344.大ピンチ
「それで、どうするんだ?」
「どうしようか?」
赤い雷こそ剣聖の弟子に捌かせる事で、地上戦力が減るのを防いではいるが、このまま現状維持という訳にも行くまい。
一応地上から攻撃は続いているものの、不思議と邪生物と一体化していたときの方が攻撃の通りがよかったような気もする。
「……そうか!生物兵器の特性の陽の光が弱点ってのも無くなっちまったのか!」
「気が付いた?生命吸収能力や増殖能力を失った代わりに、弱点もなくなっちゃったみたいなんだよね」
「そりゃ、まずいな。まずいんだよな?空中に浮かせて置けるのも時間に限りがあるんだろ?」
「勿論!人の身じゃあ無限なんてのは到底無理でしょ?」
「あとどれ位もつ予定なんだ?」
「そう間もなく落ちてくるよアレ……」
空を覆う不気味な黒い幕がもう少ししたら降ってくるらしい。
幕と言っても当然ながら相当な重量だろうし、布で出来てるわけでもないから、潰されればそのまま死に戻りだろう。
「逃げるか?」
「出来る訳ないじゃん。自分達は死んでも死に戻るだけなんだから、失敗したら死ぬつもりで最後まで攻撃するしかないよ。じゃないとまた逃げられて、今度はもっと厄介なことになりかねないし」
「だよな~……にしたって、もう間もなくで何か打つ手あるのかよ?」
「あるにはある。問題は核の場所が見当もつかないって事かな」
「クロード!どこかやたら硬い場所とか、回復の早い場所とかないのか?」
「そういう分析は鉄人が得意だったんだよな。俺はどちらかというと味方の動きを把握して上手く動かす方の処理能力なんだ」
「突っ込ませる順番間違えたな……」
「それどころじゃないだろうが!鉄人もキジンもいないんだぞ?今トドメ刺すしかないんだろ?」
「行くしかないか~!」
「どこへだよ?」
「上に決ってるじゃん!生命力吸収能力は失ったんだから、あとは乗り込んでって直接攻撃しかないじゃん!そこに邪神の化身が浮いてたら、上に乗ってぶん殴る!そういうものじゃない?」
相変わらず何言ってるのか分からんが、何をどうしたらいいのかすら分かってない自分よりは隊長の方がよっぽどマシなのかも知れん。
ただ一個謎がある。
「上に乗るってのはどうやるんだ?幾ら隊長の足が早いって言ったって、回り込んだらかなりの時間ロスだろ?」
「あの目の所突っ切ろうと思ってるんだけど?元々何もない空間でしょ?あんなこけおどしの目なんか突き破ればいい」
「突き破るって……」
「我も行くとしよう。もし、核が見つかれば、あとは我が自爆するより処理の方法はあるまい」
「レオちゃん……」
「ああ、失敗したな~宝剣は喰われるからと思って、持ってこなかったしな……」
「ねぇ!レオちゃん!皆も上に連れて行ける?」
「モグラちゃん、モーちゃん、パオンちゃんを連れて行く分のドローンは用意できるし、カーチが乗る事も可能だ。あとはヒト一人分位だろう」
レオちゃんの発言で何故か自分に視線が集まる。
「いやまて!まだ焦る時間じゃない!俺は上に行った所で何も出来ないぞ?もうどれだけただの傍観者やってると思ってんだ?寧ろ戦力になる奴連れて行けよ!」
「それがもう、大分焦る時間なんだよね~。選んでる時間もないし、この邪神の化身を起こした発起人であるクラーヴンとカーチを連れて邪神の化身の上に向かおう」
「いや、待て待て待てマテ!」
言った所で戦闘職に敵う訳もなく、無理やりモーちゃんに押し込められて、あっと言う間に空中に浮く。
レオちゃんが出したドローンはプロペラを回転させて飛ぶだけの簡単ドローンだが、それを幾つも連結させて、強引に浮いている。
なんとも頼りない浮き方に、寧ろ邪神の化身の上に行くどころか、途中で落っこちる未来を予想してしまう。
そんな中、隊長は一直線に敵の赤い目に向かって行く。
自分自身も徐々に近づくに連れて、赤い目が濃いガスのような塊であることが見て取れる。
ガスを透過する光が赤く色づき、あの不気味さと目のような姿を見せているのだと、理解して尚気持ち悪い。
ガスの内側にはどうやら積乱雲のように雷が走っている様だが、これをどうやって突っ切るんだ?
相変わらず、自然の法則を完全に無視して空中を文字通りニ本の足で足って駆け上がっていく隊長。
そして、いつからそこにいたのか不規則に飛び回り、既に完全にグロッキーになっているライダーマスク。
相変わらずデカイ蝙蝠に吊るされるように飛んできてはいるが、多分話しかけても言葉を返せない状態である事は言わずもがなだ。
その他にもドローンにへばり付いたり、吊り下げられながら空中に上がってくるプレイヤー達が少なからずいる。
自分も知らない内に、こんなにロボが浸透していたんだなとよく分からない感動を胸に抱いていると、よく知る声のあまり聞いたことのない気合が響く。
「っっし!勝負!白蛇開放!竜燐起動!」
隊長が何やら白と赤のオーラに包まれて、そのまま赤いガスの中に突っ込んでいった。




