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347.人権を尊重してくれ

 ライダーマスクのバイクはモグラちゃん達と同様に音声認識であとは自動で動く機械人形だが、元々が走る事のみに特化した存在だ。


 4輪の幅や高さ駆動バランスを自動で制御し悪路走破性能と機動力を売りにしている訳だが、それが邪神の化身から伸びる触手を登るのにも十分な能力がある事は製作者として誇りに思うべきか、はたまた巻き込まれて、ろくな足場もない場所を不安定なジェットコースターをやらされてる被害者として後悔すべきか?


 正直、今自分が上を向いているのか横を向いているのかすら分からない、ずっと青いはずなのに、なぜか目まぐるしく変わる視界に、そろそろ限界が近い。


 「うおーーーーー!クラーヴン!行くぞ!」


 「何……が?……」


 声を振り絞っても、かすれた呻きしか出ない自分の状況に気が遠くなりかけた瞬間、あらゆる物から解放された。


 人は結局重力に魂を縛られているから苦しむのか?


 愛別離苦、苦しむと知っていて何故執着を持つのだろうか?


 そんな事が頭をよぎったようなよぎらなかったような……自分が空高く舞い、何も頼る辺無くただ投げ出されたと自覚する。


 そして、目の前が暗くなり、頭に大きな衝撃を覚えた。


 「ナイス!クラーヴン!絶対離すな!」


 誰の声だろうか?一体何事か?


 気がついた時には、何か一抱えもある大きな硬い物を両手で抱えたまま、落下している?


 「行け!B.B.!!!!!」


 ライダーマスクの声が聞こえると、急に肩を掴まれ、落下していた体が大きな衝撃と共に、再び持ち上げられた。


 そのまま前後左右に大きく振られ、抱えている何かに頭をぶつける事数回、気持ち悪くなってきたと思ったら、また投げ出される。


 今、自分が何をしたらいいのか全く見当もつかないまま、ただ落下の空気抵抗を体で感じていると、今度は誰かに足を持たれ、逆さまになった状態でどこかへと運ばれていく。


 「……あと……ちょ……」


 風の音で何を言ってるかすら聞こえない……。


 「クラーヴン!もうちょっとだから絶対離さないで!」


 隊長の声だけは、やたらはっきり聞こえてきたが、多分あれだ指揮官権限的なやつで自分に話しかけているのだろう。


 「分かったが……コレ何なんだ?」


 相変わらずかすれ過ぎて、聞こえてるか不安だったが、どうやら隊長にはちゃんと届いたらしい。


 「邪神の化身の核だよ!もうちょいだから!耐えて!」


 自分が抱えているのが邪神の化身の核だと聞いて、ツッコム気力すら湧かないが、それでも鉄人やキジンの犠牲を思えば、離すわけにもいかない。


 これからどうするのか、それはみんなが考えてくれてるのだろうし、とにかく今自分に出来る事はコレを手放さないだけ。


 ぎゅっと力を込めると、足を掴んでいた感触が消え、また放り出された。


 お次は腰を抱えられ吊られて行くが、今までと違い妙に振動を感じると言うか、空中にいる割りに安心感のある感触だ。


 それでも相当な速さで移動しているのは感じる風で分かる。


 コレが慣れというものか?この短時間で高速で運ばれる感触に順応し始めたらしい。


 邪神の化身の核を抱えている所為で、碌に周囲も見えないが、それでもそこら中から爆発音や攻撃音が聞こえて来ている。


 そして何より高速で移動している事で、風の音が鳴り止むことがない。


 「準備できた?」


 妙に近くから隊長の声が聞こえる?


 「準備って……なんだ?」


 「O.K.カウント始めるよ!クラーヴンもタイミングでそれ離してね」


 「え?あ?どういう事だ?」


 隊長の指示の意味も分からぬまま、カウントが始まる。


 「5……4……3……2……1……弾着!今!」


 コレどのタイミングで離せばいいんだよ!


 そう思った時には強烈な衝撃を受けて、いつの間にか邪神の化身の核を離して、地面に叩きつけられていた。


 目の前には隊長が立ち、どこかあさっての方を向いている。


 更に横に目をやると、カーチとパオンちゃん?


 大きく回転し、慣性で振られているパオンちゃんのクレーンが目に入り、アレで殴られたのかと何となく理解してしまった。


 ……と言う事は?


 自分が抱えていた邪神の化身の核は再び空高く飛んで行った?


 隊長やカーチの目線の先を追うと、遠くに光を反射する物体が見えた。


 折角掴んだ物を再び打ち上げてどうすんだ?


 そんな疑問を持つまでも無く、空が再び目を眩ませる程強く光り、まるで世界の一部を消し飛ばしてしまうような爆炎が収束していく。


 上半身を起こすと、自分が倒れていた地面が光の粒子となって分解されていく。


 「う、え……え?」


 「邪神の化身が崩壊してるって事は、終わったって事でいいのかね?」


 「うん、レオちゃん……」


 「いや、二人で締めるな!ここ上空だろ!どうすんだ!」


 自分の叫びも虚しく、あっという間に視界は邪神の化身の肉体が霊子に分解されていく光で満たされ、またもや足場を失い落下……。


 「ああ、もうどうにでもなれよ」


 全部終わり、今度こそ全て投げ出した。

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