49.お茶会と内乱
「悪い!俺はやっぱこういうの苦手だわ」
いつもの【古都】の一軒の小さな料理店、客もいつもの顔ばかり、席を立って宣言するのは『嵐の岬』のアンデルセン。
人付き合いがよく、やたらコミュ力のある男だが、何故か好き好んでこんな僻地の【古都】のコミュニティに参加する変人。
そんな奴がわざわざ立って宣言するのは、内乱の件。
「アンデルセンの性格ならそう言うと思ったの。巻き込まれない内に【海国】に戻るの」
ビエーラはあっさりとアンデルセンの宣言を受けたが、それはそれでちょっと寂しそうなアンデルセン。
何しろとても狭い【古都】のコミュニティの数少ないメンバー達は何だかんだ長い付き合いだ。
メンバーなんて言う程ではないが、一応名前を挙げるなら、
・超射程スナイパー奥様 白い黒神ビエーラ
・その旦那 首狩りライダー カヴァリー
・軍師? 永遠不変のNo.2 アンデルセン
・運営主催料理イベント優勝経験者 「得意料理は?」「なんでしょう?」 ポー
・隠れた皮革布装備作成の達人 コミュ症小動物 コージァ
・圧倒的ウエイト&パワー 脳筋将軍 ソタロー
・NPCよりNPC地味すぎるのに噂だけ一人歩き 集団戦最強 隊長
そして、普通の鉄鍛冶自分って感じか。
まあそんな自分以外は一癖二癖どころじゃない奴らばかり集まって、時折情報交換と言う名の駄弁り会をしている。
そして当然ながら今話題の中心は内乱である事は、仕方ない。
何しろ渦中の中心にいるのが、お茶会メンバーの一人ソタローなのだから、助けてやるのか、協力してやるのかそこはハッキリしておかねばならない。
そして、アンデルセンは性格上あくまでゲームをエンジョイしたいタイプだ。
魔物相手なら幾らでも無理をしようモノの、昨日まで仲間同士だった【帝国】人NPC同士やプレイヤーが戦うのを見てられないということだろう。
元々嵐の岬は大型魔物を倒す事をメインにしたクランだし、趣味じゃないのもよく分る。
そもそも大掛かりなヒト対ヒトの戦争なんてものはゲーム始まって以来の事だ。
多分、アップデート要素なのだろうと思うが、このゲームでよくあるのが、実験的なゲーム内イベントだったりもする。
未だフルダイブVRゲームと言うのはこのゲーム一本、国の認可を受けながら少しづつ進化している最中だ。
そして参加者達は本当にランダムとしか思えないほど、バラバラ。
カーチのような子供こそ本当に稀な例ではあるが、全員共通なのは日本人かまたは日本語ネイティブと言う事くらいだろう。
さて、その内乱だが、プレイヤーも参加可能ではある。
アンデルセンは不参加表明と言う事で、さっさと【海国】に引き上げてもらおう。
「ビエーラとカヴァリーはどうするんだ?」
「今の所参加する気ないの。そもそも何で戦争するのか意味分らないの」
「僕も今の所は無いですね」
「二人共今の所って事は、行く行く参加するんだろ?」
帰っていいと言われたアンデルセンが若干むくれつつ突っかかる。
「場合によっては、なの。例えば内乱に乗じて他人の縄張りで好き勝手する様な輩がいたら……許す気はないの」
「まぁ、別に僕達の土地って言う訳じゃないですけど、それでも内乱だからって何でもやっていい訳じゃない。その場合はこの国に所属するプレイヤーとして、相応の対応をさせていただきますよ」
「二人共言ってる事が一緒だな。相応の対応ってのは具体的にどうするんだ?」
「何言ってるの?【帝国】式の落とし前をつけさせるだけなの。そんじょそこらの並みのプレイヤーじゃ手も足も出ないと理解せて、死に戻らせるだけなの」
「そんな事言ってるから、何か【帝国】プレイヤーは物騒だみたいな噂を立てられるんだろうな。まあでも悪い事じゃない。俺は生産職だし、出来れば関わらずにやり過ごしたいがな」
「そう言えば、隊長はまだ戻ってこないんですか?」
「相変わらずの行方不明らしい。アイツはどういう反応するかね~。何か癇の触りどころが分からん奴だから」
「場合によっては一番怒って、宰相?とか皆殺しにするとか言いそうなの」
「流石に、そこまで短気じゃないだろう……」
「うん、そうですね。とりあえず当分は皆不参加と言う事で、どうします?クラーヴン」
「何をだ?」
「ロボの件なの。まだ坑道への輸送路?の探索が終わってないの」
「いや、こんな状況でそんな事やってていいのか?」
「いいんじゃないですか?こんな時期だからこそ、ヒトのいないダンジョン探索で、煩わされずに過ごしましょうよ」
それもいいかな~なんて思っていると、
「おい!ロボってクラーヴンのアレだろ?そのダンジョンってなんなんだよ!」
「アンデルセンは早く【海国】に戻るといいの」
のけ者にされたアンデルセンが、大層ショックを受けてしまった。
そして、アンデルセンの質問責めの声が今日も【古都】に積もる雪に吸われていく。




