所の下に線路は敷かれていない。
線路無しでも地下道を事故らず走れる車両があったって事だ。全くどういう技術力なんだか。
同時に、ここから例の坑道まで、直線距離でも日数がかかる事を思うと、ちょっとぞっとする。
「……こりゃ当分【古都】に帰れない事も覚悟しなきゃならんな」
「そうですね。まぁ、元々坑道に続く道とは聞いてましたからね。準備はしてますよ」
「そうなの。騎乗動物に乗るか、騎乗動物並みに移動力を鍛えてなきゃ日数かかるのは分りきっていたの」
「でも、ずっと地下だと何か大変そうだね」
皆沈黙してしまう。やはり人間、空が見えないというのはストレスがかかるもの。
いつでも外に出られる状態なら、寧ろいつまでも家に居たいくせに、いざ地下に閉じ込められるとなると息苦しさを感じる。
何ともわがままな生物だ。自分を含め、ままならない。
「…… 現存スルカ 不明 途中ニモ 拠点ハ 存在シタ 記録ガ アリマス」
「それを言っておいてくれ。上手くすれば外に出られるって事じゃないか」
「いや、もしかしたらもっと目新しい技術や情報が手に入る可能性もありますよ」
「確かにそうなの。ここは強襲艦に積む兵器製造所とか倉庫だったと思うの。もっと日常に使う物とかヒトが使う武器が残ってるかもしれないの」
「もしかして、ビエーラ……アンチマテリアルライフルとかあると思ってないか?」
「ないの?」
「多分ないんじゃないか?今の所炸薬式銃ってないだろ?多分このゲームでは銃ってのは術系武器の事だぞ?」
何も言わずに、顔だけでショックを受けるビエーラだが、実弾銃だってエアーガンだし、自分が作った榴弾発射機の弾だって、元々プレイヤーが勝手に手榴弾と読んでる手投げ爆弾だ。
しかしこれも火精と風精系の材料を組み合わせて作ったものだ。
そしてビエーラはゴリゴリの物理スナイパー。
超射程単発物理火力とかいう脳筋仕様である以上、術系武器とは余り相性が良くない。
何なら、ビエーラが術を使っている所を見た事がない。
あくまでスキルと武器火力とアタッチメント変更で戦闘方法の切り替えがメインなのだ。何ならあえて精神力を使わない事で制約をかけて物理威力を上げているのか?
あまり他人のスキル構成を詮索するのもマナーが悪いし、これ位にしておくか。
しかし、大昔のヒトの武器と言うのは自分も興味ある。
特殊鋼材の剣や、あるなら高周波刃なんかも見てみたい。いや、やっぱりアレかビーム!
機械世界ならありそうな、ビーム兵器!もしくはブラスターもいい!当った者を一瞬で燃やす火精と陽精の複合武器なんかどうだろうか?
夢が膨らんできた!
脳一杯の夢を抱きつつ、地下道を皆で歩いて行くが、あっという間に暗くなる。
どうやらこちらまではエネルギーが来ていない様なので、カンテラを灯して進む。
時折、水溜りがあるのは、老朽化した壁から地下水がもれ出ているのだろうか?




