38.特注鎧
カーチの相棒問題も解決し、北辺基地へ意気揚々と行軍!
なんて事はない。
何しろ本業は鍛冶屋なのだから、まずはそっちが優先だし、そのことについて鉄人からクレームもなければ、何なら文句も言わずよく働いてくれる。
記録に触れていく内に、若干だが会話が流暢になり、最近では鉄人と喋るだけの来客もあるらしい。
さて、では今何に着手しているかと言うと集団戦と呼ばれるコンテンツでも有数の猛者の装備だ。
このゲームの一周年イベントで公になった集団戦と言うコンテンツだが、今ではかなり広まって一般的になった。
それでも、普通はパーティと呼ばれる5人組か、ユニオンと呼ばれる20人組が精々だ。
これは能力的にと言うより、それ以上の必要があるプレイヤーが少ないということが一番だろう。
幾ら珍しいフルダイブVRだからと言って20人以上の人間と待ち合わせて一緒にボス攻略などと言うのは、中々に難しい。
なので、大手のクランでも大抵は100人のレギオンと呼ばれる集団がやっとだし、大体そこで調整しているものだ。
それでも、世の中変わり者はいるもので、1000人を率いれるオーバースペックな猛者ってのも極少数いるにはいる。
いるのはいると言ってもたったの二人、しかも何故か【帝国】は【古都】を拠点としてるど田舎者の変わり者。
片方は絶賛行方不明中なので、もう一人のかなり若そうな青年ソタローの装備が今回の依頼品。
何だかんだ装備をずっと面倒見ている仲だが、全身金属の複層装甲ですら羽のように軽いとのたまう、筋肉の化身だ。
今回作る装備は2種類。
一つは白竜と呼ばれる神側勢力の超越的存在の力を受ける防具だ。
これはクエスト専用装備となる可能性が高いので、使い捨てるつもりでとにかく頑丈かつ動きやすくだけ作っておく。
過去の経験からクエスト専用装備って奴は、何かとオーバースペックになりがちだが、役目を終えると没収か破壊と言う運命が待っている。
ちゃんときっちり作る事は間違いないが、気合を入れて相手に合わせて詰め込めるだけ詰め込むと言うのとはちょっと違う。
寧ろ余裕を持たせて作ってやるほうがいい。
ソタローは筋力は高いものの小回りが利かないので、高重量で敵に振り回されず、兎にも角にも硬い方がいいだろう。
普通なら到底取り回しの利かない筈のロマンを越えて、怒られるレベルの装備でも軽々着こなすのだから、ウエイト&ハードこれでいこう。
まぁ、それでも遊び心は欲しいものだ。折角だしデザインをこだわってみよう。
何しろ最近自分はロボにはまって、現実でも色んな資料を漁って、日々ロボへの知識を深めている。
主にサブカル的な意味でだが!
線の細い、宇宙からの侵略者かと思うような未来的デザインはソタローには似合わない!
無骨で露骨な重装備!圧倒的に硬く、見るだけで攻撃を躊躇う様な重量感!これこそ筋肉の化身に相応しい装備!
コンセプトが決まり、デザインが決まればあとは手が勝手に動く。
最早この感覚に慣れすぎて、スキル的なものなのか意識的なものなのか、その感覚すら曖昧。
自分の中にあるあらゆる感覚が渾然一体となって、世界に新たな何かを生み出す。
気がついた時には、いつか鉄人に着せてやりたいヒトサイズの金属甲冑が出来上がっていた。
まだ中身も何もないが、今にも動き出して、爆炎弾雨を物ともせず突っ切っていく超重量ロボが目の前にある。
近いうちに取りに来たソタローに着せるのが楽しみだ。
その性能を見て、もっとアップデートし、ゆくゆくは鉄人のボディにしてやろう。
くっくっく!
思わず笑いがこみ上げてしょうがない。
フルアーマーが男のロマンなら、パージして高機動型になるのは男の夢だ!
鉄人にはいつか絶対変形機構とパージ機構をつけてやる。絶対にだ!
そうなるとライバル機は装備を極限までシンプル化した高機動重装甲マシンか?
重量の大半を装甲と機動力に振り、簡素な武器で戦う相手なんて、最強のライバルにして激熱じゃないか!
こいつは、じっとしていられない!武器の試作及び装甲の試作をしなくては!
どうせ中身はどこからか拾ってきてある程度研究しなけりゃならないのだし、ここは今の鍛冶技術で作れる極限の装甲と簡素ながら絶対的な武装を考えよう!
例えば鉄球やハンマーのような重量武器はシンプルで鉄人にも使いやすい。
逆に刃物なんかは刃を立てて、斬りつけるというのは実は中々に複雑だろう。
攻撃にも防御にも便利でシンプルな動きで使いこなせるそんな武装は何かないか?
そんな物があれば、古今東西武器といえばそれだけになってしまう。
武器ごとに短所長所があり相性もある。だから悩ましいし面白い。
取り敢えず今はソタローの装備だ。
ソタローは重剣と呼ばれる護拳付き片手幅広剣の使い手、普通なら片手じゃ持ち上がらないような剣を軽々振り回し、硬く重くダメージもデカイ。
本人は控えめなのに戦闘スタイルはひたすら押し込む、圧殺タイプ。
何があっても押し負けない、そんな武器と防具を揃えてやらねばならない。




