35.残骸
屈んで狭い抜け道を通ると、中はちゃんと立って進める程度には高さがあった。
しかし、光源はなく、壁の状態も未完成のまま放置されていたと分る。
カーチとマ・ソーニがズンズンと奥に進むので、カンテラを点けて、ついて行くが徐々に道幅が狭くなり、こんな所で魔物に襲われたらひとたまりもないななどと、思い始めた頃。
「ねぇ!クラーヴン!この子!」
カーチが指差す方をカンテラで照らし出すと、如何にも機械と分る鉄屑が放置されている。
マ・ソーニにカンテラを預けて、よくよく調べると、どうやらドローンに似た構造の何か。
しかし、カーチはこの残骸から何か感じるのか、はっきりとこの子と言っていたし、今も全く目を離さない。
時折、作った武器を渡す時に、客が見せる目。
言葉はなくとも、これはきっと大切に扱ってくれるんだろうなと、不思議な確信があるそれ。
他の生産職に聞いたことはないが、そういう武器は不思議と育っていく感覚がある。
勿論攻撃力が伸びるとかそういう事は全くないのだが、持ち主の一部になっていくようなそんな感じ。
このゲーム、無限耐久と言うのは基本的にない。
よっぽどのイベント用特殊装備位の物だ。どんな武器でも使えば耐久が目減りしていく。
マメにメンテナンスをすれば、かなり保たせることは出来るが、実際はより強い素材を手に入れる為の踏み台に使われていく。
それが悪いとは思わないが、稀にやたら長く使い続ける連中もいて、そういう武器を使ってる連中ってのはもう、攻撃力が高いとか低いとかそんな次元で戦ってない様にも見える。
カーチは今、元の形すら分からないほどに朽ちた残骸に、それを感じ取ってる。
ならば、自分がやる事は一つ。
「見る限り、コイツの元の状態も動くかも分らないが、一応持って帰ってみるか?」
「うん!多分この子は動くよ!」
やっぱり、カーチは謎の確信を得ているようだ。
アイテムバッグに詰めてみると、ちゃんと入ってくれたので、持ち帰りも問題ない。
その、隠し通路にはそれしかなかったので元の異形の何かと戦った部屋に戻る。
「さて、これで最奥まで探索できたようだが、これからどうする?」
「一旦引き上げでいいんじゃないかね?さっきの変な奴との戦闘で、コイツも修理が必要なんだろ?」
確かに、それが一番いいかもしれない。
外側の装甲自体は〔IRM〕で回復して形こそ整っているが、正直さっきから挙動がおかしい。
ヒトのような何かを誤魔化そうとしてるとかではなく、明らかに腕の曲げがおかしいし、二足歩行もかなり歪になっている。
そんな状態でも動けるのだから、搭載されているプログラムと言うのはかなり優秀なのだろう。
「確かに修理しつつ今回得た情報の整理をするのが一番いいかも知れんな。ついでにさっき拾ったアイツも気になるし」
「うん!でも装甲とか作るには、レイシブンカイとか言うの必要なんでしょ?」
「まぁな~、そこは基地に行って、またドローンの装甲から引っ張ってくるか、足りない部分は俺の鍛冶技術で継ぎ接ぎだな」
「じゃあ、今回掘った特殊な鉄鉱石は当分封印だね」
「資源ガ 運ビ込マレタ 場所ノ 記録ガ アリマシタ」
「……そこには霊子分解とか再構築用の施設があるって事か?」
「可能性ハ アリマス」
「じゃあ、そこに行けばさっきの子も直せるんだ!」
「まぁ、待て待てカーチ。行く先々壊れてるか朽ちてるんだぞ?一つ一つ直して進むくらいの長い気持ちで行かないと、あとでがっかりするぞ」
「ああ、そうか~でもまたあの基地に行くのは決定だね!」
「そうだな。まああそこはそこまで強いドローンが出てくるわけじゃないし、素材集めにもいいから、また近いうちに行くとしよう」
と言うわけで、今回は一旦帰って、修理なりメンテなり次への準備をするという事になった。
そんなに深い坑道ではなかったとは言え、結構な時間を過ごしてしまったので入り口近くの休憩所でログアウトする事になり、食事タイムだ。
「何にする?」
「肉だね」
「肉とお酒」
「クラーヴンは何作っても美味しいからなんでもいい」
「生憎酒は持ち込んでないんで、それは自前で頼むぞ。子供もいるからハンバーグにでもするか。デミグラスソースなんて洒落たものはここの設備じゃ無理だから、トマトソースな」
それだけ言って、さっさと調理にかかる。
【帝国】で肉といえば、アリェカロの肉。コイツを適当にミンチにする。
ちなみにミンチ機は手製の物を調理セットに詰め込んであるのを使用。
何しろ普段からクエストで鍋やら包丁やら作り慣れているので、調理器具関連に関する鍛冶能力は下手をするとゲーム内有数なんじゃないかと、勝手に自画自賛している。
ミンチ肉に玉ねぎなんて言う軟弱なものは混ぜない。緩くなる!
ミンチ肉を味付けして固まりに戻すだけ、形を整え空気を抜いて、じっくりと焼き色を付けていく。
あふれ出た肉汁と自家製ケチャップで味付けして完了。
ちなみに自家製ケチャップは他の素材よりやや寿命が短く、一定期間が過ぎれば霊子になって世界に還元されてしまう。
腐った食材が存在できない世界なんだが、発酵食品は存在できるから不思議だ。
そんな事を考えている内にあっと言う間に平らげる女性陣。
マ・ソーニは酒と一緒だが、このゲーム未成年飲酒に厳しいので、例えどんなに嘘をつこうが、マ・ソーニがカーチにお酒を与える事はないので、心配ない。
取り敢えず、あとから一人でハンバーグを食べて、坑道内の休憩所と言うものを堪能する。




