45.ヒーローの苦悩
「見て分るかもしれないが、俺……特徴が無いんだ」
訥々とした雰囲気でいきなりボケをかましてくるライダーマスク。
誰がどう見たって、少年が子供の頃には確実に見てた。
何なら日曜日に仕事のない心が少年な大人だったら見てそうなアレモチーフのヒーローが何言ってるんだ?
「大丈夫だよ。虫なんでしょ?」
カーチ世代ではちょっとオシャレになっちゃってて、今目の前にいるヒーローのモチーフが分らないか。
「まぁ、俺は分るが、ヒーローなんだろ?確か邪神の化身戦でも見かけたし【王国】の【闘都】にある闘技場で、あえてそういうコンセプトの格好した連中の闘技が流行ってるとは聞いてる」
そう、このヒーローコスプレについて大して驚きもしなかった理由はそれだ。
それこそ隊長が戦闘員Aと呼ばれるようになるキッカケとなった闘技大会がかつてあったのだ。
そしてネタグループと呼ばれた対戦グループが何故か尽くヒーローか悪の組織風。
完全に運営の悪意のある偏ったグループ分けだったのが、当のヒーロー及び悪の組織がやるなら徹底的にの精神で、ネタをやりつくしその上でガチンコで闘技をした事でいつの間にかゲーム内の一つの文化として根付いてしまった次第だ。
多分目の前のライダーマスクもその一員だろうという事は容易に予想がつく。
「ああ、ヒーローではある。そして似たような趣味の仲間達と闘技場で対戦もしてるんだけど……皆設定からデザインから、武装から凄い凝ってるのに、俺だけ何か普通なんだ!」
「だからロボットって!ロボはそんな中途半端な気持ちで相棒にするもんじゃないよ!ロボは自分で自分はロボなんだよ!分ってるの?!」
カーチが怒だが、確かに子供ゆえに上手く戦えず、ずっと抱えていた苦しみの突破口がモグラちゃんであるカーチの思いいれは一入ではない。
まぁロボが自分で自分がロボなのはちょっとよく分らないが……。
「す、すまん!でも俺だって中途半端な気持ちで、直談判に来た訳じゃないんだ!ロボが現状レアである事も分ってる!それでも、今迄稼いだ全財産をはたいてでもロボが俺には必要なんだ」
「まぁ、双方落ち着け。そもそも俺から見て十分元ネタも分るし、好きな奴は好きなデザインの装備なのも分るし、よくこだわってるとも思う。それで何が不満なんだ?」
「今俺達は少しでもこのヒーローや悪の組織をコンセプトとした闘技を盛り上げようと、コツコツやってきて、最近では小さいながらも自分達で主催も出来るようになったし、スポンサーが付いてくれる大きな大会も経験した」
「順風満帆だな。全財産をはたくなら、主催とやらにつっ込んだ方が良さそうだが?」
「ああ、そりゃ確かに金銭面や集客なんかまだ不安定な所もある。だからこそ、俺ももっと人気になりたい!自分が目立ちたいというのも偽りない気持ちだが、それ以上にもっと多くのヒトにヒーローの良さや可能性を見せたいんだ!」
「それと、ロボが何の関係があるんだ?それなら普通にもっと強くなるとか、色々あるだろうに」
カーチがうんうんと頷き、自分の発言に同意を示す。
「そこで、最初の話に戻るんだ。確かに闘技場である限り強ければそれはそれで人気は出る。それについても努力は怠らないが、同時に特徴も大事なんだ。それぞれが持ってるバックストーリーやキャラがぶつかり合うから、面白くなるし、観客の財布も緩む。そういうシステムなんだよ」
「だからって、ライダーのコンセプト的にロボットってどうなんだ?バイクを作ってくれって言われるならまだ分るが」
「作れるのか!?」
「いや、無理だが……回転機構だけは可能なんだから、外側だけ整えればそれっぽく……いや、そうなるとヒーローっぽくちょっとゴテゴテな感じで……」
「クラーヴン!帰ってきて!」
「ああ、すまんすまん。それでアンタのバックストーリーってなんなんだよ」
「一応王道で、悪の組織に改造されたが、正義の心だけは失わなかったって言う設定だ」
「いいじゃないか。一番分りやすくて俺なんかは入りやすいがな」
「改造人間?サイボーグ?」
「ああ、ところが本当にそういう敵で改人ってのが、邪神の化身復活の裏で暗躍してたのを知ってるか?」
「いや、知らん」
「噂だけは知ってる」
「ならばと、悪の組織に復讐する復讐系ヒーローになろうと思ったんだが……」
「だが?」
「ブラックフェニックスだ」
「ああ!やっぱり知ってるか有名ヒーロープレイヤー。アイツが全部持って行っちまうんだ。何度でも復活する設定で、自爆を利用する派手演出とか!戦闘中に色が変わってモードチェンジとか!武器まで何か変態的で超目立つし!しかも強い!」
「まぁ、じゃあ他の特徴でやればいいじゃないか」
「ライダーだからと馬に乗ったら、十字モチーフのバロン。テイムで馬以外の動物に乗ったら、マスク・ド・ツタン。しかも名前までなんか似てるし!軽量を生かした戦いをすればNINJA野郎がいるし、キックを必殺技にしたら、結局ブラックフェニックスがもっと派手に決めてくるんだ!!!」
「な、なるほどな。でもそこまで色んなスキルを試したんなら、また一からロボを扱うスキルを取るのも大変だろうし、何よりロボってそんな簡単に作れねーんだよ。沢山喋ってもらって悪いんだが……」
顔の一部も見えていないのに、何故かライダーマスクの絶望が見える。




