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37.カーチの相棒

 「クラーヴン!出来たって!」


 「おう、裏に回ってみな。ちとサイズがでかくなっちまったんで、いつも親方が雪浴みしてる裏庭におかせてもらってるんでな」


 駆け込んできたカーチはゲームにも関わらず息が弾み、頬が赤く染まっている。


 思ったよりはすんなりと修復完了してしまった朽ちたロボだが、カーチからすれば一日千秋の思いだったろう。


 相棒と呼べるような得物に出会った時、その実現より早く確信として、その相棒と共にいる事を実感しているものらしい。


 そして自分のような生産職は、その得物がどんな形になりたいのか不思議と分かるもので、得物と使い手の橋渡しをする様に出来ているものだ。


 坑道の奥に朽ちていたロボも、修復するかと目の前にすれば何をどうすればいいのか、あっさりと理解した。


 あとは簡単、ある材料で出来うる限りの力を尽くし、形にするだけの事。


 そうして出来上がったカーチとカーチのロボの感動の対面。


 「でっかいドリルだ……」


 フラフラと足元がおぼつかなくなり、そのままドリルの土台のキャタピラに崩れ落ちるカーチ。


 このキャタピラも、つい最近までは自分が持っていなかった技術だが、朽ちた原型と鉄人が引っ張り出してくれたこのロボの記録からざっくり再現したものだ。


 やはり積雪地帯を始めとする悪路を踏破するならキャタピラの安定感に勝るものはない。


 勿論整備された路面を走るには、タイヤの方が有利である事は別段認めていないわけじゃない。


 生産職とは状況に応じて最適解が変わる事もちゃんと理解していなければならない。


 ただ、走行の汎用性と言う一点で、非常に優れた機構だという事も、ちゃんと理解しているという事だ。


 感動のあまりその場に座り込んで、修復したロボに体を預けるカーチに声を掛ける。


 「どうだ?今できる精一杯の技術を詰め込んだんだが?」


 「この子……喜んでる!」


 「そりゃ良かった」


 「わーい!良かったね~格好いいドリル積んでもらったね~!」


 やはりこのロボはカーチの為にあそこで朽ち果てたのだろう。


 そうじゃなきゃ、物言わぬロボと一瞬で心をかわす事なんて、到底不可能だ。


 しかし、自分にも分る。このドリルが今、主を得てどれだけ喜んでいるか、そのドリルの輝きが、どんより暗い【帝国】【古都】で、どれだけ異様なほどギラついているか。


 こいつは、とんでもないコンビを生み出してしまったかもしれないと、冷や汗と同時に今迄のさばっていたトッププレイヤー達を蹴散らすカーチたちを連想して、暗いニヤツきを隠せない。


 まあ別に戦闘職達に恨みがある訳ではないが、やはり戦闘が出来なかったカーチの様な子供が、トッププレヤーに躍り出たらどうなるか?


 驚くプレイヤー達の顔を想像するだけで小気味いいだろう。自分だって戦闘が苦手なプレイヤーなのだから。


 まぁ、意外と本当のトップオブトップな変人やらは、簡単にあっさり受け入れて、頂上からしか見えない景色を一緒に眺めたりするのかもしれないが……。


 おっと、変な妄想をしていたら、またカーチに変な顔で見られてしまった。


 「気に入ってもらえたなら、直した甲斐があるってもんだ。早速こいつの説明をしていくが大丈夫か?」


 「うん!」


 「まず、見ての通りこいつはドリルのロボだ。坑道で朽ちていただけあって、穴を掘ったり、地面に潜ったりするのを得意としている」


 「地面に潜れるの!?」


 「ああ、何か『掘削マスタリー』とか言うのを最初から持ってたんでな。攻撃も今の所ドリルしかない」


 「これだけ大きなドリルなら、大抵の敵には穴を空けられるね!」

 

 「確かにその通りだ。当てさえすれば攻撃力は尋常じゃない」


 「当てさすればか~」


 「ああ、そいつの重量は鉄人と違ってかなり重い、何しろそのドリルは完全に俺のお手製、鉄のドリルだから、どうしようもなかった」


 「そうなんだ?でもクラーヴンが作ったんなら、凄い鉄のドリルだよね?」


 「まあ、他にそいつの姿が思い浮かばなくてな。そいつを前にした時、ドリルを作んなきゃって勝手に手が動いたんだ」


 「うんうん、じゃあ動きは遅いけど、一発当てれば強いって事だよね!」


 「その通りだ。そいつの足回りが元々キャタピラだったのも、運命だろう。高重量でも悪路を走破できるぞ。そしてそいつのエネルギー源だが……」


 「分るよ!私の精神力なんでしょ?」


 「ああ、一応〔術士の石〕っつう持ち主の余剰精神力を溜めておける石は繋いでおいたが、基本的にはカーチの精神力で動く。鉄人のようなエネルギーコアを持たないロボだったみたいだ」


 「何となく分ってたよ。この子は昔ヒトと一緒に働いてた子。だから私の相棒になってくれる」


 「そうか、やっぱりカーチはそいつに選ばれたんだな。最後にそいつの動かし方だが……」


 「進め!モグラちゃん!」


 カーチが唐突に指示を出すと、ゆっくりと動き出すドリルのロボ。


 「もう名前をつけてたんだな」


 「うん!この子とちゃんと意思疎通出来るように、いっぱい【訓練】してくるね!」


 「ああ、そいつの事はカーチに任せたから、調子が悪くなったらいつでも連れて来い!」


 何だかんだみなまで説明せずとも、カーチとあのロボはちゃんと相棒だったようで良かった。

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