43.行き止まり
生命力吸収がなくなり、敵を倒した事を確認しつつ、部屋の中に入りこむ。
奥には一つ壁に埋るようにしてコンソールが設置されていた。
自分と鉄人はそちらに向かい、カーチはモグラちゃんの時の経験を生かして、隠れた通路が無いか探索。
ビエーラとカヴァリーは何か汚い感じがする魔物に、恐れ気もなく近づいていく。
鉄人がプラグを挿して情報収集を始めたので、自分も周囲の探索……
と言っても何にもないただ広い空間。
何かこう……生産的な要素が無いと気分が乗らないって言うか、蚊帳の外って感じか?
「ねぇ、クラーヴン?これかなり危険なの」
汚い敵を<解体>してたビエーラが話かけてくる。
「危険ってのはどういう事だ?」
「素材を回収したんだけど、人工生命体らしい。あらゆる生き物の生命力を吸い取り、無限に増殖する化け物」
「一応この素材を使う事で、ほぼ無限に武器防具の耐久力を回復し続けるらしいの」
「その代わり生命力も吸収され続けるってか?使いどころないじゃないか」
「その通りだね。とりあえずアイテムバッグに入れてる内は大丈夫みたいだから、クラーヴンに渡しておくね」
そう言って、怪しげなゲルを渡してくる。
どう受け取ったらいいモノかと思いつつ、すぐさまアイテムバッグに詰め込んだ。
しかし、人工生命体か……、つまりこいつが生命科学研究所を破壊しなきゃならない理由?
しかし現状、生命科学研究所なんてものはどこの情報にもないし、生命力を吸われて危険なゾーンなんてのも、聞いた事がない。
やはり、鉄人の時代の話であって、きっと誰かが倒したのだろう!そうに違いない!
自分のクエストは鉄人を強くして、今だ生き残る人工生命体を破壊する事とか、そんな感じだろう。
そういう事なら、鉄人をもっと強くするプランを練らねば!
うーーむそうなると、やはり一撃の強さと言うものをもっと追求してもいいかもしれない。
何しろ今回の戦闘の決め手はモグラちゃんだ。
連射の効く空圧銃、ノックバック効果が強く術ダメージも与えられる水圧銃、ハンマーとパイルバンカーの換装可能な右手!
今でも結構な武装を積んでいる気がするが、まだまだ改良の余地はあるはず!
例えば、近接武器ならチェーンソーとかどうだろうか?
刃物で斬りつけるのは意外と技術が必要だが、チェーンソーなら当てるだけで大ダメージが期待できる。
モグラちゃんのドリルが掘削系の所謂<採掘>タイプなら、チェーンソーは<伐採>タイプと言えなくもない。
銃だって、電束放射器とか熱線放射器とか……!?
火炎放射器を忘れてた!
まだまだ鉄人は強くなれるじゃないか!そうだ!あんな汚い雰囲気の敵なら、
汚物は消毒してしまえばいいんだ!
「クラーヴン?」
考え事をしていたら、カーチに見上げられていた。
「なんだ?皆それぞれに調べ事は終わったのか?」
「とっくに終わってるの。皆で引き上げようって話になったのに、一人だけ動かないから困ってたの」
「そうだったか、それで?この奥はどうなってるんだ?」
「コノサキノ 道ハ 爆破サレテ 進入不可能デス」
「避難口って話だから、ここで例の生命力を吸収する怪しい人工生物を足止めして逃げたんだろうね」
「モグラちゃんなら、掘って進めるんじゃないか?」
「試したけど、ずっと周辺は土で埋ってて、どこをどう通っていったのかは分らないって!」
そういう事なら、ここは一旦戻るしかない。
何しろこの先はノーヒントだ。適当にモグラちゃんに進んでもらって、いい結果が出るとは限らない。
とりあえず、今日の所はログアウト時間と言う事で、一旦北辺基地の休憩所に向う。
休憩前にやる事といえば、やっぱり食事だろう。
このゲームでは何故かそういう習慣なので、自分もそれに従っている。
やはり、さて今日は何やろうかな~とログインして、早々まずは腹ごしらえか……なんて言うのはテンションガタ落ちになるからだろうか?
と言う事で女子二人のお喋りに花が咲いている内に、カヴァリーと自分で夕飯の用意をしていく。
「今日はパン食にしようかと思って、パンとアヒージョの食材は用意してきたんですけど、クラーヴンは何か案ありますか?」
そう言いながら、バゲット風のパンとキノコ、海老、ブロッコリー風野菜、オリーブオイル?なんかを取り出していく。
ゲーム内なので、微妙に似て非なる場合もあるが、基本的に味は現実にある食材を元にしてるので、不味いと言う事はない。
しかしパンとアヒージョか……何かこれだけで完璧と言う気もする。
だが何もしないのも手持ち無沙汰で嫌だし、ここはスープにしておこう。
ゲーム内で栄養の事など言っていても仕方ないが、野菜たっぷりスープも一緒に食べておけば、寒い【帝国】で冷えた体に丁度いいだろう。
カルトーシュと言う名のジャガイモに、マルコーフィと言う名の人参、この辺の根菜類は【帝国】ではよく採れるし、食べられている。
更にレンコンにゴボウ。最初の内はちゃんとゲームでの作物の名前を覚えていたが、最近では面倒くさくて知ってる名前の野菜で呼ぶようになってしまった。
どうせ買い付ける時はちゃんと現物を見て買うのだから『コレとコレ!』で通じる。
更に小さくきった鶏肉で出汁をとりつつ、卵とアヒージョに使うオリーブオイルを少し借りて、優しい味付けのフワフワ卵野菜スープを作っていく。
気心知れた4人でのんびり食事をするが、食事中にあの独特の姿をした人工生命体の話は勘弁してくれ。




