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342.自爆の果てに

 地面から立ち昇る大量の白い煙、外から見れば尋常じゃない湿度を生み出すフォギーボムの生み出す光景は、火のない大火事のようだった。


 文字通りありったけのフォギーボムを戦場に投入し、それでも地下のように閉鎖されていない分、どんどんと広がって薄まっていってしまう。


 そんな中、うっすら光る影が煙の中を飛んでいくのが見て取れた。


 すぐにブラックフェニックスの放つ光だと悟り成り行きを見守っていると、まずは更に濃い白い煙が立ち込め、直後に白いエフェクトが邪生物にぶつかり、同時に周囲の煙が輝き始める。


 そして、連続して叩き込まれる青いエフェクトが、邪生物を砕いて大穴を穿つ。


 「氷精からの水精か……あれはそうそう耐えられるもんじゃないか……」


 誰かが呟くのが聞こえ、自分なりに状況を悟った。


 最初の白いエフェクトは【帝国】を拠点にする者なら見慣れた氷精のエフェクトだったのだろう。


 そして、氷精による氷結の状態異常は、敵を凍らせて動きを止めるものだった筈だ。


 通常は一発殴れば、それで氷結状態も解除されるのだが、代わりにその一発のダメージ量は2倍になる。


 そうやってブラックフェニックスはダメージを最大化させたのだろう。広い範囲を砕くという目的に合致する戦い方がそれだったという事だ。


 結果的にフェニックスフレアボムは使わないまま、空いっぱいに広がった邪生物に大穴を開ける事に成功したようだ。


 問題は核が本当にそこにあったのか、どうかだが……。


 「あそこにあるの!空の真ん中!早くやらないと敵が修復を始めてるの!」


 ビエーラの声に、目を凝らすが残念な事に自分の目に見える距離ではないようだ。


 だがしかし、急速に穴を塞ぎにかかる様子だけは見て取れる。


 折角広がった大穴が、あっという間に侵食されるように周囲から邪生物の肉体が集まっていく。


 その大穴へと真っ直ぐに飛んでいく鉄人から、紫のエフェクトが放たれ邪生物の再生が一瞬遅くなった。


 そしてその隙に大穴を通り抜けた鉄人、そしていつの間にかグライダーのような物を展開して、空中を漂っていたブラックフェニックス。


 そのブラックフェニックスの手から、例の大量のフェニックスフレアボムが放たれた。


 あっっ……と思う暇もなく豪音と共に広がる炎と、かなりの距離を置いてもこちらを焼き尽くさんとばかりに容赦なく打ち付けてくる熱風に思わず頭を抱えて身を縮めた。


 直後にまた今度は天が落ちてくるかのような豪音が鳴り響いた。


 それはまるで空から星が落ちて来たかのように、巨大な球が邪生物諸共、ありとあらゆるものを飲み込み消し去っていく。


 本来目には見えないはずの空気すら丸ごと消し去ったと確信させる異常なエネルギーの爆縮が、徐々に縮んでいく。


 そしてそこには何も残らない、邪生物すら再生を拒んでいるかのように、大穴を開けっ放しで動けなくなっている。


 エネルギーの奔流が消え去るその瞬間まで見つめ続け、そこにはもう何もないと確信した時、鉄人ももういないのだと、その事実が腑の底まで落ちてきた。


 いつの間にか誰もが攻撃の手を止め、空に開いた大きな穴を見つめている。


 「「終わった?」」


 思わず一言発し、近くにいたカーチと顔を合わせ、そして一緒に隊長の方を振り向く。


 「…………まだかな?」


 「悪い予想が当ったみたいだ」


 隊長とクロードが何やら不穏な会話を始めた?


 「どういう事だ?」


 「いや、核は完全に潰した筈なのに、邪生物の崩壊が始まらない」


 「そういう事もあるだろ?すぐに霊子になる場合と、敵の肉体だけ残って<解体>する場合とよ。今回は後者なんじゃないか?」


 「いや、戦闘は終わってない。皆の士気も維持され続けてるし……総員攻撃再開!まだ何があるか分からない!今の内に出来うる限りのダメージを与えるよ!」


 隊長の指示が飛ぶと、思い出したかのように再び始まる攻撃で、それまでの一瞬の静寂が嘘のように爆発音や炸裂音が戦場中から鳴り響く。


 「なぁ?大穴の修復は始まらないみたいだぞ?」


 「今の所はね。これからどういう動きになるか想像出来ないし、やれることやっておかないと……」


 そりゃその意見には賛成だが、しかし身動き取れずただ空に浮いているだけの幕のような存在を倒すにはどうすればいいのか?


 このまま、攻撃い続けて押し切る?それで、果たして敵を捕り逃したりしないのか?


 隊長の使う術だって無限じゃないはずだし、いつかどこかであの空の幕は落ちてくる。


 そしてそれは、ただの幕じゃない。汚いスライムのような不定形の何か。


 「多分、もう一個あるんじゃないの?」


 唐突に切り出すカーチに、分かってるとばかりに頷く隊長。


 「もう一個って、核とかそういうやつか?」


 「うん、多分だけど邪神の化身の核と生物兵器の核があったんだと思う。穴が直らなくなったのは生物兵器の核が無くなっちゃったからじゃない?」


 「……つまりここからが、邪神の化身オリジナルとの決戦になるのか?」


 確認の為に口に出してみたが、どうやら言わずもがなだったらしい。


 邪神の化身オリジナルとの戦い……力は削った筈なのに妙に嫌な予感がしやがる。

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